名画窃盗事件⑦
「……この美術館での窃盗では……」
「普通に入館し、透明化したうえで閉館後まで留まり、警備がいなくなったところで仕事をする。ヒロリンのいうとおりコートの下に絵を隠しているな。だが、こうして透明化を無効にしたうえで犯行を眺めていると、実にずさんだな。犯人のやり口は」
「ですが、それで捕まらないのですから、十分ということでしょう」
「それでどうやって出ていくの?」
「警察が山ほど来ます。ドアも何度も開くでしょう。そのどこかのタイミングで。こんな感じで」
「なるほど」
「警察がこれを見たら発狂するだろうな。目の前に犯人がいるのに気づかずそのまま取り逃がすのだから」
「それでこの犯人はこのまま徒歩で現場を離れるの?」
「どうでしょう。とりあえず追ってみましょうか」
「トラック?」
「そのようですね。つまり、犯人には共犯者がいたということになります。そして、犯人は荷台に。これは視覚のトリックですね。丸見えの荷台には何も載っていないのですからどれだけ検問にあっても引っかからないという」
「見えるものがすべて。たしかにそのとおりなのですが、このような異才にとっては常識んを手玉にとるのは簡単ということです」
そう。
博子の能力は対象者の痕跡を追って時間を進めることも可能なのだ。
つまり、その気になれば、犯人の隠れ場所まで辿ることができる。
だが……。
「この事件はこれくらいでいいよ。頼まれているのはこっちの事件の解決ではないから」
「問題はこいつが今回の犯人かどうかだけ」
「いいのですか?今の事件の記憶は消えてしまいますけど」
「いいよ。こいつの似顔絵は書いたから」
「わかりました。では、本命の方にいきましょうか」




