第34話 男ならば死して故郷に錦を飾れ
♪ポエット(現在)♪
王都への旅路の中、だぼだぼの服を着た男たちが僕たちを取り囲む。
「俺たち史上最強の賞金稼ぎチェケラ!」
リーダー格の男が、マイクを持ち、ボイスパーカッションを奏でる。
すると、他の連中がブレイクダンスを踊りながら少しずつ距離を詰めてくる。完全に取り囲まれた。
地面から、マンゴンドラの根が生え、こちらに襲いかかってくる。手足を取られる前に先制攻撃しないと。
グロウルが目配せしてくる。昨日と同じミスをするなという意味だろう。言われんでもわかっているさ。
重厚なチューバの音に合わせて、風の魔法を弾き語る。アダージョさんがスキャットで魔法を補強してくれる。
風が集まる。砂で少し目が痛い。やがて風は鋭い刃になって、360度全方位を切り裂いた。
敵は唖然とした顔をして、総崩れになった。
「命は取らないさ。少し眠っていてもらおう」
3人で子守歌を歌うと、敵全員眠りについた。
完璧なトリオセッション、息も合って完璧だ。三者三様のわだかまりが少し溶けたようだった。
♪遊撃隊長(現在)♪
前線の部隊がたった1人にあらかた壊滅させられたただと? 暗殺部隊も通過。バカなっ! せっかく、反乱軍への奇襲作戦に向けて訓練を積んでいたのに話が違うではないか!
「た、隊長。どうしましょう。逃げます?」
「ふざけるな! 男たるもの逃げる選択肢などあるものか!」
「ここまで、規格外の敵、みんな戦意喪失していますよお! こんなの男も女もないっ! 故郷の彼女と結婚したいんだあっ!」
サーベルを首に突きつける。
「ひいっ!」
「ここで殺されるか敵に殺されるか、好きな方を選べ!」
さらに一歩踏み込む。
「男ならば死して故郷に錦を飾らんか!」
「そうだ! 男こそ、亡国の危機に立ち向かわなくてどうする!」
副官も私に同調する。
「者ども! 男をあげるためにポエット王子の首を取れ! ここで逃げては男が廃るぞー!」
軍ラッパに剣がついている銃剣ならぬ銃ラッパを一同身構え、王子を待つ。
「きたぞー!」
「愛する祖国のために!」
遊園地の馬に乗った敵が突撃してくる。
銃ラッパから、火炎が吐き出され、敵に襲い掛かるが、敵はバリアを張り、身を守る。
くそっ。だが、いくらガードしても、やつの体内温度は相当高いはず。あと少しだっ!
その瞬間、部下の1人が軍服から、ウエディングドレス姿に変貌する。
「なんだあ!? その男らしくない服装はっ!」
そいつだけじゃなかった、副官も他の兵隊も私も次々とウエディングドレスにされていく。
体が、コルセットで締め付けられて思うように楽器が吹けない。
我々の男らしさを愚弄するというのかっ!
王子は悠々自適に我々の包囲網を突破していった。
我らの男の命がけの戦いを嘲笑うかのように。




