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第2話:ギルド登録と、震えるほどの歓喜(初テイム)

第2話:ギルド登録と、震えるほどの歓喜(初テイム)

 大聖堂は、水を打ったような静寂に包まれていた。

 天井を貫くほどの黄金の光が収束した直後、司祭は目を丸くして震え、周囲の貴族の少年少女たちは信じられないものを見るような目でリオンを凝視していた。

「あ、あり得ん……! 平民の分際で、これほどの祝福の光だと!?」

「い、一体どんな神聖な天職を引き当てたというのだ……!」

 騒然となり始めた大聖堂の中で、リオンは手元のギルドカードと、空中に浮かぶ半透明のウィンドウを冷静に見比べていた。

(【神の使徒】に、神羅万象の絆……。いやいやいや、待て待て。こんなの正直に申告したら、絶対に国とか騎士団に囲い込まれて、面倒なイベントに巻き込まれるやつだ!)

 前世のゲーマーとしての勘が、けたたましく警鐘を鳴らす。

 目指すのはあくまで「最強のモンスター牧場によるスローライフ」だ。権力闘争や窮屈な宮廷生活などお断りである。

『システム:ギルドカードの表示情報を偽装しますか?【YES / NO】』

 ふと視界の隅に現れた親切な案内に、リオンは内心でガッツポーズをしながら全力で『YES』を選択した。すると、カードに刻まれた神々しい文字がシュルシュルと形を変え、一般的な表記へと偽装された。

「ええと……光は凄かったですけど、天職はただの『テイマー』みたいです。スキルも『従魔契約(テイム)』だけですね」

 リオンがわざとらしく頭を掻きながら偽装されたカードを見せると、司祭は呆けたように口を開け、周囲の貴族たちは「なんだ、ただのテイマーか」「光だけは立派だったのに見掛け倒しだな」と、途端に安堵と嘲笑の声を上げ始めた。

 この世界において、テイマーは魔物を従えるまでに時間と莫大な費用がかかるため、決して優遇される職業ではない。リオンにとっては好都合だった。

 面倒な儀式の列からそそくさと抜け出したリオンは、足早に王都の商業区へと向かった。

     ◇

「わぁ……! これが、冒険者ギルド……!」

 重厚なオーク材の扉を開けると、そこには熱気と喧騒、そして鉄と酒の匂いが入り混じった独特の空間が広がっていた。

 毛皮を纏った大柄な戦士、ローブ姿の魔法使いなどがジョッキを片手に談笑したり、依頼の手配書が貼られた掲示板の前で議論を交わしたりしている。

「あら、見ない顔ね。もしかして、今日成人の儀を終えたばかりの新人さん?」

 カウンターから優しく声をかけてきたのは、亜麻色の髪をふんわりと束ねた受付嬢だった。胸元の名札には『メリル』と書かれている。

「はい。冒険者の登録に来ました。俺、リオンって言います」

「ふふっ、歓迎するわ、リオン君。私は受付のメリルよ。それじゃあ、このギルドカードを魔力板に乗せてくれる?」

 メリルは孤児院の粗末な服を着たリオンに対しても、一切態度を変えることなく丁寧な笑顔で手続きを進めてくれた。

「天職はテイマーなのね。最初は魔物を従えるまで大変かもしれないけど、コツコツ頑張れば絶対に立派な冒険者になれるわ。応援してるからね!」

「ありがとうございます、メリルさん!」

「おいおい、メリルちゃんを困らせるなよ坊主!」

 ドンッ、とリオンの背中を大きな手が叩いた。振り返ると、熊のような体躯をしたベテラン冒険者が豪快に笑っていた。

「俺は大剣使い(グレートソード)のガンツだ。テイマーたぁ、また茨の道を選んだな! だが、お前さんいい目をしてる。困ったことがあったらなんでも相談しな!」

「あ、ありがとうございます、ガンツさん!」

 ギルドの温かい雰囲気に、リオンは胸を撫で下ろした。どうやら、このエルシオンの冒険者たちは、前世のゲームでよく見た「新人いびり」をするような輩ばかりではないらしい。

「よし。まずは手始めに……」

 リオンは掲示板から『王都周辺の薬草採取(やくそうさいしゅ)』と『角兎(ホーンラビット)の討伐』という最も簡単な依頼書を剥がし、メリルに提出した。

     ◇

 王都の東門を抜け、見晴らしの良い草原へと足を踏み入れる。

 心地よい風が吹き抜ける中、リオンの琥珀色の瞳は、獲物を狙う鷹のように鋭く輝いていた。

「さあ……待ちに待った瞬間だ。俺の神スキルの力、見せてもらおうか」

 草むらがガサリと揺れた。

 そこから現れたのは、半透明の青いゼリー状の魔物――最弱モンスターの代名詞たる『スライム』だった。

 一般的な冒険者なら見向きもしない雑魚魔物。しかし、育成狂いのリオンにとって、スライムほど「無限の進化ツリー」を秘めた魅力的な存在はいない。

 リオンはスライムに向けて手をかざし、高らかに宣言した。

「発動しろ、ユニークスキル――【神羅万象の絆(ユニバーサル・テイム)】ッ!」

 ピシャァァン! と、脳内に心地よいシステム音が鳴り響く。

 次の瞬間、リオンの視界に、スライムの頭上から詳細な「ステータスウィンドウ」が展開された。

==============================

【種族】ブルースライム(個体名:未設定)

【レベル】1

【状態】空腹・警戒

【好感度】0/100

【潜在能力】S(突然変異の兆候あり)

【進化可能ツリー】表示する >>

(す、すげえ……!! ゲームと全く同じ……いや、それ以上の詳細なデータだ! しかも潜在能力S!? こいつ、育て方次第で『神聖魔粘体(ホーリー・スライム)』や『暴食の魔王(グラトニー・スライム)』に進化できる個体じゃないか!!)

 リオンの全身の血が沸騰するような興奮が駆け巡る。

 彼はリュックから、孤児院のまかないで残った干し肉の欠片を取り出し、ゆっくりとスライムの前へ差し出した。

「おいで……怖くないぞ。俺と一緒に、世界最強を目指さないか?」

 リオンの放つ、神スキルに裏打ちされた絶対的な「慈愛と親和」の波動。

 プルプルと震えていたスライムは、やがて警戒を解き、干し肉を体内に取り込むと、嬉しそうにリオンの足元にすり寄ってきた。

『ピコンッ!』

『ブルースライムの好感度が急上昇しました!』

『ブルースライムとのテイムが完了しました!』

 ここに、のちに世界を震撼させる【神の使徒】と、最強の相棒となる最初の一匹との、記念すべき契約が結ばれたのである。

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