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第17話 素朴な郷土菓子の盛り合わせ

何の収穫も得られないまま、アウレリア公爵は公爵邸へと戻らなければならなかった。

馬車から降りるやいなや、彼は出迎えた執事長の顔に向かって、皇宮で受け取った請求書の束を容赦なく投げつけ、八つ当たりをした。

床に散らばった書類を拾うため、年老いた執事長は痛む腰を押えながら屈むしかなかった。


「いくらなんでも公爵家の体面というものがある! これ、今月までに入金しなければ差し押さえると言っているから、まずはこれから処理しろ!」


日常茶飯事の延長であるかのように、執事長は嫌な顔一つせず、散らばった書類を集めた。


「どうしたのですか、あなた」


夜遅く帰宅した公爵夫人が、あくびをしながら部屋着姿で階段を降りてきていた。


「ジェレミアの奴! いい加減、問題を起こして回るのはやめろと言え!」


首に青筋まで立てた公爵が、鼻息を荒くして怒鳴りつけた。


「ジェレミがどうしたというのです?」


公爵の口から息子の名前が出るやいなや、公爵夫人は顔をしかめた。


「どうしたじゃない! 昨日、皇女の部屋で暴れ回ったとかで、皇帝が私に何を突きつけてきたか分かるか?」

「そんなこと、私が知るわけないでしょう? それに暴れ回っただなんて! おとなしいあの子がそんなことするはずありません」


半殺しにでもしそうな勢いで怒り狂う公爵の前に立ち塞がり、公爵夫人の声が金切り声に変わった。

自分の息子は絶対にそんなことをするはずがないと、きっぱりと庇う彼女の前に、公爵は請求書を突き出した。


「じゃあ、これはどう説明するつもりだ!」


公爵から請求書を受け取った公爵夫人は、最後に書かれた金額を見て目を丸くした。


「これをジェレミアが全部壊したですって?? まさか! あり得ませんわ! でなくても馬の蹄に蹴られて足まで折れた子に、何てことを!」

「私もジェレミア一人で全部やったはずがないとシラを切ったが、侍従長が直接皇女の部屋を見せてきたんだ。今、これがどれほど深刻な事態か分かっているのか?」


公爵の怒声が屋敷中に響き渡った。

これで、公爵邸のすべての使用人が、ジェレミア公息が皇宮で放蕩を働き、途方もない賠償金を支払うことになった事実を知ることになるだろう。

なかなか興奮を抑えきれない公爵の前で、公爵夫人は神経質に唇を噛みちぎった。


「いくらなんでも、まだ幼い子供がやった幼稚なイタズラに、四億七千万ベラだなんて。法外な金額じゃありませんか? それに、そういうことは皇帝に文句を言うべきであって、罪のないジェレミを捕まえてどうしようというのです?」

「私が皇帝に文句を言わなかったと思うか? 当然、文句を言ってやったさ。子供が壊したところで、たかが知れているだろうと」

「それで?」

「はっ、まったく。皇女のために特別に気を配った部屋なのに、ジェレミアが台無しにしたのは不届き千万だと言って、全額賠償しろと言い出しおったわ! 奴らしくもなく!」


公爵は自分の前を何度も塞ぐ公爵夫人に苛立ち、神経質に彼女の腕を乱暴に掴むと、脇へと引きずり出した。


「もっと強く出るべきでしたわ! 何の罪もないジェレミアに怒ってどうするんですか!」

「あれ以上強く出たら! 私の体面はどうなるというのだ! 最近、公爵家の財政が苦しいのか、その程度の賠償もできないのかと問い詰めてきおって。逆に払えないと言ったら、全額賠償しろと金額がさらに跳ね上がったんだ。ともかく、これも全部ジェレミアの奴のせいだ。あいつのおかげで、今回どれだけの損失を出したと思っている?」

「それがどうしてジェレミアのせいだと言うんです? 出来損ないのあの皇女のせいでしょう」


公爵が強く腕を引いたせいで、外れそうなほど腕が痛んだ公爵夫人は、ズキズキと痛む腕をさすりながら公爵を睨みつけた。

徹底的に計算された政略結婚であっただけに、夫に対する愛情はこれっぽっちもなく、このような扱いには慣れていた。

しかし、ジェレミアに関することだけは、そのまま見過ごすことはできなかった。


「ああ、よく言った。今、その出来損ないの皇女のせいで、皇帝がどんな状態か分かるか? 皇女の話を出そうとするだけで、皇帝の目の色が変わるんだ!」


さしもの使用人たちの目が至る所にある場所で、公爵夫人に手を上げるわけにいかなかったアウレリア公爵は、廊下を飾っていた花瓶の一つを手に取ると、力いっぱい床に叩きつけた。

幸い花瓶が割れても公爵夫人にまで破片は飛ばなかったが、代わりに中に入っていた水がこぼれ、夫人の部屋着の裾を濡らした。


「ジェレミアの奴に伝えろ! 当分の間、皇宮には一歩も近づくなと。今後、一度でもこんなことがあれば、無事なもう片方の足も、この私が直々に折ってやる。しばらくは家で謹慎させ、一歩も外に出すな!」


公爵は容易に興奮を鎮めることができず、烈火のごとく怒り狂いながら公爵夫人を責め立てた。

確実な物証を前に、皇帝の前でぐうの音も出ずに戻らざるを得なかったことが悔しかった公爵は、公爵夫人に向かって八つ当たりをしたのだった。


(今に見ておれ)


すでに血圧が上がるだけ上がり、顔を真っ赤にしてなかなか怒りを抑えきれない公爵は、ギリギリと歯ぎしりをしながら次を期す誓いを刻んだ。


いつものように午後四時のティータイムは、ルセテリが皇宮に滞在し始めてから一番好きな時間の一つだった。

その日その日に出されるお茶の種類に合わせて出てくるお菓子は、どれも華やかな見た目ではなかったが、お茶との相性が抜群で、毎日この時間を待ちわびるほどだった。

今日は特別に、ミエリアと一緒に皇宮の庭園で野外ティータイムを持つ約束をした日だったので、ルセテリとジアの気分はこれ以上ないほどの期待感でいっぱいであった。


やけに楽しそうなルセテリの手を引くジアは、ルンルンと足取りも軽くピョンピョン飛び跳ねる彼をじっと見つめた。


『ロッ様、そんなに嬉しいの?』

『ん? 何が?』

『私のママのお菓子が、そんなに好きなのって聞いてるの。』


いや、そんなの当然だろう! あんなお菓子、どこに行っても簡単に食べられるものじゃないんだぞ!


ルセテリはジアに向かってそう叫びたかったが、ロアンがそばにいる上に、北宮でもなく本宮の野外であったため、ぐっとこらえなければならなかった。


『ミエリアがくれるおやつはいつも素晴らしいからな。今日もどんな新しいお菓子が出てくるか、いつも楽しみなんだ。』

『ロッ様って、ここにママのお菓子があるからいるんでしょ?』


ジアの質問は、鋭くルセテリの急所を深く突き刺してきた。


『いや、美味しいじゃないか。マジで。』

『誰が美味しくないって言った?』


なぜか知らず知らずのうちに、ジアが少しすねているような嫌な予感がした。


「今日は天気が良くて、外でお茶をするのにぴったりですね! ジア皇女様と一緒だから、お日様も機嫌が良いみたいです」


ロアンの言葉に、すねていたジアの顔にパッと明るい色が戻った。

ルセテリは、ロアンと自分のこの明確な違いは一体何なのかについて、じっくりと考え込んだ。


「皇女様も嬉しいですよね? 久しぶりに皇后陛下とご一緒される席ですから」


『ロッ様は、お菓子ばっかり好きすぎじゃない?』


そっとルセテリとつないでいた手を離したジアは、ロアンの手を握った。

ここまであからさまに態度に出しているのに、この空気の読めないドラゴンは、何が問題なのか全く見当もついていないようだった。


はぁ、万物の根源であるドラゴンだとか言ってたのに。

ジアは知らず知らずのうちに、小さなため息をついた。


明るい日差しを浴びながらもう少し歩くと、ミエリアと約束していた庭園の噴水がある中央に行き着いた。

ママを見つけるやいなや、嬉しそうに手を振って駆け寄ろうとしたジアは、とても見慣れた光景を目撃し、ピタリと足を止めた。


噴水の近くにある東屋に座ってジアを待っているミエリアの周りを、一団の貴族夫人たちが取り囲んでいた。

特に、神経質そうにガリガリに痩せた体に、帝国で最新の流行だというラフカラーをこれでもかと華やかに高く上げ、大きく膨らませたドレスに、ジャラジャラと大きな宝石で着飾った女が、ミエリアと真正面から向かい合って立っているのが目障りだった。

装飾を極力控えた質素なドレス姿のミエリアとは、かなり対照的な光景であった。


これってまさに、ジェレミア公息が自分をいじめに来るたびに見た光景とそっくりなんだけど?


「このような粗末なものを皇宮のテーブルに上げることをお許しになるとは、まだ皇后陛下は皇室の品格をご存知ないようですね」


金の装飾が施された華やかな扇子を折りたたみ、口元に当てる女の口調は、ひどく無礼なものだった。

女が指差したティーフードはすべてミエリアの手作りだという事実を、彼女たちが知らないはずがなかった。


クリームとチェリーを詰めて焼いたクラフティ、リンゴと梨を丸ごとパイ生地で包んで焼いたブルデロ、小麦粉と卵で生地を作って揚げたビューニュ、ムースリーヌクリームを詰めたパイの上に様々なベリーを乗せたベリーパイ……どれもルセテリとジアが大好きなお菓子でいっぱいに準備されていた。


「こんな、どこにでもありそうな田舎くさいお菓子を皇宮の食卓に上げるなんて。皇后宮の料理長は、田舎の百姓でも連れてきたのかしら?」


女の皮肉めいた口調にも、ミエリアは静かにティーカップを手に取ってお茶を飲むだけで、何の反応も示さなかった。

むしろ苛立ってきたのは女の方だった。


「遠く東の果てからいらした小さな公国出身の公女様だからでしょうか、今の帝都の流行をよくご存知ないようですね。いかがです、私たちが少し教えて差し上げましょうか、皇后陛下?」


目を細め、ミエリアを見下すような女の言葉に、後ろに群がっていた貴婦人たちがクスクスと笑う声があちこちから聞こえてきた。

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