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第54話:天空の女子会と、理不尽なまでの聖域移設

第54話:天空の女子会と、理不尽なまでの聖域移設

 白銀の船体から放たれる七色の魔力光が、雲海の静寂を切り裂いた。

 超弩級魔導戦艦『アストラル・アルカ』は、浮遊大陸の最頂点、古代神殿が鎮座する中央島へと、その巨体を横付けした。

「重力アンカー、定着! 気圧調整、1.013ヘクトパスカルで固定! リオン君、いつでも外に出られるぞ!」

 カイトの号令と共にハッチが開き、リオンは真っ先に飛び出した。その瞳は、悠然と宙を泳ぐ『星を渡る鯨』ルナ・ノヴァを捉え、かつてないほどギラギラと輝いている。

「いたぁぁぁ! クジラさん! 待ってて、今すぐ楽にして……じゃなくて、俺の仲間(家族)にしてあげるからね!」

1. 邂逅:テイム暴走と、ツッコミの嵐

「ちょっと待ったぁぁぁぁ!! ストップ! 警察呼ぶよ!? 警察ないけど!!」

 リオンが【神羅万象の絆(ユニバーサル・テイム)】を全力展開しようとした瞬間、神殿の影から桃色の髪を振り乱した少女——サラが猛スピードで割って入った。

「いきなり何!? 挨拶抜きで勧誘ナンパ!? このクジラさんは私の唯一の友達なの! 変なビーム出さないで!」

「えっ? あ、ごめん。……っていうか君、その喋り方。……もしかして、『あっち』の人?」

 リオンの問いに、サラはピタリと動きを止めた。直後、船から降りてきたジンとカイトを見て、その顔が驚愕に染まる。

「嘘……その眼鏡のインテリと、うさん臭いイケメン軍師のオーラ。……あんたたち、日本人!? しかもパーティー組んでるの!? なにこれ、オフ会!?」

「うさん臭いとは失礼な。……まあ、リオン君の被害者友の会(仮)へようこそ」

 ジンが肩をすくめ、カイトは手元のタブレットを叩きながら冷静に分析を告げる。

「リオン、落ち着け。彼女はこのフィールドの正規の『管理人』だ。勝手にクジラを奪ったら、生態系が崩れてこの浮遊島が全部地上に墜落するぞ(計算上、自由落下速度は秒速\bm{9.8\text{m}^2}だ)」

「ええっ!? 墜落!? それは不味いよ!」

「そうだよ不味いよ! 私も一緒に落ちるじゃん!」

 サラが必死に叫ぶ。テイマーとしての本能で突っ走るリオンと、それを現代語で制する男たち。天空の聖域は、一瞬にしてカオスな修羅場と化した。

2. 女子の共鳴:男たちのロマンは疲れるのです

 その光景を、一歩引いた位置から見ていたルミナスは、小さく、しかし深い溜息をついた。

 彼女は、自分と同じような服の乱れを気にせず必死に叫ぶサラの姿に、なぜか強烈なシンパシーを感じていた。

「……失礼。サラ様とお呼びしてよろしいかしら?」

「えっ? あ、はい。……うわ、何この美人。本物の令嬢……?」

「私はルミナス。あの方たちの『管理人』のようなものですわ。……貴女のご苦労、お察しいたします。あの方たちの『数値』と『ロマン』と『収集癖』には、本当に終わりがありませんものね」

 ルミナスが扇子を差し出し、サラにそっと影を作ってあげる。サラは、ルミナスの慈愛に満ちた(そして少し疲れた)瞳を見て、思わず涙を浮かべた。

「わ、わかってくれます!? このクジラさんも『美味しい雲を食べたい』とかしか言わないし、男の人たちは勝手に改造の話で盛り上がるし! 私、ずっと一人で『萌え』も『女子トーク』も足りてなかったんです!」

「ええ、ええ。よくわかりますわ。私の船でも、先ほどまで『重力子の偏角』がどうとかいう、およそお茶の席には相応しくない単語が飛び交っておりましたのよ」

 一国の令嬢と、天空の管理人の少女。

 住む世界も前世の記憶の有無も超え、**「転生者の男たちの扱いに苦労する女性陣」**という共通項だけで、二人の間には鉄壁の友情が爆誕した。

3. 提案:聖域ごとお持ち帰り

「……リオン様」

 ルミナスが、ジンとカイトを論破し終えたリオンの元へ歩み寄った。その微笑みは、いつになく「圧」がある。

「ル、ルミナス様? どうしたの、そんなに微笑んで」

「サラ様は、この天空でたった一人、数千年も孤独に耐えてこられました。そしてこのクジラルナ・ノヴァも、彼女がいなければ消えてしまう。……ならば、解決策は一つですわね?」

 ルミナスは天空の広大な景色を指差し、優雅に言い放った。

「リオン様。この浮遊島も、クジラ様も、そして何より私の『お友達』となったサラ様も。——まとめてリオン様の『箱庭』にお招きなさい。……いいえ、しなさい」

「えっ、でも島を全部テイムなんて……」

「リオン君。ルミナス様がお怒りになる前に、神様に頼んで『拡張パック』を出してもらえ。……俺も、彼女の持つ天空の希少素材には興味がある」

 ジンがこっそり助言する。

「……よし! 分かったよルミナス様! サラちゃん、クジラさん! 俺の牧場、空き地(空)はいくらでもあるから、島ごと引っ越してこない?」

「島ごと!? 賃貸じゃなくて買収レベルなんだけど!?」

4. 神の過保護:スカイ・ガーデン・アップデート

 その時、天界から「女子会の成立」を涙ながらに喜んでいたアルトワール神が、最高潮のテンションで介入した。

『おおお……! リオンの周りに華が増えた! しかも管理職ルミナス現場職サラの連携! これぞ私の望んだ理想のパーティーよぉぉぉ!!』

 カアァァァッ……!!!

 天空の聖域全体が、まばゆい黄金の膜に包まれた。

『リオン! そしてサラよ! 貴様らの「寂しい」という想い、私がまとめて解決してやろう! 神級権限**【次元重ね・天空庭園スカイ・ドメイン・マージ】**を発動する!』

 サラが管理していた数千の浮遊島が、物理的な座標を維持したまま、リオンの【無限の箱庭インフィニット・ファーム】の「上空」へと吸い込まれていく。

「うわぁぁぁ!? 景色が……景色が箱庭の中に溶け込んでいく!?」

『カッカッカッ! これでリオンの牧場は、地下(深海都市)、地上(草原・山・海)、空中(浮遊大陸)を網羅する「完全なる世界」へと進化した! サラよ、貴様には「箱庭副官」の権限を与えよう。ルミナスと共におやつを食べながら、リオンの暴走を監視するがよい!!』

5. 結末:そして女子会は続く

 数時間後。

 リオンの箱庭の上空に新設された『天空エリア(スカイ・リゾート)』。

 浮遊島の中央にある豪華なガゼボ(西洋風東屋)では、ルミナスとサラが、リオンたちの持ち込んだ最高級のスウィーツを囲んでいた。

「……信じられない。さっきまで死ぬほど暇だったのに、今は隣に美人がいて、目の前にはショートケーキがあって、足元には巨大なクジラが泳いでる」

「ふふ、これが『リオン様流』ですわ。サラ様、これから色々とお話ししましょうね。あの三人の男たちが、次に何を『改造』しようとするか、一緒に見張っておかなくてはなりませんし」

「……本当、あの人たち放っておくと世界を更地にして駐車場とか作りそうですもんね。……よろしく、ルミナスさん!」

 ガッチリと握手を交わす二人。

 その背後では、リオン、ジン、カイト、そしてゲイルの四人が、クジラのルナ・ノヴァの背中に「自動追尾式魔導レーザー」を載せるかどうかで、熱い議論(ロマンの衝突)を繰り広げていた。

「よし! クジラさんの背中に、箱庭直通の露天風呂も作ろう!」

「リオン君、それは流石にクジラが可哀想だろ……と言いたいが、断熱魔法を組めば可能か?」

「カイト、熱膨張率の計算を急げ!」

「「…………はぁ(溜息)」」

 ルミナスとサラの溜息が重なる。

 四神、深海、そして天空。

 世界のすべてを「牧場」に変えてしまったリオンたちの旅は、最強の女子タッグの誕生により、いよいよ誰にも止められない(そして誰も逆らえない)神域のスローライフへと突入するのだった。

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