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第18話 ティータイムの邪魔者

それでもミエリアが瞬き一つせず無反応を貫くと、女は腹の虫が治まらないのか、ギリッと歯ぎしりをする音がジアのいる所まで聞こえてきそうだった。


それにしても、今帝国で流行っているお菓子といえば、ただ無闇矢鱈に甘くて着色料をたっぷり塗っただけの見た目が可愛いマジパンだとか、中にクリームも詰めずただのシュー生地に砂糖シロップをかけて無神経に山積みしたクロカンブッシュだったのではないか?

無駄に甘いだけで何の味もしないような代物に比べれば、たとえ見た目は素朴でも、良い材料を惜しみなく使って程よく甘く、香ばしい風味が生きているミエリアのお菓子の方がはるかに美味しかった。


ピクッ。ジアはルセテリの額に青筋が浮かび上がるのを見た。


「メディア・ド・アウレリア公爵夫人」


ついにミエリアが静かに口を開いた。


「私のティータイムに夫人を招待した記憶はありませんが」

「あら、皇后陛下が開かれるティータイムなのですから、当然、帝国一の公爵家の女主人である私が同席すべきでしょう」


女、いや、アウレリア公爵夫人が誇らしげに胸を張り、自慢するように堂々と自分を指差して意気揚々とした笑みを浮かべた。


「皇室の礼法に未だこれほど不慣れでいらっしゃるのですから、当然、帝国を代表する貴族の家柄である私がしゃしゃり出て、皇后陛下をお助けしなければならないじゃありませんか?」


類は友を呼ぶとはよく言ったもので、やはりあの公爵にしてこの夫人ありだった。

行動や言葉遣いがこうも似ているとは、まさに似た者夫婦に他ならなかった。


「家族だけのティータイムです。部外者である夫人を招待する理由がありませんが」

「あら、傍系とはいえ私も立派な家族ではありませんか? 水臭いことをおっしゃるのですね」


メディアの言葉にも、ミエリアの態度は揺るがない様子だった。

彼女が自分を見下そうが無視しようが、ミエリアの態度は最初と変わらず一貫していた。


「それはつまり、私が娘とお茶会をするたびに、夫人を同席させなければならないということですか?」


ミエリアの鋭い指摘に、メディアは返す言葉を見つけられなかったのか、金魚のように口をパクパクさせていた。

夫婦や親子間のティータイムには部外者の同席を避けるというのは、帝国の暗黙の了解のようなものだった。

そんなことは帝国の通りすがりの犬でさえよく知っている事実であり、もしここでメディアが自分も家族だと言い張れば、逆にメディアの方が帝国の常識も知らない女だという汚名を着せられかねなかった。


ミエリアはいつも皇帝の後ろに隠れて大人しくうつむいているだけだったため、このような彼女の姿はメディアにとって非常に見慣れないものだった。

後ろにいる貴族の夫人たちがヒソヒソと囁き始めると、メディアは仕方なく、今は攻撃ではなく一歩引くべき時だと直感した。


「お、ほほ……そうですの。皇女様とのティータイムの場でしたのね」

「ええ、娘との私的な席に、公爵夫人が同席する理由は見当たりませんね」


ギリッ。

どこかで扇子が壊れる音が聞こえてきた。

メディアの思惑通りにいかないほど、皇后が甘くないという事実が気に入らなかった。


「私はてっきり、皇后陛下がティータイムをご準備されていると聞き、当然私たちを招待するために設けられた席だと思っておりましたのよ。ようやく皇后陛下が社交界での活動を始められるのかと、お手伝いするために飛んできたというのに……」


このまま大人しく引き下がるメディアではなかった。

メディアは、ミエリアがまともな皇后の役割を果たしていないと遠回しに嫌味を言った。

しばらくの間、二人は一寸の隙もなく張り詰めた空気を漂わせていた。

誰か一人でも瞬きを間違えれば勝負に負けるかのように、一歩も引く気はないようだった。


遠くから見守りながら適当な時を待っていては、望夫石(石像)にでもなってしまいそうだった。

これ以上我慢できなくなったルセテリは、ロアンと手を繋いでいるジアのもう片方の手を握り、ズカズカとその前へと歩み出た。


「ジア皇女殿下がお見えになりました」


今まで存在感もなくミエリアの後ろで口を閉ざしていた侍女長が口を開き、ジアが来たことを知らせた。

そのおかげで、あまり気乗りしない表情ではあったが、メディアは一歩後ろに下がるしかなかった。

ドレスの裾を掴んで腰をかがめ、ジアに挨拶をする間も、彼女は頭を高く上げたままだった。


「申し訳ありません、皇后陛下。陛下が他の貴婦人方とご歓談されているとは存じませんでした」


ルセテリはしらばっくれて、華やかにミエリアに向かって微笑みながら近づいた。

優雅な姿勢でドレスの裾をそっと掴み、膝を曲げて挨拶をするその姿は、メディアが揚げ足を取れないほど完璧なものだった。


「いいのよ。ただ通りすがりにお互い挨拶を交わしていただけだから。娘とのティータイムの邪魔にはならないわ」


公式的な退出命令(帰れという合図)だった。

ミエリアの言葉の意味を理解したメディアは、赤く塗られた唇が青ざめるほど強く噛み締めた。

これ以上言い張る口実がない以上、今は引き下がるべき時だと悟ったのだ。


「ほほ、それでは私たちはこれにて失礼いたします。陛下はどうか皇女様と水入らずのお時間をお過ごしくださいませ」


口では笑っていたが、目は全く笑っていないメディアは、来た時と同じようにぞろぞろと貴族の夫人たちを引き連れて騒がしく退場していった。

ティーカップを持ち上げてお茶を一口飲み、一息ついたようにミエリアは、メディアたちが遠く消えて見えなくなるまで目を離さなかった。

もしかして彼女たちが気を変えて再び戻ってきて、邪魔でもするのではないかと懸念したためだ。


「ご多忙のようですね、皇后陛下」


ルセテリがちらりとミエリアの後ろで口を固く結んで立っている侍女長を見つめながら口火を切った。


「侍女長、侍女長は下がって自分の仕事をしてください」

「はい、陛下」


年配の侍女長はルセテリの頭の先からつま先まで素早く見極めると、その存在感の通り静かに挨拶をしてそそくさと消え去った。


「お見苦しいところをお見せしました」

「悪くなかったわよ」

「これまではただ我慢していれば大丈夫だろうと思って黙っていましたが、どう考えても教育には良くないでしょう?」


ミエリアは誰かに聞かれていないかと、静かにルセテリに囁いた。


「少なくともジアにだけは、情けない姿よりも堂々と立ち向かう姿を見せたいですから」


ああ、だから人々がしきりに皇帝と皇后が変わったと噂していたのだな。


「特にあのアウレリア公爵家の人たちは本当に、嫁いびりをする小姑や義父母でもないのに、顔を合わせるたびに後頭部をぶん殴ってやりたくなりますわ」


おっと、皇后陛下が口にするにはいささか上品ではない言葉だが?


トレイに置かれたクラフティを一口で放り込みながら、ルセテリが周りをキョロキョロと見回した。


『聞いている人は誰もいないよ。ロアン以外はね』


お茶の代わりにミルクを飲んでいたジアは、すでに周辺の探索を終えていた。


『家族揃って性根が腐り切ってる』

「ぷっ」

「ぷはっ!」


ジアの念話に、ルセテリとミエリアは同時に吹き出した。

性根が腐り切ってるだなんて……あの三人にはその言葉すらもったいないくらいだ。


「その通りです。自分たちなりに頭をひねっているようですが、人が何も言わないでいるからって馬鹿だと勘違いしているんです。あの人たちがこの席を狙っていることなんて、帝都の乞食でさえ知っている事実なのに。思い通りにならないからって私に喧嘩を売ってきていることくらい、分からないわけないでしょう」


サクッ。

一口かじったお菓子は、香ばしいバターの風味が口いっぱいに広がり、ミルクを含んだお茶の香りと相まって見事なハーモニーを奏でた。

お茶を一口、お菓子を一口。

無限ループのジレンマだった。


「だからあんなに皇宮がまるで自分たちのものみたいに振る舞い歩いていたの?」

「帝国貴族の半分以上がアウレリア公爵の味方なので仕方ありません。私たちも何か言いたいところですが……」


ジアの前だからか、ミエリアは言葉を濁している様子だった。

言葉を言い終わる前に、ミエリアはそっとジアの顔色をうかがった。


『私がママの息子として生まれていればよかったのに』


ミルクの入ったグラスをテーブルの上に置いたジアの目に、大粒の涙が浮かんだ。

一瞬慌てたルセテリとミエリアは、大急ぎでジアにハンカチとお菓子(?)を渡しながらなだめ始めた。


『どこの馬鹿がそんな余計なことを吹き込んだんだ!』

「違うわ、ママはジアが娘でとっても幸せよ。そんなことで泣かないで、私の娘」


ジアの涙を前に、二人はオロオロするばかりだった。


「アウレリア公息が皇女様にそう言ったんです」


不意にロアンが口を挟み、ジェレミアの悪行を言いつけた。

なぜ余計なことを言うのかと、ジアがロアンを振り返ってギロッと睨みつけた。

そんなジアの視線をぷいと顔を背けてさりげなく避けながら、ロアンの一度開いた口は閉じることなく続いた。


「帝国第一継承者であられる皇女様に向かって出来損ないだなんて。正直、今回皇宮で暴れ回って足を折ったと聞いて、私は胸がすっとしましたよ」


ロアンの止まることを知らない暴走に、ジアは駆け寄ってその口を針で縫い合わせてしまいたかった。

ママには知らせずに隠しておきたかったのに。

案の定、ロアンの言いつけにミエリアの目はどんどん見開かれていった。


ああ、終わった……。


ジアはズキズキと痛む額の片隅に手を当てながら、生まれて初めて偏頭痛というものを知った。

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