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第24話:閑話・四神コンプリートの夢と、箱庭の新たな遊具たち

第24話:閑話・四神コンプリートの夢と、箱庭の新たな遊具たち

「ただいまー! みんな、新しい家族を連れてきたぞ!」

 西の霊峰から【無限の箱庭インフィニット・ファーム】へと帰還したリオンが、広大な平原に向けて声を張り上げる。

 ポータルを抜けて亜空間へと足を踏み入れたのは、山のように巨大な霊峰の護法亀(マウンテン・イージス)のゲンと、白銀の毛並みに紫電を纏う紫電の神虎ライトニング・タイガーのライガだ。

「グルルッ……?(なんだここは、信じられないほど空気が澄んでいる……)」

「グゥゥゥ……(それに、美味そうな匂いもするぞ)」

 かつて死の霊峰で殺し合っていた神話級の二体は、箱庭の平和すぎる空気に呆気を取られていた。

 そこへ、丸太小屋の方からドタドタと元気な足音が駆け寄ってくる。

「わぁぁぁっ! おっきい亀さんだー!!」

「しろい猫ちゃん!! かっこいいー!」

 五歳のティムと四歳のミアをはじめとする孤児院の幼児たちが、目をキラキラさせながらゲンとライガに向かって猛ダッシュしてきた。

「ガァッ!?(ま、待て子供! 俺の体にはまだ紫電が……感電して死んでしまうぞ!?)」

 ライガは慌てて雷を引っ込めようとしたが、間に合わない。ミアが勢いよくライガの鼻先にダイブした。

 ――バチッ!

 しかし、神の過保護スキル【天使の無重力(エンジェル・ステップ)】に守られたミアは感電するどころか、雷の反発力を利用して「ぽよーんっ!」と楽しそうに跳ね回り、そのままライガのもふもふの背中に着地したのだ。

「えへへー、あったかーい!」

「ニャァァァァン……(なんだこの愛らしい生き物は……守らねば……!)」

 さらに、幼児全員に付与された【無垢なる愛され者(イノセント・カリスマ)】のパッシブ効果が直撃。霊峰で最強の矛として暴れ回っていた白虎は、一瞬にして完全に骨抜きにされ、ミアを乗せたままゴロゴロと巨大な喉を鳴らし始めた。

 一方のゲンも、ティムたちに強固な甲羅をよじ登られ、完全に『超大型・安全第一アスレチック遊具』として扱われていた。しかしゲンもまた、慈愛に満ちた目で「ほっほっほ」と笑うように目を細めている。

「……うん、相変わらず神様の過保護スキルはバグってるな。まあ、二匹が楽しそうならいっか」

 リオンはホッと息を吐き、テラス席へと向かった。

 そこでは、シスター・アンナが淹れた紅茶を楽しみながら、ルミナスとセバスが優雅にくつろいでいた。彼らは王都での「貴族のお掃除」を終え、一足先に箱庭へと遊びに来ていたのだ。

「おかえりなさいませ、リオン様。またずいぶんと規格外の魔物を連れ帰りましたね」

「お疲れ様です、ルミナス様。あいつらはゲンとライガです。……でも、あいつらを見てたら、俺の中で『テイマーとしての血』が騒いじゃいまして」

 リオンは席に座るなり、真剣な顔でテーブルに身を乗り出した。

「亀(玄武)と、虎(白虎)が揃ったんですよ。だとしたら……育成ゲーマーとしては、絶対に『龍(青龍)』と『鳥(朱雀)』も揃えて、【四神】をコンプリートしたくなるじゃないですか!」

 前世のゲーム知識が、リオンの収集欲をガンガンに刺激していた。

 四神が揃った時の陣形バフ、あるいはただ並べた時の圧倒的な見栄えの良さ。イグニスは西洋のドラゴンだから、青龍とは少しジャンルが違う。どうしても東洋風の神々しい龍と、炎を纏う不死鳥のコンプセットをこの箱庭で眺めたい。

 そんなリオンの熱弁を聞いて、ルミナスは扇子で口元を隠しながら「ふふっ」と嬉しそうに笑った。

「素晴らしい野心ですわ、リオン様! 伝説の四神を一人で従えるテイマーなど、歴史上どこを探してもおりません。パトロンとして、その夢、全力で支援させていただきますわ!」

「おおっ、さすがルミナス様! 話が早い!」

「セバス。我が家門の情報網に、それらしき魔物の伝承はありませんか?」

 ルミナスの声に、老執事セバスが素早く手帳を開く。

「……ええ。お嬢様のご期待に沿えるか分かりませんが、いくつか気になる噂が。一つは、遥か東の海に浮かぶ『蒼海群島(そうかいぐんとう)』。そこには、海を割り天に昇る『水神の龍』の伝承が残っております」

「水神の龍……! 青龍のイメージにピッタリだ!」

「もう一つは、王国のさらに南、灼熱の砂漠を越えた先にある『煉獄火山(れんごくかざん)』。そこには、数百年周期で炎の中から蘇る『紅蓮の神鳥』が棲み着いているとか」

 東の海と、南の火山。

 新たな未知のフィールドと、そこに眠る激レア魔物の情報に、リオンの琥珀色の瞳は期待でキラキラと輝き始めた。

「東と南か……! まだまだこの世界には、俺の知らないヤバい魔物がいっぱいいるんだな!」

「ええ。ですがその前に、西の件で大活躍したリオン様たちを労うのが先ですわ。今日はアンナ特製のケーキでお祝いしましょう」

「賛成! カイルたちも呼んで、大宴会だ!」

 平原では、子供たちに揉みくちゃにされながらも幸せそうなゲンとライガ、そして先輩風を吹かせるイグニスやノワール、ルミエルたちが賑やかにじゃれ合っている。

 最強のパトロンと、神の加護を受けた頼もしい家族たち。

 四神コンプリートという新たな、そして途方もない夢を抱きながら、リオンの箱庭でのスローライフ(という名の規格外な育成劇)は、さらなる高みへと続いていくのだった。

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