名画窃盗事件②
そして、それから三十分後。
警視庁のエリート刑事四天王寺司は契約書にサインをする。
ちなみに、エリート刑事が麻里奈たちに支払うことになる大金の元手はズバリ裏金。
もう少しだけ言葉を選べば、それは捜査協力した者たちへ支払う特別な報酬となるわけなのだが、もちろんこのような金は公的な帳簿とは別の場所から支出される。
もちろん、四桁、五桁の金なら、刑事のポケットマネーということもあるだろうが、さすがに麻里奈が要求した七桁の金は個人で支払えるものではない。
当然組織として用意したものである。
そして、その支払いは一介の刑事が単独で決められるものではない。
当然上司、そして、そのまた上司の許可が必要となる。
それがその三十分が必要だった理由となる。
「……許可は取った」
「だけど、支払いをするのは成功報酬だけで手付の十万と経費類は僕が出せって」
「当然でしょうね」
「自分は何もリスクを背負わず事件解決の名誉だけ得ようとはおこがましいにも程があるというもの。ということで」
「つまらない一言を言った罰として手付を二十万にします」
「でも、契約は済ました」
「そんなことは知っています。だけど、その契約書には十万円は最低金額であり、依頼内容によって手付を百万まで引き上げられると書いてある。つまり、これは値上げの第一段。そして、話を全部聞いたところで決定される百万円が正式な手付金額」
「あこぎな」
「じゃあ、契約を打ち切る?だけど、その場合は違約金として二百万円を支払ってもらいます」
「そうなったら大変ですね。裏金の支出を許可した上司の方にどのような説明をするのでしょうか?」
「それはもちろん自分の金を出したくないからというのだろう」
「怒られませんか」
「怒られるだけでは済まないだろうな。今後にも響く」
「まあ、一介の刑事の将来など私には全く関係ない。さて……」
「どうする?」




