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扉が閉まる音と共に振り返ると、権現坂を見た。狐顔と狸顔、狸塚と権現坂、対霊事象管理機構と協力会社。顔立ちも名前も立場も、全てにおいて正反対だなと彼に会うと思う。狸塚という名前で狸顔だったら初対面でも覚えやすく、ありきたり過ぎて忘れやすいのに。
「あの。」
いけない、いけない。物思いにふけすぎた。相手を苛立たせるようにゆったりと歩みを進め、質の良い上座のソファに座る。手に持っていた黒のビジネスカバンを床に置くと、中からクリアファイルを取り出した。正面に座った権現坂に見やすいように一枚の紙を差し出す。
それを手に取った権現坂は口を真一文字に閉じると手が震え始める。ちらりと顔を見れば、どんどんと色を無くしていた。
「こ、これは法外ではっ!」
「法外?」
あまりにもの言葉に鼻で笑ってしまう。冷静にと思っていたのに、予想をまったくもって超えてこない台詞に反応してしまった。
「法外も何も、そちらの落ち度ですから。この程度の請求は至極当然です。」
権現坂が持っている請求書はゆっくりと皺の数を増やしていく。紙が勿体無い。今度からデータで送ろう。雑音を聞き流しながらぼんやりと考えているとローテーブルを激しく叩く音に意識を引き戻された。
「足元を見やがって!」
唾を飛ばし声を荒げる姿に呆れを通り越していっそ感心してしまう。
「一から説明しないといけませんか?」
嘲笑と捉えられたのだろう、歯を食いしばり顔を真っ赤にした姿に笑けてくる。一体、何年この仕事を任せられているのか。
「第一に、あなた方は建物管理を怠った。」
興奮が冷めやらぬだろう、鼻息が荒い。音まで聞こえてきそうだ。
「第二に、野中幸人に異変が起きていたにも関わらず、即報告しなかった。」
僅かに眉が動いたのを見てとれた。甘い、本当に甘すぎる。
「第三に、我々を私利私欲で動かした。」
息を詰まらせ、拳を握る姿に思い当たることがあるためか浮いていた腰がゆっくりと下りていった。
「我々が存じ上げないとお思いでしたか?」
さあ、この狐さんをどう料理してあげようか。自然と笑みが深まるのが自分でも分かった。
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