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「もういいですよ、源くん。」
狸塚の言葉にぴたりと経を唱えるのをやめた。後ろを振り返り、狸塚を見上げると狸塚の視線は野中に向けられていた。野中の側にしゃがみ込み、背中に手を当てている慈鳥がいる。
「慈鳥さん、彼の様子は?」
「問題ない、が少し削がれている。」
慈鳥の鋭い目が源に向けられた。源は慈鳥の目に背筋が伸びると気まずげに視線を逸らした。
「お前、集中していなかっただろ。」
誤魔化すように笑う源に狸塚は目頭を押さえ、慈鳥の側に駆け寄った。
「ひどいですか?」
「いや、しっかり休めば回復する。」
緩く首を横にふる慈鳥にあからさまに安心した狸塚は息を吐いた。
「対人は魂も削がれる場合があるから慎重にと言っただろ。お前は彼を殺す気か。」
源は眉を下げ、肩を落とすと小さい声で、はぁい、と返事をする。そして、慈鳥を上目遣いで見つめた。
「でも、慈鳥さんがいるから大丈夫だと思って。」
ね?と首を傾げて笑う源に慈鳥は眉間に皺を寄せ険しい表情を浮かべるとため息を吐いた。
「戻ったら特別メニューだ。」
「あ、私のお説教もあります。」
「えー!」
源は不満気な声を漏らすといじけ、唇を尖らせ埃の上に何重もの丸を描いた。
「いじける前にお仕事、しますよ。」
狸塚は手を鳴らすと源は唸りながら立ち上がり脛についた埃を払い、狸塚と慈鳥の元へ近づく。野中の丸まった背中を見下ろしながら、あ!と声を上げると狸塚を見た。
「てか、狸塚さん、いつの間にスピーカーなんて仕掛けたんすか?」
狸塚は口角を上げ、悪どい笑みを浮かべた。
「あなた方が来る前に機構の人間が。」
なるほど、もう仕込みは済んでいたのか、と源は納得すると頷いた。
「でも、狸塚さんすごいっすよね!屁理屈捏ねまくって!」
目を輝かせる源に、狸塚は到底褒め言葉とは言い難いのに片方の口角を上げ、自信溢れる声で言った。
「それが私の仕事なので。」




