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「確かに、不足だったかもしれませんが、周辺の方々にご迷惑をお掛けしない程度にっ。」
「そうしろ、と権現坂社長が?」
うっすらと開けられた目が野中を捉えると次の言葉を紡ごうとしても飲み込んでしまう。きゅっと懐中電灯を握る手に力がこもっていく。
「社長も、仰ってましたし、それに問題もなかったってみんな言って。」
尻すぼみになっていく声とは裏腹に狸塚の目は細まっていく。野中も気になってはいた。ただ、あの気さくで優しい社長が、地域の人にも慕われている人が言うことに間違いはないし、問題が起こっていないなら教えられた通りにやれば大丈夫、と思いこんでいた。
「まあ、あなたに言っても仕方がありませんね。」
狸塚のため息に肩が震える。
「カントクシャフキトドキってやつっすか?」
満面の笑みを浮かべ、暢気な声で熊野に尋ねる様子に拍子抜けしてしまう。狸塚は呆れた様子で片手で顔を覆うと盛大にため息をついた。
「そうですね、君のせいでよく周りから言われる言葉ですよ。」
どすっと音と共に源はふくらはぎを押さえてその場にしゃがみ込む。源の後ろにいた熊野が源を見下ろしていた。
「ひどいっす、慈鳥さん。」
源は蹲ったまま唸り声をあげている。熊野は源の腕を掴み引っ張ると源はノロノロと立ち上がり、泣き言を呟きながら熊野のスーツの裾を掴んでいる。野中は肩の力が抜け、息を吐いた。
「ここで話をし続けるのもあれなので、戻りましょう。」
狸塚は脱力した様子で待合室への道を照らすと、熊野がそちらにゆっくりと歩みを進める。源はその後ろを少し焦った様子で熊野の様子を伺うように着いていき、狸塚は懐からスマホを取り出すと何かを打ち込みながら器用に暗闇を歩いていく。熊野と源、2人の様子にどこか既視感を覚えた。
「立ち話もなんですから座りましょうか。」
待合室に入ると狸塚はちょうどスマホを懐にしまっていた。源は長椅子を軋ませ座ると軽く埃が舞い、咳き込んでしまう。狸塚は懐中電灯を一度長椅子に置くと、ポケットから白いハンカチを取り出すとふわりと長椅子に広げその上に座った。
「野中さんもどうぞ?」
促されると慌ててカバンを床に置いた。軽く手で埃を払い、深く座らないように腰掛けると、熊野はいつの間にか少し間を空けて野中の隣に腰掛けていた。




