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「さてと、子供たちが忍び込んで以降、近隣で不可解なことが起きている、ということでお間違えないですか?」
懐中電灯は置いたまま、狸塚は野中を見つめた。しゃんと伸びた背筋はこの廃病院には似つかず品の良さが感じられた。野中は小さく頷くと両手で握りしめた懐中電灯に視線を落とした。
「なぜか、この辺りで寒気を感じたり、啜り泣く声が聞こえるらしいです。」
落ち着かず自分の腕を摩ると身震いをした。
「それに。」
唾を飲み込む。
「あの日以降、夢を見るんです。」
「夢?」
野中はきゅっと目を瞑り、奥歯をぎゅっと噛み締めた。
「内容は、覚えていません。だけど、怖かったのは覚えているんです。」
沈黙が流れる。野中は顔を上げると狸塚は顎に手を当てており、熊野はじっと野中を見つめていた。そして、源だけが興味がないのか辺りをきょろきょろと見回していた。
「今までここに入ったことは?」
野中はゆるく首を横に振る。
「いえ、ありません。」
風が吹いたのか、戸の揺れる音がする。野中は顔を上げると伺うように狸塚を見た。狸塚は指で顎をなぞりながら口を真一文字に結んでいた。
「あの日、初めて中に入りました。」
巡回中、いつもの様に外から見える範囲のみ、点検をしていた。枝葉は板塀を飛び出していないか、屋根瓦が落下しそうかどうか。帰ろうとした時、中から驚いたような声が聞こえた。
「近所の方達も聞いてたんですよね?」
野中は小さく頷く。
「はい、それで騒ぎになり警察と救急車が。」
狸塚は腕を組むと、じっと野中を見つめた。
「ここで、何があったんでしょうか。」
心臓が軽く跳ねた。あれは、見間違いじゃないだろうかと今でも思う。けど、そうじゃなかったら、今、起きていることの原因はなんなのだろうか。
「幽霊が、いました。」
野中は震える声でそう告げた。




