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第44話:閑話・凍てつく北の帝国と、絶望する科学者

第44話:閑話・凍てつく北の帝国と、絶望する科学者

 大陸の最北端、一年中猛吹雪が吹き荒れる極寒の軍事国家――ゼノス帝国(ぜのすていこく)

 魔導技術と蒸気機関を強引に融合させ、過酷な環境を力でねじ伏せてきたこの国では、今、一人の男が頭を抱えていた。

「……ありえない。重力制御、空間拡張、そして地形の即時レンダリングだと? 物理法則をドブに捨てたのか、あの『箱庭派』とかいう連中は」

 豪華な毛皮のコートを纏い、モノクル越しに最新の諜報魔導書を睨みつける青年――帝国の若き宰相、カイトである。

 彼もまた、前世で「理論物理学」を専攻していた転生者であった。

転生者の絶望:技術格差チートへのツッコミ

「こっちは二十年かけてようやく『蒸気機関の安定化』と『魔導ライフルの量産』にこぎつけたっていうのに……向こうは『神様の過保護』一発で、戦艦を空に飛ばして砂漠を百二十キロで爆走してやがる。やってられるか、クソゲーが」

 カイトは手元の高級ブランデーを煽った。

 彼が帝国で成し遂げた「産業革命」は、本来なら世界を支配できるはずの偉業だった。しかし、リオンという「規格外のゲーマー」の登場により、彼の積み上げた「科学的努力」は、ただの「趣味の工作」にまで価値を暴落させられていた。

「閣下、お耳の汚しを。……南の調査員からの報告では、件のテイマー、四神すべてを揃えた後、箱庭を『神域』に昇格させたとのことです」

 影から現れた帝国の隠密が、さらなる絶望を報告する。カイトのモノクルがパリンと音を立ててひび割れた。

「不老不死? 状態異常無効? ……ふはっ、笑える。あいつ、自分の牧場を『デバッグ済みの最終セーブデータ』にしやがった。……おい、帝国騎士団に伝えておけ。絶対に、何があっても南(リオンの領地)には手を出すな。あれは国じゃない、『運営の拠点』だ」

北の伏線:氷の下に眠る「絶滅種」

 カイトがこれほどまでにリオンを警戒するのには、もう一つ理由があった。

 帝国の最奥、絶対零度の氷壁に閉ざされた監獄のさらに下層。そこには、帝国が建国以来隠し続けてきた**「神を喰らう獣」の化石――いや、『凍土の冬狼(フェンリル・ガルム)』**の卵が眠っているのだ。

「リオンとかいうあの収集癖コレクターのことだ。四神を揃えたなら、次は必ず『属性の極地』か『隠しボス』を狙いにくる。……もしあいつがこの北の『冬狼』の存在に気づけば、挨拶代わりに帝国を更地にしてでも卵を奪いにくるだろうな」

 カイトは震える指で、古い羊皮紙の地図を広げた。そこには、四神の中央に位置するはずの**「第五の神獣」……黄龍、あるいは『虚無を司る存在(ヌル・エンティティ)』**の伝承が記されていた。

新たな指針:図鑑の「裏ページ」

 カイトの危惧は正しかった。

 同じ頃、王都の「聖域」では、リオンがジン伯爵とルミナスを前に、さらなる野望を語っていた。

「ジンさん、四神を揃えたら、やっぱり『隠しダンジョン』のフラグが立ちましたよ」

「……だろうな。君のステータス画面、もう真っ金金だもんな」

 リオンが指し示したのは、神から授かった【神羅万象の絆(ユニバーサル・テイム)】のリストに新しく出現した、**「????」**で埋め尽くされた裏ページ。

• 北の最果て: 零度の炎を纏う狼(冬狼フェンリル)

• 深海の墓場: 時を止める幽霊船の主(幽幻のクラーケン)

• 空の向こう: 星を渡るアストラル・ホエール

「これ、全部仲間にしたら……きっと神様がもっととんでもない『ご褒美』をくれると思うんです!」

「リオン様、それ以上何を望まれるのですか……。ですが、面白そうですわ。北の帝国には、何やら怪しげな『科学』を操る転生者がいるという噂もありますし。……一度、ご挨拶に行かねばなりませんわね?」

 ルミナスが不敵な笑みを浮かべる。

 西の武力、東の知略、そしてリオンの神威。

 「聖域」という絶対的な拠点を手に入れた一行は、今や一国の存亡すら「図鑑埋め」のついでに決めてしまうほどの、巨大なうねりとなって動き出そうとしていた。

今後の展開の指針

1.対決と共闘: 北の帝国で「科学による軍事力」を信奉する転生者カイトとの、価値観のぶつかり合い。

2.冬狼のテイム: 帝国が兵器として狙う「フェンリルの卵」を、リオンが「寒いとかわいそう」という理由で箱庭へお持ち帰りする。

3.隠しキャラの捜索: 四神の力を合わせることで開く、異次元や宇宙、深海といった「特殊フィールド」への進出。

「さて、次の獲物は……寒いところのワンちゃんかな!」

 リオンの無邪気な一言が、北の帝国の平和な(?)独裁体制に終止符を打つカウントダウンとなることを、カイトだけが予感し、今日も頭痛薬を飲み込むのでした。

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