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第60話:狂える森の調べと、白銀の福音

### 第60話:狂える森の調べと、白銀の福音

鉄牙城の周囲を囲むのは、かつて「美しき森の民」と呼ばれたエルフたちの変わり果てた姿だった。

彼らの瞳は濁った赤に染まり、放たれる魔術は創造の力ではなく、対象を腐らせ、塵に還す破壊の衝動へと変質している。

その軍勢の最奥、黒く立ち枯れた大樹の玉座に、一人の少女が座していた。

#### 1. エルフの王女、アイリスの独白:赤い視界の地獄

(……ああ、まただ。また、誰かの悲鳴が聞こえる)

エルフの第一王女、**アイリス**は、自身の意思とは無関係に杖を振るい、大規模な壊滅魔術を編み上げていた。彼女の脳内には、前世の記憶——平和な女子大生だった頃の記憶——が鮮明に残っている。しかし、今の彼女の視界は、どす黒い「システム・メッセージ」によって埋め尽くされていた。

> **【緊急命令:管理神モルグスより】**

> **対象:** 鉄牙城の全生命体。

> **アクション:** 根絶。

> **ペナルティ:** 自我の完全消去および魂の分解。

>

「……やめて。もう、誰も殺したくない……っ」

喉から漏れるのは、掠れた、しかし切実な拒絶。だが、彼女の指先は無慈悲に、城壁を焼く黒炎を放つ。

彼女はこの大陸に転生して以来、一度も「自分の意志」で動けたことがなかった。狂った神モルグスの端末として、同胞を、そしてかつての友であった獣人たちを蹂んにし続ける日々。

彼女のステータス画面は、赤いノイズで常にバグり続けている。

> **状態:[支配・狂乱・神の器]**

> **思考ログ:** 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ……。

>

(誰か。……神様でも、悪魔でもいい。……いっそ、私を殺して)

#### 2. 天の介入:物理法則を塗り替える光

アイリスが絶望と共に最強の極大魔術を放とうとした、その瞬間だった。

**「――システム・オーバーライド。……ごめんね、ちょっとお邪魔するよ」**

凛とした、しかしどこか温かい少年の声が、戦場全体に響き渡った。

直後、漆黒の雲を貫き、**『超弩級魔導戦艦(アストラル・アルカ)』**がその威容を現した。

「カイトさん、汚染周波数の相殺ノイズキャンセリング開始! ジンさん、エルフたちの精神回路マインド・サーキット一時休止スリープさせて!」

「了解だ。……数式展開、対神格汚染用『論理防壁(ロジカル・ウォール)』、全方位展開!」

カイトの放った不可視の演算波が、アイリスの視界を覆っていた赤いシステム・メッセージを、物理的に「デリート」していく。

**ピシッ、ピキィィィィン!!**

「な……っ!? 私の頭の中に流れていた『声』が……消える……?」

アイリスが驚愕して空を見上げた瞬間、アストラル・アルカの艦首から、純白の浄化波動が放たれた。

**【広域神域化(エリア・エデン):フルバースト!!】**

それは、破壊の光ではない。

大地に触れた瞬間、瘴気で腐っていた土からは新緑が芽吹き、狂乱していたエルフたちは糸が切れた人形のように、穏やかな眠りへと落ちていく。

鉄牙城を包んでいた紫の闇は、夜明けの太陽に焼かれる霧のように、一瞬で霧散していった。

#### 3. 邂逅:戦場に降り立つ救世主

静まり返った戦場。

アストラル・アルカから、一筋の光のライト・パスがアイリスの元へと伸びた。

そこをゆっくりと歩いてくるのは、琥珀色の瞳を優しく細めた少年——リオンだった。

「……君が、ずっと一人で戦ってたんだね」

リオンが歩み寄ると、彼の周囲からは箱庭の芳しい花の香りが漂った。

アイリスは杖を落とし、震える声で問いかける。

「あんた……何者なの? 私の『呪い』を……神の命令を、どうやって消したの?」

「俺はリオン。……君と同じ、向こうから来た『転生者』だよ。君を縛ってたのは神様かもしれないけど、俺の神様の方が、ちょっと……いや、かなり過保護なんだ」

リオンが手を差し伸べると、アイリスの頬を伝っていた黒い涙が、黄金の粒子となって消えていく。

「リオン君、解析が終わったぞ」

カイトが背後から歩み寄り、タブレット状の魔導端末を提示する。

「彼女の魂には、狂った神モルグスの『バックドア』が仕掛けられている。今すぐ俺の『箱庭サーバー』へ移送して、隔離・洗浄クリーニングをしないと、また再汚染されるぞ」

「……隔離? 殺すんじゃ、ないの……?」

アイリスの言葉に、ルミナスが優雅に歩み寄り、彼女の肩に自身の高級なケープをかけた。

「あら、そんな物騒なこといたしませんわ。貴女には、私たちの『お庭』で、まずはゆっくりとお茶を召し上がっていただかなくては。……サラ様、彼女をお連れして」

「了解です! ……アイリスさん、お疲れ様。ここからは私たちのターンだよ!」

サラがアイリスの腕を優しく取り、アストラル・アルカへと誘導する。

アイリスは、自分が数百年ぶりに「自分の足」で歩いていることに気づき、溢れ出す涙を止めることができなかった。

#### 4. 鉄牙城の解放と、新たな目的

城壁の上では、救われた獣人たちが歓喜の咆哮を上げ、シンが「……信じられねえ。本当に一瞬で終わらせやがった」と、リオンの背中を見つめていた。

リオンは、静寂を取り戻した森の奥——さらに深い闇が渦巻く、この大陸の「中心」を見据えた。

「ジンさん、カイトさん。アイリスさんを苦しめてた神様……モルグスは、あの奥にいるんだね?」

「ああ。彼女から得たデータで座標は特定した。……だが、そこはもはや『この世の理』が通用しない場所だぞ」

「大丈夫。俺たちには、みんながいるから」

リオンの【神羅万象の絆(ユニバーサル・テイム)】に、新たな項目が刻まれる。

**『悲劇のエルフ王女メランコリック・エルフ:アイリス』。**

絶望の最前線を「慈愛」で踏み潰したリオンたちの旅は、ついに狂った神が鎮座する聖域——**『忘却の神殿ロスト・サンクチュアリ』**へと、その矛先を向ける。

### 次のステップへのご案内

アイリスの救出に成功し、物語の焦点は「狂った神モルグス」の打倒(再起動)へと定まりました。

次回、**第61話は「箱庭でのアイリスの洗浄と、シン・サラ・アイリスの『転生者同窓会』」**。

**「ルミナスとアイリスの、ファッションと文化を通じた交流」**、そして**「カイトが解析したモルグスを救うための『神殺しのワクチン』の製作」**を描くのはいかがでしょうか?

執筆を進めてよろしいでしょうか?


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