名画窃盗事件①
「……また刑事さんか」
やってきた依頼者の顔を見て麻里奈は大きなため息をつく。
「事件を解決するのが刑事さんの仕事でしょうに」
「それなのに自身の仕事を私に丸投げしたうえで、手柄だけ浚っていく。それでは、公共事業を受注するだけが仕事で、実際の仕事は何十階層にも存在する下請けがおこない、中抜きで丸儲けする某企業のようではないですか」
「もしかして、将来この経験を生かしてそちらへ転職するつもりですか?」
「相変わらず手厳しい」
「だけど、やれることは全部やった」
「それでも、犯人を見つけられないと?」
「だから、恥を忍んでここに来ているのだよ。麻里奈ちゃん」
「なるほど」
「そういうことなら、特別に無料で解決策を教えてあげましょう」
「お蔵入りにすればいいでしょう」
「それですべてが解決だ」
「もちろん手順としては正しいと思います。ですが、まりんさん。それでは肝心の事件は解決していません」
「博子ちゃんの言う通り。だから、こうして来ているわけで……」
「ふん。口だけは達者なヘボ刑事が」
女子高校生に泣きつく十歳近く年長の刑事を軽蔑色の視線で眺める麻里奈。
そして、惨めを全身で体現する刑事。
ふたりを均等に眺め直した地味顔眼鏡少女が口を開く。
「ですが、まりんさんの言うとおり、この手の仕事は本来四天王寺刑事が仲間の刑事さんとやるべきもの。それができない。そして、本職の刑事さんたちができないことを私たちが代行するのです。当然相応の報酬はいただきます」
「もちろん報酬は支払う。だが……」
「前回百万円も払っているのだから、今回は少しおまけしてもらいたいのだが……」
「いや。あれは前回の報酬で今回はそれとは別」
「内容がわかりませんが、手付として十万。成功報酬として最低二百万。難易度によってはさらに上乗せ。もちろん経費、税金別」
「これが払えないのなら、話は終わり。今すぐお帰りいただきましょうか。警視庁のエリート、四天王寺司刑事」




