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「あ!」
大きな声に肩が大きく揺れた。
「自己紹介まだだったすよね?」
彼のジェットコースターのような感情の起伏のせいで、心臓が激しく脈を打っている。
「俺、源って言うっす。来迎源!」
彼はポケットを探りハンカチを取り出すと飴の棒をそれで包んで再びポケットにしまう。そしてこちらに向かって手を差し出した。野中は手を握ろうとしたが、手汗をかいているのに気がついた。慌ててスラックスで拭うと彼の手を握るが、あまり力が入らなかった。
「俺、苗字嫌いなんで、源って呼んでください!」
ぶんぶんと握った手を上下に振ると、源は手を離した。
「で、野中さんはどうして今の会社に入ったんですか。」
またしても、唐突な質問に、ゆっくりと視線を落とすが、源はジッと野中を見つめていた。野中は息を吐くと重い口を開いた。
「全て、落ちたんです。」
「え?」
野中は上手くいかなかった就職活動の事を思い出し、奥歯を強く噛み締めた。
「希望していた企業に、全て落ちたんです。」
そう口に出すと、なんだか妙に苛立ってくる。普段なら悲しくて、気持ちが沈んでため息が出るのに。自分を責めるのに。今日は違う。こんな事を聞いてくる源に腹が立ってくる。
「最終面接まで行ったのに、手応えはあったのに。」
いつもなら言わない。いつもなら、自分はだめだな、と笑うのに。言葉が止まらない。
「肝心なところで上手くいかない。」
ふつふつと腹の底から怒りが湧いてくる。止まらない、止められない。
「人より何倍も努力してるのに。」
口が勝手に動いてしまう。言いたくない、聞かれたくない。頭が熱い。
「いつも、いつもいつもいつもっ!」
息遣いが荒くなる。
「平凡だけどっ!頑張ってるのにっ!」
自分の声が響き渡った。肩も胸も息を吸うために大きく上下している。沈黙が続く中、呼吸が落ち着いてくると、あんなにあった熱がすーっと冷めていった。口元を押さえると、声を荒げた自分が信じられずに目を見開き、言葉をなくした。




