名画窃盗事件⑧
そう言って、博子は司から渡された資料を見やる。
「では、いきます」
「事件当日。その二時間前から始めてみましょう」
その声とともに麻里奈の思考に博子からの映像が流れ込んでくる。
「……いた。やっぱり同じ奴だね」
「そうですね。もっとも、透明化の能力持ちが山ほどいたら高級品の窃盗だの要人暗殺だのが世界中で起きるでしょうから当然でしょう」
「隣に歩いているのが共犯……こいつもあの時と一緒。こいつらはコンビで絵画泥をやっているわけか」
「そうなりますね。顔が似通っていますからもしかしたら兄弟かもしれませんね」
「あり得るな」
「それにしても、こいつはこれを生業にしているということは、当然売り手も決まっているのだろうな。そうでなければ売ろうとした段階で足がつくから」
「そして、その絵の行き先は盗品を持っても黙っていられる特別なコレクターということになる」
「ええ。コレクターとはその所有を誰かに自慢することを生きがいにするいきもの。それをおこなわないということは特別なコレクター。または……」
「権力者。そういえば、あの国の王太子のコレクションは盗品と盗掘品だらけだったな。もしかしたら、今回も依頼主はあの王太子かもしれない」
「まあ、部外者でそれを知っているのは私たちふたりだけなのでそれを口外しても解決しないどころか、私たちの命が狙われるだけいいことはありませんが」
「そうだな」
「さすがにバックがない状態で国を相手に喧嘩をする気はない」




