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第132話 騒ぎの見物に最高のおやつはポテトチップスです

「よろしい。では、対面尋問をここで直接やってみられますか?」


焦燥感を見せる伯爵とは対照的に、ナビルの態度には終始余裕が溢れ返っていた。


まさか帝国軍の口から、泥棒をしようとして捕まったなどと言うはずがないと、伯爵は固く信じているようだった。

ナビルはそんな伯爵の考えを、一歩先回りして読んでいたのだ。



もちろんその背景には、会談がある前、つまり昨日の出来事が功を奏したからではあるが。


どんな方法を用いても、この上なく図々しく耐え忍び口をギュッと閉ざしていた帝国軍たちが、ルセテリの姿を見るや否や、数珠繋ぎのようにペラペラと口を開き始めた。

普通、自白剤と言えば、焦点が定まらずまるで誰かに操られている操り人形のような状態を想像するだろうが、ルセテリの自白剤は違った。

明らかに意識ははっきりしているように見えたし、目はパッチリと見開かれていた。

もちろん、アークやナビルはルセテリが自白剤を飲ませたと思っていたはずだが、実態はルセテリが魔力で帝国軍の脳内の記憶をかき回し、嘘をつけないようにした状態だった。

だから口を開くたびにこぼれ落ちる言葉の中には、帝国軍とは信じがたい事実が山ほどあった。

小さくは上官の悪口から大きくは帝国の最高機密事項まで、ナビルやアークが特別に脅すまでもなくスラスラと自白する羽目になったので、むしろ驚かされたというか……。

口を開く帝国軍の顔にも驚く様子はなく、ただただ平穏そのものであることが、二人にとっては最も不思議だった。

果たして自分が何を口走っているのか分かっていたのだろうか。

ルセテリが伝えたところによれば、自白した記憶すら残っていないだろうとのことだった。

それはそれでナビルは恐ろしかった。


自分が取った行動を自分自身が覚えていないとしたら、それこそ恐怖そのものじゃないか。

想像しただけでも身の毛がよだつ。



「結構だ! 我が帝国軍がそのような恥知らずな真似をするはずがなかろう!」


そんな事実を知る由もない伯爵は、自信満々に拳で胸を叩きながら大声でドンドンと叫んだ。

伯爵の頭の中は200億ベラという途方もない巨額の数字でいっぱいで、他のことに気を回す余裕がなかった。

この事実を知った日に公爵から飛んでくるであろう雷が、生々しく耳元を離れなかったからだ。

無理やり言い張ってでも、何としてでも無かったことにすることが何よりも重要だった。


むしろ横でその様子を見守っている子爵の態度は、そわそわと落ち着かず焦っている様子が歴然としていた。

万が一にも誰か一人でも口を滑らせた日には、全員揃って地獄行きの馬車を予約したも同然だった。

その事実を、一生涯顔色ばかりをうかがって生きてきた子爵は理解できた。

特に公国側が動揺することなく静まり返っていることが、子爵の不安をさらに煽っていた。


「伯爵様、本当に大丈夫でしょうか?」


公国側の顔色をうかがいながら、伯爵の耳に不安を囁いた子爵を、ルロア伯爵は目をひん剥いて恐ろしく睨みつけた。

伯爵の立場からすれば、なんて不敬な言葉かと思ったことだろう。


「誇り高き我が帝国軍がそのような真似をするはずがなかろう!」


伯爵が子爵に向かって大声を張り上げたが、果たして……?

断言するが、伯爵の思惑通りに事が運ぶことはないだろう。


「それで、どうされるおつもりですか?」


ルセテリは、わざと声に苛立ちを一滴混ぜたナビルが伯爵を刺激しているという事実に気づいた。

傲慢そうに腕を組んだ姿勢で首を横に傾け、斜に構えて椅子に座った姿勢が、まさに伯爵の怒りを買うのに最適化されていた。


「呼んで来い! 呼んできて聞けばいいだろうが!」


ナビルの挑発にカッとなって乗せられた伯爵が、拳で机を叩きつけながら大声で喚き散らした。


このすべての状況を見守っているルセテリは、まるで面白い喜劇を一本鑑賞しているような気分だった。

それに加え、


パリッ。


ポップコーンではなかったが、ジアが差し出した薄切りのジャガイモを揚げたフライドポテトをルセテリが受け取り、モグモグと食べる楽しさまで加わって、会談場はまるで劇場も同然だった。

それなりにサクサクしていて最高に美味しかった。

さらには、あのガラムマサラという代物を振りかけたフライドポテトは、ともすれば脂っこくなりがちな揚げ物に良いアクセントを与え、美味しくピリッとするのが絶品だった。


[でもこれ、今食べても大丈夫なんですか?]

[面白い見世物におやつは欠かせないだろ]

[それはそうですけど……]


ジアは怒り狂って暴れるルロア伯爵、そわそわと顔色ばかりうかがっている子爵、このすべてが退屈そうに見えるジェレミアを見つめながら心配そうだった。


[あいつらには俺たち見えないから]


とっくに準備は済ませてある。

今彼らの視界からは、ルセテリとジアの姿は見えもしない。

あらかじめ魔法で認識阻害をかけておいたので、一定範囲内では二人の姿は見えなかった。

うっかりジアに言うのを忘れていたルセテリは、今更ながらジアに教えた。


[それを今言うんですか?]

[コホン、まあ……今からでも知ったんだから問題ないだろ?]

[はあ?]


呆れた顔になったジアがルセテリをじっと睨みつけた。

バツが悪くなったルセテリはフライドポテトを一口かじり、そっと視線を逸らそうとしたが、完全に自由になることはできなかった。


[……まあいいです、とりあえずそういうことにしておきましょう]


うーん……これ後でめちゃくちゃに文句言われそうだな?

突然喉の奥がイガイガしてきた。



ガチャッ。


会談場の重厚な扉が開き、捕縄で縛られた帝国軍たちが数珠繋ぎにされたキャンディーのように引きずられて入ってきた。

しかし状況に反して、帝国軍たちの表情はあまりにも平和だった。

これを見ろ、罪人でもない帝国軍に対する扱いがこれでいいのかと指を差して怒鳴りつけようとした伯爵の指が、瞬く間に行き場を失い空を彷徨った。

開いた口からは怒声の代わりに、金魚のようにパクパクと口を開けたり閉めたりするだけで言葉が続かなかった。

さらには帝国軍にいた時よりも垢まみれで薄汚れていた顔に、ツヤまで加わっていた。


「そ、その……こ、このような酷い扱い、許されるはずがなかろう!」


このような扱い?


子爵が何かにしがみついて難癖をつけようとする強引さに呆れたナビルは、首を傾げた。

許されるも何も、公国の牢獄に閉じ込められていた帝国軍たちが、公国から出される牢獄食に涙を流していたことをナビルははっきりと覚えていた。


牢獄で食べる囚人食だというのに、美味いと言ってガツガツとご飯をかき込んでいた帝国軍の姿は忘れられなかった。


大層なものでもなかった。

簡単に手に入るジャガイモを入れたカレーに、冷めたナン数切れ。

それすらも美味しいと皿までペロペロと舐め回す兵士たちまでいたのだから、言うまでもない。

おまけに不衛生だと言って薄汚れた彼らを連れて行き、洗う機会まで与えてやったのだから、顔色が良く見えるのは当然のことではないだろうか?


[あの程度なら、あえて精神干渉魔法を使わなくてもよかったんじゃないですか?]


ピスタチャ農場で捕まったばかりの帝国軍の姿を思い出したジアは、予想以上に状態が良すぎる帝国軍の姿を見て呆れたようだ。


[それは、分からないだろ]

[私ならまた帝国に戻れって言われたら嫌だと思いますけど?]


三食温かいご飯に、快適な環境。

それに加えて訓練する必要もなく……。

帝国に再び戻れと言われても絶対に帰りたくないと思うんだけど?


[人間だからな。それは分からないものだ]


人間という生き物がどれほど狡猾な動物かは、卵からかえった瞬間からソラレティに聞かされてよく知っていた。

もちろん全員がそうではないということはルセテリもよく知っていたが、すべての生き物が皆善良なわけではないというのは世の理だった。


もちろんあそこで上手くそそのかして、公国で面倒を見てやると言えばペラペラと喋る人間は何人かいるだろうが、こういう言葉があるだろ。

一度裏切った奴が二度裏切らないという保証はないじゃないか?

こういうことには賭けをしないものだと、ソラレティの賢明な教えがあった。


「その言葉、どういう意味ですか?」


静かに状況を見守るだけだったカイランが、さりげなくルセテリに近づいて囁いた。

まだ世間の垢にまみれていないカイランの純粋そうな瞳を、ルセテリはまじまじと見下ろした。


[お前がまだ世の中を知らないってことさ]


他の人に気づかれないようにルセテリがカイランのすねをコツコツと蹴っている時だった。


「今、帝国を見くびっているのか! 今すぐ彼らを解放せずに何をしているのだ!」


伯爵が烈火の如く発作を起こしたように怒り狂い始めた。

首に青筋まで立てて四方八方に指を差しているのを見ると、相当頭にきているようだが……。


「他国に軍人の身分で勝手に国境を越えたのですから、当然の処置ではないでしょうか。そちらではなら、公国騎士団が無断で国境を越えてもお客様扱いしてくださるのですか?」


今ルロア伯爵が腹を立てている理由は簡単だった。

帝国軍の状態が伯爵の予想とは異なり、あまりにも血色が良さそうに見えたからだとナビルは考えた。


最初に帝国軍を閉じ込めておいた牢獄を守っている看守たちから話を聞かされた時だけでも、冗談かと思った。

今の帝国軍の状態を見ていると、あえてルセテリに自白剤まで頼む必要はなかったのではないかと思えてくるほどだった。


「当然だろう、同じ騎士でも皆が同じ騎士ではなかろう!」


ブチッ。


伯爵の戯言に、ナビルの忍耐の糸が切れる音が聞こえてきた。


「確かに、公国の騎士のチンピラごときと、畏れ多くも帝国軍を同じ立場に置いて比較しようとするなんて。話になると思うか?」


ジェレミアの決定的な一言は、会談場の中にいた公国側の雰囲気を瞬く間に絶対零度のように冷たく凍りつかせた。


「ほう、帝国の公子様はそのようにお考えだったのですね」


ヒィッ……ナビルが、キレた。

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