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第24話 バベルの会

♪アレグロ(現在)♪


「にいちゃん。仕事で面白いか?」


「え、ええまあ。やりがいあります」


 日雇いのごみ収集の仕事を終えた俺は先輩に声をかけられる。こうして、にいちゃんと呼ばれるのも、人格分裂の影響で若く見えるからだろう。


「はっはっはっ。気を使わなくていいよ。職業に貴賎はないが、それでも、華やかな仕事に比べると地味だから。あんた、所作から、金持ちの世界で生きてきたけど、何か訳あってここにいる。違うかね?」


「ええ、まあ」


 結構、人となりを見られているんだな。そりゃそうか。


「なあ。言いたくなかったら、無理強いはしないが、金持ちの連中の世界で、今何が起きているんだ」


 ドスの効いた低い声でささやかれる。ボロボロのフルートを一本、さらに綺麗なクラリネットを比較するように取り出す。


「貧困層はボロボロの楽器を壊れるまで使い倒す。金持ちは、新品同様のいいやつでも遠慮なく粗大ゴミにする。まあ、これ自体はいつの時代もよくあることだ。昔は古語の本がこの位置付けだった。資産の格差の象徴が、声楽から楽器に変わっただけだ。今はマイノリティに救いの手を差し伸べてチャンスを与えている楽器魔法もそのうち重税が課され、やがて、既得権益まみれていく。ただ、それだけのことだ」


「は、はあ」


 先輩は深いため息をした後続けた。


「それ自体は普通のゴミだ。だが、こいつはどうだ?」


 無造作に置かれた。仮面、マント、バッヂ。ヒーローコスプレグッズだろうか。


「全部、俺たちの世代が若かった頃のヒーロー特撮グッズだ。今の若い子が興味を持つようなものではない。そんなものが、高級な楽器をゴミとして出す家から次々と」


 先輩は、不思議そうな顔をしているので疑問に答えてあげることにした。


「ああ、それなら、バベルの会ですよ」


「バベルの会?」


「若い頃の栄光が忘れられずヒーローごっこをしている金持ちサークルですよ。年配の人たちが、童心に帰ったかのように内輪でやってるかな。特定の世代にしか通じない独自用語が多いから、俺たち、下の世代の人間は輪に入れなくて」


「聞いたことのない組織の名前だな。俺たちの時代には。バベルマンというヒーローなんて聞いたことがない」


 訝しげな顔をするので再び答えることにした。


「組織の名前は、バベルの塔といって、異世界の宗教の逸話から、来ているんですよね。何でも名前がかっこいいとかで」

 

「どんな逸話かね」


「えっと、確か…そう、太古の昔、人類は、自らの力を誇示し、神のような存在に近づこうとした。そのために、天に届くほどの高い塔を建てようとした。だけど、神は人類に天罰を与え、話す言葉がばらばらになり、人々は世界各地へと散らばっていった」


「なぜ、そんな神話を?」


「彼らからしてみれば、自分たちは、神のような存在に近づける、異世界古代ヘブライ人のような失敗はしない、新しい秩序の支配者になるとかで。まあ、冗談だと思うんですけどね」


「ははは。そいつは、どちらかというと、ヒーローものに出てくる悪の組織側じゃないか。まるで、秘密結社だよ」


「ヒーローごっこのために防衛軍のようなものを組織したら、それは、きっと、悪の秘密結社と表裏一体かもしれないですね。まあ、いずれにせよ、ごっこ遊びですよ」


 呆れたように話す俺に対して先輩はドスの聞いた声で話す。


「カルトって意外とそんなところから自然発生するもんだよ。政治団体になったり、宗教法人になったり」


 変なことを言う先輩だ。僕は高笑いする。


「まさか! それじゃあ、まるで陰謀論ですよ。まるで世界征服を企んでいるかのような⋯⋯!」


 先輩は笑わなかった。


 バベルの会。魔法省で、時々、怪しい会合が開かれているのを見かけたが、まさか⋯⋯。いや、そんなはずは。


「どうした? 荷物まとめたりして。明日も仕事くるんだろ?」


「調べたいことができました。今日までのバイト代だけもらいますね」

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うさ耳王子といぬ王子がロックオン!本当は男の僕が二股悪女ムーブしないとみんなの命を救えないなんて
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