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第65話:閑話・深淵の出処と、世界を縫い合わせる「幻獣の目録」

### 第65話:閑話・深淵の出処と、世界を縫い合わせる「幻獣の目録」

 エゼルガルド大陸が青空を取り戻し、二つの種族が手を取り合って新たな生活を始めた数日後。

 リオンの【無限の箱庭インフィニット・ファーム】の中央、世界樹ルミエルの木陰に設けられた白亜の円卓には、かつてないほど真剣な空気が漂っていた。

「……さて。エゼルガルドの復興は順調だが、我々にはまだ片付けねばならない『根本的な問題』が残っている」

 軍師ジンが、円卓の中央に魔導ホログラムを展開した。

 そこには、二つの大陸の立体地図と、これまでに浄化してきた瘴気の「流れ」が視覚化されている。

「カイト。君の演算結果をみんなに」

「ああ」

 白衣姿のカイトが立ち上がり、ホログラムに複雑な数式と立体モデルを追加した。

「狂神モルグスを再起動リブートした際、彼のコアから『瘴気の発生源』のログを抽出した。結論から言うと、瘴気はこの世界の自然発生的なものではない。……この世界のシステムの外側、『外宇宙の深淵(アウター・ヴォイド)』から漏れ出している劇物だ」

>

> ※カイトの解析式。世界の境界線に生じた亀裂(\Gamma_{\text{rift}})から、外宇宙の質量が絶えず流入していることを示している。

>

「世界の、外側……?」

 獣人のシンが犬耳をピクリと動かし、エルフのアイリスが息を呑んだ。

「つまり、モルグス様はその『穴』から漏れ出る瘴気を、自分の体で塞ごうとして……毒に耐えきれず狂ってしまったのですね」

#### 1. 神々の降臨:世界の穴と、究極の修復プラン

 アイリスの推測に答えるように、円卓の空座に黄金と漆黒の光が舞い降りた。

 過保護神アルトワールと、冥界神アイゼルである。

『その通りですわ、アイリス』

 アイゼルが重々しく頷く。

『モルグスは己の神格を犠牲にして「世界の穴」の蓋となりました。今、彼を初期化して正気に戻したことで、蓋の機能は一時的に修復されていますが……根本的な「穴の縫合」を行わねば、いずれ再び神が狂うか、世界が泥に沈むかの二択になります』

「ひえっ……! そんな恐ろしい穴、どうやって塞ぐのさ!」

 空の管理人サラが悲鳴を上げる。

『カッカッカッ! 案ずるなサラよ! そのために我らが「最強のテイマー」がいるのではないか!』

 アルトワールが扇子をバサァッと広げ、リオンを指差した。

『神の力で穴を塞げば、また神が汚染される。ならば! 世界のことわりに属する「最強の魔物たち」の概念を束ね、世界そのものの自己修復力をカンストさせればよいのだ!』

「……なるほど」

 ジンが眼鏡を押し上げる。

「四神の力で世界の基礎となる『四柱』は完成している。ハクヤ(零式)やシルビア(時空間)、ルナ・ノヴァ(星渡り)で特殊な環境も制御できる。……だが、空間の亀裂そのものを『縫い合わせる』ピースが足りない」

#### 2. 幻獣の目録リスト:未踏の隠しキャラたち

 リオンは自分のステータス画面——神から授かった【全知の図鑑・拡張版アカシック・ライブラリ】の「裏ページ」を開いた。そこには、まだシルエットで隠された数体の「神話級レアモンスター」が存在している。

「リオン君、君の元にいた大陸と、このエゼルガルドの伝承をすり合わせた結果、穴を塞ぐために必要な『鍵』となる幻獣の目星がついた」

 ジンとカイトが整理した情報が、円卓の全員に共有される。

* **【標的①:夢紡ぎのバク(幻獣)】**

* **生息地:** リオンの大陸・幻惑の森の最深部。

* **役割:** 世界の無意識(人々の恐怖や絶望)が瘴気を呼び寄せるのを防ぐ「精神的ファイアウォール」の構築。

* **【標的②:次元蜘蛛・アラクネ(神獣)】**

* **生息地:** エゼルガルド大陸・底なしの『大裂谷』。

* **役割:** 引き裂かれた空間の断層を、物理的かつ魔術的に「縫い合わせる」能力。シンの慧眼とアイリスの魔力探知が必須。

* **【標的③:虚無を司る黄龍(第五の神獣)】**

* **生息地:** 星の中心コア

* **役割:** 四神の中央に鎮座し、すべての魔力を統括して『世界の穴』に巨大な「蓋」を生成する最終システム。

「次元蜘蛛……! 昔、獣人族の古いお伽話で聞いたことがあるぞ。落ちたら二度と帰ってこれない大裂谷の底に、星の糸を吐く化け物がいるって」

 シンが身を乗り出す。

「夢紡ぎのバクは、私が王立図書館の禁書で読んだ記憶がありますわ。夢の世界に干渉するため、物理的な攻撃が一切通じない厄介な相手だと」

 ルミナスが扇子を口元に当て、記憶を呼び起こす。

#### 3. リオンの決意と、新章への胎動

「……つまり、この三体を『テイム』して仲間にできれば、モルグス様も、この世界のみんなも、もう二度と瘴気に怯えなくてよくなるんだね?」

 リオンが、円卓の仲間たちをぐるりと見渡した。

 その瞳に浮かんでいるのは、未知の強敵に対する恐怖などではない。「まだ見ぬ新しい友達レアモンスターに会える」という、生粋のテイマーとしての抑えきれないワクワク感だった。

「リオン様がそのお顔をされたということは、もう決定ですわね」

 ルミナスがクスリと笑う。

「セバス、急ぎアストラル・アルカの補給を。次の旅は、夢の世界から地の底、果ては星の中心まで向かうことになりそうですわ」

「畏まりました、お嬢様。至高のティータイムは、いかなる次元の果てでもご提供いたします」

「インフラ整備も一段落したしな。俺も行くぜ、リオン! 『慧眼』でどんな隠しルートも見つけてやる!」

「私だってエルフの森の知識なら誰にも負けないわ! 足手まといにはならないから!」

 シンとアイリスも、力強く立ち上がった。彼らもまた、世界を救う「最強の家族」の一員として、完全に腹を括っている。

「カイト、次元潜行用のソナーと、夢の世界へダイブするための『霊子変換機』の設計を急ごう。……忙しくなるぞ」

「ふっ、俺の『真理の演算鏡』を甘く見るなよ、ジン。すでに基礎設計は終わっている」

 理系と軍師がハイタッチを交わし、子供たちと四神たちが「またお出かけだー!」と歓声を上げる。

『うむうむ! よいぞリオン! お前たちの絆が、世界を直す最強のパッチ(修正プログラム)となるのだ! 困ったらすぐにおじさんを呼ぶのだぞ!』

『……アルトワール。貴方は少し、彼らの自立を見守ることを覚えなさい』

 女神アイゼルのツッコミをBGMに、円卓会議は最高潮の熱気と共に幕を閉じた。

「よし! 次の目標は『夢の森』と『大裂谷』だね! みんな、新しい家族を迎えに行く準備をしよう!」

 エゼルガルドの復興を足がかりに、リオンたちの旅は「世界の修復」という神の領域へとそのスケールを拡大する。

 全知の図鑑のコンプリートまで、あとわずか。

 最強のパーティーによる、星の運命を懸けた「幻獣スカウトツアー」が、今、高らかに開幕を宣言した。


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