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指を、体を、動かせず固まってしまう。別に、あれは、心配事ではないし、悩みではない。口を開こうとすると狸塚が手のひらで制した。気味の悪いくらい笑顔だ。
「言わなくて結構ですよ。我々は祓い屋であってカウンセラーではないので。」
狸塚の線引きする言葉に顔を赤くすると、野中は俯いた。
「普段からストレスや不安を抱えていて、そこに恐怖を体験してしまう。」
唇を噛み、視線を落とした。狸塚の綺麗に磨かれた革靴が反対側へ移動する。
「緊張状態が続けば、誰だって悪夢を見てしまいますよ。」
逆の肩を二度叩くと、狸塚は憐れんだ笑みを浮かべていた。
「そ、れなら、あなたたちは不要ではないんですかっ?」
語気が少し強くなってしまったのが自分でも分かった。狸塚、源、熊野を見た。狸塚は相変わらず楽しそうな笑みを浮かべて、源はにへら顔を隠さない。熊野だけが変わらず野中を見つめていた。彼女の、あの黒々とした瞳には何が映っているんだろうか、それこそ、得体の知れない何かがいるからこそ、彼女は。
「不要でいいんですよ。」
狸塚の言葉に我に返る。熊野から目を離すと激しく打つ脈を落ち着けるように深呼吸をした。
「不要でいいとは?」
「本物であれば祓い、偽物であれば安心させればいい。」
「安心?」
狸塚の言葉とは思えぬ台詞に顔を思いっきり顰めてしまった。狸塚は野中の表情など気にせず続ける。
「起こった現象を理路整然とご説明し、周辺の方達が気にせず暮らせるように自殺された方の供養をする。それだけです。」
人の良い笑みを浮かべるが、これまでのことを考えるとどうにも胡散臭く感じる。それを感じとったのか狸塚はゆるく首を横に振った。
「私たちはプロです。虚偽の発言はいたしません。検証し、ひとつずつ問題の芽を潰していきます。きちんと知覚できた場合のみ霊と判断し、祓わせていただきます。」
確かに、しっかりと下準備をしている。現場を確認し、土地柄を調べ、証言を聞く。怪しい祓い屋なのに、霊の仕業と騒ぐわけでもない。
「ご納得いただけたのであれば、供養をさせていただきます。」
そういうと源に近づき彼の背中に手を添える。
「彼が。」
不安しかない。
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