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「まあ、そう思っちゃいますよね。」
先ほどとは打って変わって明るい調子で言われると、変な声が出てしまった。訳がわからず源や熊野を見るが源はへらへらと笑い、熊野は肩をすくめていた。
「ご近所で起きた現象はきちんと説明が付くことなんですよ。」
狸塚はスマホを取り出し、慣れた手つきで操作をし始めた。するとどこからか、音が聞こえてくる。最初はノイズの様な小さな音だったが、次第に大きくなり人の啜り泣く声だと分かった。
「これは。」
「Bluetoothのスピーカーです。」
狸塚はスマホの画面を見せた。野中は腰を浮かせ、狸塚に近づく。そこには『啜り泣く声』と表示されていた。呆気にとられながら狸塚とスマホの画面を交互に見つめる。狸塚は困ったように眉を下げて笑う。
「裏手にある木造アパートの住人が悪戯に仕掛けたようです。」
考えてもみないことに口をはくはくと動かす。え、え、と小さく声を漏らすと意味もなくあたりに視線が漂ってしまう。
「じゃ、じゃあ寒気は?」
「この土地によるものでしょうね。」
狸塚は小首を傾げると再びスマホを操作し始める。スマホの光に映し出される狸塚の顔は妙に楽しげだ。
「この辺りは低地、かつ湿地帯だったらしいです。比較的に地下水位も高いことから冷気を寒気と勘違いされたのかと。」
「そ、それだけで?」
狸塚は顔を上げると深く頷いた。
「また、ここの庭は木が生い茂っていましたし、先ほど見た感じ、土も湿っていました。条件的には揃っています。」
確かに今にして思えば、庭に面した廊下は乾いた土ではありえないほど汚れていた。全て説明がつく。でも、あれは。
「幽霊は?」
恐る恐る狸塚に尋ねると彼は口角をこれまでかというほど上げた。




