表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/80

第39話:陽光の獅子と、砂漠を駆ける魔導要塞

第39話:陽光の獅子と、砂漠を駆ける魔導要塞

 砂漠の入り口を守るゼファー男爵領。その領主館では、冷や汗を拭い続けるバーンズ男爵を前に、王国の権力者たちが並んでいた。

「し、しかし軍師殿、辺境伯令嬢……あの洞窟はAランクの獅子が群れを成し、瘴気が満ちております。騎士団を編成せねば……」

「男爵、心配はいりませんわ。リオン様が行くと言えば、それはすでに解決したも同然です」

「そうそう。彼は『攻略サイト』を見ながら進むチートキャラみたいなもんだから。男爵はただ、温かいお茶でも用意して待っていればいい」

 ルミナスとジンの圧倒的なオーラに、男爵は「は、はひっ!」と縮こまるしかなかった。当のリオンは、隣で地図を見ながら「よし、お昼までには終わるな」と、まるでコンビニに買い物へ行くようなノリで頷いていた。

陽光の洞窟、瞬く間の救済

 山間の奥深く、黄金の熱気を放つはずの『太陽の洞窟』は、今やどす黒い瘴気の霧に包まれていた。

 その最奥。本来は太陽のように輝くたてがみを持つ【陽光の双頭獅子(ソーラー・オルトロス)】たちが、泥を吐きながら身を寄せ合っていた。

「グルゥ……(もう、限界だ……)」

 リーダー格の巨大な獅子が、二つの頭を力なく垂らす。瘴気を体内に留め、領地へ漏らさないように耐え続けてきた誇り高き群れは、すでに死を待つばかりの衰弱ぶりだった。

「――お待たせ。よく頑張ったな」

 洞窟の入り口から差し込んだのは、暴力的なまでに清らかな翠緑の光。

「ルミエル、結界全開! シズク、ハク、浄化の水を回せ!」

『ピィィィィィンッ!』

 世界樹の神鹿(ユグドラシル・ディア)ルミエルが放つ【聖域展開ホーリー・サンクチュアリ】が、洞窟内の闇を一瞬で焼き払う。リオンが歩み寄り、獅子たちの額に触れると、テイマーとしての慈愛と神の癒やしが濁流のように流れ込んだ。

「シュルルゥッ!(全部吐き出せ、楽にしてやる!)」

「キュイッ!(お水おいしいよ!)」

 毒を吸い出し、癒やしの水で満たし、神のバフをかける。

 わずか数分前まで死に体だった獅子たちが、ガバッと起き上がり、太陽のような輝きを取り戻したたてがみを震わせた。

「ガアァァァァッ!!」

 二つの口から放たれた感謝の咆哮が洞窟を揺らす。

「よし。じゃあ、元凶のゴミ掃除だ。――イグニス、ライガ、主砲をぶち込め!」

 洞窟の亀裂から湧き出る瘴気の核に向け、背後に控えていた戦艦――ではなく、今回は『ランド・アルカ』に同乗していた魔竜と神虎が、容赦のない合体ブレスを放つ。

 ドゴォォォォォンッ!!

 物理的な破壊と聖なる浄化が混ざり合い、厄災の火種は塵一つ残さず消滅した。

お約束の「箱庭へのお引越し」

「さて、この洞窟が元に戻るまで時間はかかるし、砂漠の熱気も酷くなる一方だ。みんな、俺の『牧場』に来るか?」

 獅子たちは、自分たちの命と誇りを救ったリオンに、二つの頭を交互に擦り寄せて忠誠を誓った。

『ピコンッ! 陽光の双頭獅子リーダーとのテイムが完了しました!』

『群れ全体が配下に入りました!』

「お前は太陽を背負う者、『ソル』だ。さあ、山もお砂場も用意してあるぞ!」

 リオンがポータルを開くと、ソル率いる獅子の群れは、昨日レオが爆速でエディットした「箱庭内の新アルプス&砂漠エリア」へと勇ましく駆け込んでいった。

灼熱の砂漠、爆走ドライブ開始

 ゼファー男爵が呆然と見送る中、リオン一行を乗せた陸上要塞『ランド・アルカ』が砂漠の境界線に立った。

「エアコン設定温度、22度。冷蔵庫の冷え具合、よし。……ジンさん、ルミナス様、出発です!」

 リオンが魔力アクセルを踏み込むと、八輪の巨大タイヤが砂を豪快に跳ね上げた。

「――行くぞ! ランド・アルカ、全速前進!!」

 ゴオォォォォォォッ!!

 外気温は50度を超え、蜃気楼が揺れる『死の焦土砂漠』。普通の旅人なら一歩で命を削られる過酷な大地を、巨大な要塞が時速120キロで滑走していく。

 魔導サスペンションが砂丘の凹凸を完璧に吸収し、車内には優雅なクラシック音楽が流れ、子供たちは冷えたジュースを片手に「わーい! 速ーい!」とはしゃいでいる。

「……リオン君、君。窓の外を見てみろよ。さっきから『砂漠の死神』と呼ばれるデス・ワームが追いかけようとして、あまりの速さに置いて行かれて絶望してるぞ」

「あはは、この車から逃げ切れるのは青龍セイランくらいの速さがないと無理ですよ」

 ジン伯爵は、手元のタブレット(神の加護による魔導端末)を操作しながら、もはや乾いた笑いしか出なかった。

「お嬢様、このお菓子、冷えていて大変美味にございますな」

「ええ、セバス。砂漠のど真ん中で冷たいパルフェをいただくなんて……私の知っている『砂漠越えの試練』は、どうやら別の星の物語だったようですわ」

 ルミナスは、窓の外を爆速で過ぎ去る地獄の景色を、まるで映画でも見るかのような冷めた目で見守っていた。

 最強の矛と盾、そして海と陸の足を得たリオン。

 砂塵の向こう、天空を舞う最後の一体――朱雀の待つ聖域へ向けて、一行は常識を置き去りにしたまま、最短ルートで突っ込んでいく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ