名画窃盗事件④
そして、長々の続いた司の説明を聞き終えた麻里奈と博子は薄ら笑いを浮かべる。
「田舎の貧乏美術館ならともかく、国立の大美術館からそんなに簡単に美術品を盗み出されるとは。この国も終わりだな」
「まったくです」
「いったいどんな警備をしていたのでしょうね」
「経費節減のために何もしていなかったのではないのか。何しろ最近では政治家の懐を潤さないものには公金を使わないようだから」
「いやいやいやいや……」
「収められていた美術品の価値を考えてよ。あり得ないでしょう。そんなこと」
止まることがない麻里奈と博子の言葉を遮るように司が自身の言葉を割り込ませる。
だが、これこそ麻里奈が待っていたもの。
上品な顔に不似合いな黒い笑みを浮かべた麻里奈が司を見る。
「じゃあ、聞くけど……」
「今時防犯カメラを付けないなどありえないでしょう。そうでなければ、犯人の痕跡が全くないなどありえないのだから」
「ああ。それね……」
麻里奈の言葉に司が顔を歪める。
「防犯カメラはあった。館内にも周辺にも」
「だけど、何も映っていなかったのだよ」
「全く」
「近くを走る車は?」
「かなり探したけど、今のところは収穫なし」
「つまり、防犯カメラは正常に作動していた。だけど、犯人は映っていないと?」
「そういうこと」
「犯人は奇術師かもしれませんね」
「もし、無事そうならお蔵入り一直線だ」
「それだけはご勘弁願いたい」
「まあ、概要はわかった。それで、必要なものは用意できているの?」
「それはもちろん」
麻里奈が口にした瞬間、司はすぐさまテーブルに写真を並べる。
「これが盗まれた絵があった場所のもの。それから館内の写真がこちら」
「そして、美術館のマップ。そして、美術館周辺の写真」
「ちなみに、防犯カメラは……」
「地図に書き込んである。こんな感じで……」
「おおよその犯行時間は?」
「午前一時から二時」
「わかった」
「とりあえず写真を見ながら推測する」
「明日の放課後には第一報を伝える。そのときに手付をもらうから」
「よ、よろしく頼む。ふたりとも」




