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第7話:神様のうっかりミスと、箱庭の超有能な従業員たち

第7話:神様のうっかりミスと、箱庭の超有能な従業員たち

 翌朝。リオンは朝食の買い出しを済ませる前に、孤児院の自室からこっそりと【無限の箱庭インフィニット・ファーム】へと足を踏み入れた。

(シスターたちは昨日の夜から箱庭に泊まってもらったけど、大丈夫かな。環境が変わってよく眠れなかったり、魔物の世話で苦労してたり……)

 いくら安全とはいえ、ただの平原に丸太小屋が一つあるだけの環境だ。不便をかけていないか心配しながらポータルを抜けたリオンだったが――直後、その光景に目を丸くした。

「よしっ、ここからあそこまでの二エーカー、全部耕し終わったぞ! 次は種撒きの準備だ!」

「ワゥゥゥ……♪」

「ふふっ、ノワールったら甘えん坊さんね。はい、もっと綺麗にしてあげる」

 そこには、額に汗一つかかずに、常人なら数日かかる広さの畑をたった一人で爆速で耕し終えている少年レオの姿があった。

 さらに小屋の横では、少女クロエが普通の木のブラシでノワールの毛並みを撫でているのだが、なぜか撫でた端から光の粒子が舞い散り、ノワールがとろけそうな顔でヘソ天になっているではないか。シズクに至っては、クロエの膝の上でスライムらしからぬ寝息を立てて熟睡している。

「……え? なんだこの状況」

 唖然とするリオンの鼻腔を、今度は信じられないほど暴力的なほどに食欲をそそる匂いがくすぐった。

「あらリオン、おはよう。ちょうど朝ご飯ができたところよ。冷蔵庫がなかったから、昨日の余ったお肉と少しの香草でスープを作ってみたの」

 丸太小屋から出てきたシスター・アンナが、木製のボウルを差し出す。

 一口飲んだ瞬間、リオンの脳内に稲妻が走った。ただの余り肉と野草のスープのはずなのに、王都の超高級レストラン(前世の記憶含む)でも味わったことがないほどの絶品だったのだ。

「うっっま!? なにこれ、シスターってこんな料理上手かったっけ!? それにレオの畑仕事の速さも、クロエの魔物手懐けスキルも、いくらなんでも異常すぎないか!?」

「え? そうかしら。なんだかここに来てから、すごく体が軽くて、やりたいことがスイスイできるのよ」

 無自覚に微笑む三人を前に、リオンのゲーマーとしての勘が告げていた。

 『これは絶対に、何か裏がある』と。

 リオンはそっと三人に視線を向け、自身の神スキル【神羅万象の絆】に備わっている「詳細鑑定」のウィンドウを起動した。

『システム:対象のステータスに強力な【神級隠蔽(ゴッド・ハイディング)】を検知しました』

(隠蔽!? やっぱりなんかかかってる!)

『システム:マスターは天職【神の使徒テイマー・オブ・ゴッド】の管理者権限を有しています。テイム神の隠蔽術式をバイパスし、真のステータスを開示します』

 カチッ、と音を立ててウィンドウが切り替わり、三人の頭上に輝かしい文字が浮かび上がった。

==============================

【シスター・アンナ】

付与スキル:【慈愛の聖母(マリア・オーラ)】(神の恩寵)

【レオ】

付与スキル:【豊穣の開拓者(アグリカルチャー)】(神の恩寵)

【クロエ】

付与スキル:【神の手入れ(ゴッド・グルーミング)】(神の恩寵)

「…………っぶふぁ!!」

 リオンは思わず飲んでいたスープを吹き出しそうになった。

 間違いない。あの成人の儀の日に自分を見染めた『テイムの神様』が、自分が箱庭に一般人を引き入れたのを見て、裏でこっそり超絶チートスキルを付与したのだ。

(神様、隠蔽スキルまでかけてギルドとかにバレないように配慮してくれたんだろうけど……俺の権限だと丸見えなのを忘れてるぞ! うっかりミスの過保護かよ!)

 天を仰いで心の中でツッコミを入れつつも、リオンの胸の奥には、じんわりとした温かい感情が広がっていた。

(……ありがたい。神様が俺の『牧場作り』をここまで応援してくれてるなら、俺はもっともっと前へ進める)

 リオンは改めて、楽しそうに笑い合うシスターやレオ、クロエの姿を見た。

 孤児院には、まだ幼い子供たちが何人も残っている。今はまだ働けないが、数年経てば彼らもこの箱庭で、安全に、そしてこんな風に笑顔で暮らせるようになる。

「決めたぞ」

 リオンはスープを飲み干し、力強く宣言した。

「シスター。俺、これからもっと冒険者として無双して、バンバン稼いで、凄い魔物をたくさん仲間にしてくる。そして……孤児院の下の弟や妹たちも、大きくなったら全員ここで雇う!」

「リオン……!」

「全員が安心して腹いっぱい食えて、楽しく暮らせる場所。絶対に作ってやるから、三人は俺の留守中、この牧場を頼んだぜ!」

「おうっ! 任せとけ!」

「ノワールちゃんたちのお世話は私が完璧にするね!」

「ふふっ。美味しいご飯を作って待ってるわね、リオン」

 頼もしすぎるチート従業員たちに見送られ、リオンは清々しい足取りで箱庭を後にした。

 背後には神の過保護な加護。手元には最強へのポテンシャルを秘めた魔物たち。

 育成狂いの少年が歩む覇道は、ここから一気に加速していく。

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