第26話:同郷の知将と、テイム神のサプライズ・クエスト
第26話:同郷の知将と、テイム神のサプライズ・クエスト
王都の辺境伯邸、厳重な警備が敷かれた応接室。
ルミナスとセバスが同席する中、リオンは目の前のソファに座る長身の青年と対峙していた。
東の大公家の懐刀、ジン伯爵である。
「初めまして、リオン君。いや……『四神コンプリート』を狙う、重度のゲーマーさん、と呼んだ方がいいかな?」
ジンの悪戯っぽい笑みと、この世界には存在しない『ゲーマー』という単語。
それを聞いたリオンは、隠すことを諦めて苦笑した。
「やっぱり……ジンさんも、『あっちの世界』から?」
「ああ。過労死してこの世界に転生した時は驚いたが、現代の知識と論理的思考のおかげで、若くして大公の軍師にまで登り詰めさせてもらったよ。君の規格外なテイムと行動パターンを見て、すぐに同郷の日本人だとピンときたのさ」
二人のやり取りを聞き、ルミナスが扇子を口元に当てて目を丸くしていた。
「リオン様、ジン伯爵……お二人は、『違う世界』の記憶を持って生まれ変わったということですか?」
「はい。黙っていてすみません、ルミナス様。俺の変な知識や、魔物に対する異常な執着は、全部その前世の記憶から来てるんです」
最大の秘密を打ち明けられ、ルミナスは少しの間沈黙した。
しかし、彼女の顔に浮かんだのは、怒りや戸惑いではなく、花が咲くような晴れやかな笑顔だった。
「なるほど! あなたのあの常識外れの力と、成熟した精神性。これでようやくすべての辻褄が合いましたわ! 前世がどこであろうと、リオン様はリオン様。私の見込んだ最高のパートナーであることに、何の変わりもありません!」
「ルミナス様……」
「くくっ、辺境伯令嬢は噂以上に器がデカい。俺が大公を説得して、君たちとの絶対的な同盟を推し進めたのもそれが理由だ。西の強硬派が潰れた今、東西の二大派閥が組めば、リオン君は誰の邪魔も入らず冒険に集中できる」
ジンはテーブルの上に、東の海域の詳細な海図を広げた。
「東の『蒼海群島』に眠る青龍。大公軍の全面協力のもと、船も物資もすべてこちらで用意しよう。……その代わり、この世界の平穏を脅かす厄災が来た時は、君のその規格外な戦力を貸してほしい」
「もちろんです。最高の条件ですよ、ジンさん!」
リオンとジンが固い握手を交わした、まさにその瞬間だった。
カアァァァッ……!!
「なっ!? 窓が閉まっているのに、どこからこの黄金の光が!?」
突然、応接室が目も眩むような光に包まれ、ジンの悲鳴が上がった。
リオンとルミナスは「あっ、またか」と顔を見合わせ、直後に彼らの脳内に響き渡った陽気な声に苦笑を漏らした。
『カッカッカッ! よくぞ新たな同盟を結んだ、我が使徒リオンよ! そして東の知恵者よ!』
「えっ!? 誰!? 脳内に直接!?」
ジンが目を見開いて立ち上がる。
転生者であるジンは、これまで自らの頭脳だけで成り上がってきたため、「神の奇跡」を直接体験するのはこれが初めてだった。
『私はテイム神アルトワール! リオンの陣営に有能な軍師が加わった祝儀だ! ジンよ、貴様に神の恩寵【天眼の軍師】を授けよう! これで我が使徒の陣営に向けられた脅威を、広域マップのように俯瞰で把握できるはずだ!』
「ぐわっ……!? ス、ステータス画面が強制アップデートされた!? 情報処理能力が、脳のキャパシティを超えて……いや、超クリアに最適化されていく……っ!」
頭を抱えてしゃがみ込むジン。彼もまた、神の過保護な『お気に入り枠』に強制追加されてしまったのだ。
『ついでに、一つ啓示を与えておこう! リオンよ、東の海へ向かう道中にある『腐食の湿地帯』に、厄災の瘴気の兆候がある。青龍をテイムするついでに、その元凶も綺麗にぶっ飛ばしてくるのだ! 期待しているぞ!』
言いたいことだけを言い残し、嵐のように神の光と声は消え去った。
「ぜぇ、ぜぇ……っ。な、なんだ今の……。俺の脳内に、王国全土の脅威度マップみたいなのが視認できるようになったんだが……?」
「あはは……。ジンさん、俺についてる神様、ちょっと過保護で押しが強いんです。でも、これでジンさんも完全に『こっち側』ですね」
「リオン様、同郷のジン伯爵が加わり、さらに盤石になりましたね! ふふっ」
呆然とするジンをよそに、リオンとルミナスは嬉しそうに笑い合った。
強大な大公家の軍師(転生者)が、神の奇跡によって完全な身内となったのだ。これ以上ないほど頼もしいバックアップである。
「よし。神様からのクエストも出たし、目指すは東の海! 瘴気を払って、青龍をテイムするぞ!」
王都の裏切りを警戒する必要はもうない。
ルミナスとジンという最高の知将たちに背中を預け、リオンと従魔たちのパーティーは、四神コンプリートという新たな夢と、厄災討伐の使命を胸に、太陽昇る東の大地へと力強く旅立つのだった。




