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第27話 食事とトイレとお風呂でラブコメタイム

♪アダージョ(現在)♪


「悪い。ちょっと買い物したいものがあるんだ。ちょっと、2人でここに並んどいてくれ」


 グロウルくんが、行列から離脱する。


 街についた僕たちは腹ごしらえのレストランの行列を並んでいた。響素との共鳴が良くなる栄養素が含まれているとやらとの評判で。一刻も早く王城に行きたいのは、やまやまだが、はらぺこで道半ば倒れてはいけない。


「ちょっと荷物多いから持ってくれる?」


「う、うん」


 ポエットくんが僕に変な三角でプラスチックのものを渡す。


「メガホン?」


「ああ、よくわかんないけど、カムカムメガホンって言うものらしい。行列を並び終わったら、ここに『グロウル』って名前を叫ぶと良いんだって」


 ふーん。変なの。


 風が吹く。ううう。体がちょっと冷えてきたな。


「ごめん。ポエットくん。私もちょっと離脱して良い? お花摘みを」


「ん? この辺、植物咲いてたっけ? 石畳の通路って感じで」


「おトイレのことだよ」


「あっ⋯⋯ごめん」


 恥ずかしそうにうつむいた。かわいい。


 なんだか、女の子ポジションで男の子のデリカシーのなさを注意しちゃったな。僕は、まだ、男だって性自認を持っているつもりなのになんだか変な気分。


 な、なんで、こんな会話でちょっとときめいちゃってるんだろ、僕。彼の照れた顔を見て、自尊心がくすぐられるなんて変態かもしれない。 恥ずかしい。


 体が緑色に光りだす。だ、だめだ。乙女心がチャージされたら、街中でエメラルドプリンセスに変身してしまう。ここは心を男に戻すんだ。そう、例えば、男らしい熱い胸板。グロウルくんみたいな。うっとり。


 余計、体が光り出す。ぎゃあ! こんなのこんなのおかしい。平常心だ。


 色即是空空即是色!


 お寺でちょっと教えてもらった般若心経で平常心を取り戻す。


 ポエットくんにもときめいてグロウルくんにもときめいて、まるで、二股女じゃないか!


 女子トイレが行列をなしていた。女としての生活って思っていたより大変かも。こういう観光地とかだと、確かにこういう光景見かけるけど、いざ、自分が並んでみると困る。こんなに気軽にトイレにいけない街だと、あんまり、たくさん、水とか飲めないな。


 内戦前なのにずいぶんのんびりしてる。まあ、前線から少し離れた田舎だからかな。なんか、深い意味はないのかもしれないが、嵐の前の静けさみたいで不気味かも。


 なんか、行列に竜族が多いな。いや、トイレだけでなく、街角も⋯⋯。確かに竜族にとっては気軽に遊びに行きやすい観光地とは聞いたことあるけど、ここまで竜族だらけだと思わなかった。うさぎ族より多いくらいじゃないか?


 知り合いとか会ったら嫌だな。なんて、自分の身分を説明しよう。女になったなんて、竜族にとっては恥だ。とてもじゃないが、言えたもんじゃない。馬鹿にされちゃう。


 なんて、悶々としているうちに、トイレの順番が回ってきた。入るか。


 あ、そうだ。よくわかんないけど、行列に並び終わったらメガホンに名前呼ぶんだっけ? 何が起きるんだろう。


「グロウルくん!」


 あ、後ろのお姉さんがびくっとしちゃった。大声出しすぎたかも。


「きゃあっ! ここは女子トイレですよ!」


「す、すまねぇ!」


 気がついたら、グロウルくんが目の前に。


「そのメガホン、レストランの行列が並び終わったら、呼んでくれって頼んだんだ! トイレの列じゃないっ!」


「あ⋯⋯ごめん」


 名前を呼べば人が来る道具なんだ。使い方もわからず適当なことしてしまったな。なにはともあれ、そこまでの大騒ぎにならず事なきを得た。


 レストランでは、地元の野菜にふんだんの香辛料を使ったエスニック料理。うさぎ族の街なので、お肉なんてものはなく、お豆さんでタンパク質を補う。


「肉⋯⋯肉……」


 グロウルくんがうなだれる。さっきの慌て具合も合わせてかわいいなあ。


 ……体が光るのは阻止した。母性本能なんてくすぐられないんだ! 絶対に!


「はむはむもぐもぐ」


 ポエットくんの必死の食べっぷりかわいいな。ぎゃあ。体が光り始めた。ストップストップ。


 平常心を保たないといけない。僕は男なんだから。


「ごちそうさまでしたー」


「ごはんつぶついてるよ」


 だらしない男子2人の口持ちをハンカチでぬぐう。ついつい、世話を焼いてしまう。手を届かせるために背伸びしては、自分がスカートを履いていることを意識してしまう。完全にお母さんじゃん、僕。


「温泉入っていこうぜ!」


「ナイスアイデア!」


 2人は意気投合する。


「もう! 勝手なんだから! まあ、夜道を旅すると危ないから、ここらで休養を取ったほうがいいかもね」


 香水をデパートで買い込んだとはいえ、お風呂とか何日も入らないまま、お城に行くのもね。ここらで汗を取っといた方がいいのかもしれない。


 あ、そうだ。女湯だ。ぼ、僕、男なのに女性の裸を見てしまうじゃないか。


 そんなのいけない。でも、こんな日常のことで恥ずかしがってたら、これから生活送れないだろう。勇気出すか。


 3人で大きめの温泉施設に向かう。観光客や街の人が集まるからかなかなかの巨大施設だ。


 温泉で水着を着て混浴の文化圏と裸で男女に分かれる文化圏の2種類ある。ここはどうやら、後者のようだった。


 ど、どうしよう。すけべそうな目線とかしてたら⋯⋯。変態だーって、追い出されちゃう。無理無理!


 とか考えてるうちに、思い切って、入口でお金払って、更衣室に入って、目をつむりながらあれよあれよと脱いでいく。タオルで隠しながら、湯船に向かう。


 あれ? いざ、入ってみると思ってたのとちょっと違うかも。


 思っていたほど、自分が他の女性を見る視線はいやらしいものではなさそうだ。その代わり、自分の裸を見られるのがとてつもなく恥ずかしい。


 僕の胸とかくびれの形って、普通の女性と変わらないよね? 他の人をジロジロ見て見比べるわけにはいかないし。わーん。やだー。


 えーい。さっさと体をゴシゴシ洗うことにした。女の洗髪のイロハがよくわかっていないので、洗髪魔法を使って自動的に洗ってもらうことにした。


 一通り垢を取った僕は、湯船に沈む。いい湯だな。落ち着くなあ。景色の森を見下ろす。


 もしかしたら、戦火が広がったらここも火の海になるのかもしれないんだよね。恐ろしい妄想をしてしまった自分にたじろぐ。


「あのー、すいませーん。横、座っていいですか? 景色見たくて」


「はいいい」


 女性の声がしたので、思わず、内股になって縮んでしまう。


「はっはっは。女風呂に侵入した男じゃないんだから、そんな慌てなくても」


 男なんですう。


 と、相手の顔をちらっと見て驚いてしまう。


「カノン!?」


「へ? なんであたしの名前知ってるの? 初対面だと思うけど。君、竜族だよね?」


 顔を上げるとよく見知った竜族の女,アレグロの同級生の女子とこんなところで遭遇するだなんて!


 記憶の糸をたどってみる。

 

 アレグロは、小学生の頃、よくカノンと一緒に遊んでいた。二人でお絵かきを楽しんでいた。そんなある日、やんちゃな男の子がカノンのスカートをめくる。そのとき、内に秘めたる激情、嫉妬の感情をアレグロは激しく燃やしていた。


 その頃、まだ、僕ことアダージョという人格は影も形もない。だから、細かい部分までは記憶を引き出せないが、おそらく、状況から察するに、アレグロは彼女のことが、好きだったに違いない。だから嫉妬を⋯⋯。


 きっと、若い頃官僚として出世したがっていたのも、彼女を故郷に迎えに来たかったから、かな? 推測だけど。


「あ、あはは。アレグロって人伝で一度会ったことある」


 その言葉を出して「しまった!」と、思った。アレグロは脱獄囚だ。逆にこんな言い訳、変に思われる。


 だけど、それを知ってか知らずか彼女はそっけなく答えた。


「そ。あいつか。何十年会ってないんだろ。てっきり、嫌われてると思ってたなあ、あたし」


「へ?」


 思わぬ返事。自分の記憶の引き出しにある情報と目の前の人物が話す情報が違う。どういうことだ?


 記憶が錯綜しているのか。間違った情報を真実だと自分で思い込んでいるのか。謎であった。

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うさ耳王子といぬ王子がロックオン!本当は男の僕が二股悪女ムーブしないとみんなの命を救えないなんて
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