第42話 ソネット王とポエット王子
♪ソネット(8歳の頃)♪
晴れたある日、僕は弟を探していた。
「ポエット! バックギャモンを買ってもらったんだ! 一緒にあそぼ! チェッカーゲームもあるよ!」
リビングルームや個室を探し回るが、なかなか見つからない。返事もしないなんて、困ったやつだ。
「ポエット!」
「お静かに」
マサヒデは人差し指を口元に当てた。そして、その人差し指はソファーに向けられた。
弟は、遊び疲れて眠っていた。
「このまま、眠らせてあげましょう。ほら、天使のような寝顔です」
まあ、紅茶タイムの後でも遊べるからいいか。
「爺や。子守唄を歌ってやってよ。うさぎの子守唄!」
「いいですよ」と執事は微笑んだ。
「♪野うさぎ母さん穴掘った。わんぱく赤ちゃん寝かすため。野うさぎ父さんワラもった。わんぱく赤ちゃん眠ってた」
♪ポエット(現在)♪
階段を登り終えると王座の方に視線を移す。大方の兵士は、アレグロによって人形にされている。
当のアレグロはうつ伏せで倒れ、血を流している。痙攣すらしない。死んでいるのかもしれない。
どうやら、勝負はお兄ちゃんの勝利で終わったようだ。
歩みを進めると、玉座前のお兄ちゃんもこちらに気付いた。
ボロボロじゃないか! よっぽど、激しいバトルをしたんだ。 いくら、ガーネットプリンスと言えども、もしかしたら、僕の魔法力でも勝てるかもしれない。
『やっちまえ! 次男坊! 次の時代を切り開け!』
魔法チャットが煽ってくる。
戦いたくない。いやだ。
「ソネットお兄ちゃん」
「ぐ……が……ぎ……」
魔法で熱線を放つ。僕の肩をかすめる。痛い! 熱い!
「お兄ちゃん。元に戻って!」
「ポ……エット」
「そうだよ! 僕はお兄ちゃんと戦いたくない!」
「ぐぎー!」
熱線が右膝を直撃する。どうしよう。これ以上、歩けない。
何の歌を歌おう。どんな魔法がこもった歌を。
いや、魔法がこもった歌ではない方がいい。
「♪野うさぎ母さん穴掘った。わんぱく赤ちゃん寝かすため。野うさぎ父さんワラもった。わんぱく赤ちゃん眠ってた」
熱線が左膝を直撃する。僕はもう倒れるしかない。
「♪野うさぎ母さん穴掘った。わんぱく赤ちゃん寝かすため。野うさぎ父さんワラもった。わんぱく赤ちゃん眠ってた」
僕はここで死ぬんだね。でも、お兄ちゃんに殺されるなら、僕は本望かもしれない。
背中に熱線。これは、死んでも不思議ではない量だ。
さよなら、お兄ちゃん。目の前が真っ暗になった。
『泣いてる』
僕のことか。もういいよ。実況しなくても。
『ソネット様が泣いている! 頭を抱えて苦しんでおられる!』
なんだって。
『目つきが! 目つきが元に戻ったぞ! お優しい目つきに!』
『子守唄は効果があったのね!』
少しづつ意識が薄れていく。
『兵士が人形から元に戻ったぞ!』
『アレグロが絶命したのよ!』
『良かった! 死のプレリュード食らった人間も助かる!』
良かった。あとは、堤防さえどうにかなってくれれば。




