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異世界最強の引きこもりは、人と生きる意味を知る  作者: わまたよ


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第二十四話 傷つけぬ勝利

 その日の夕食は、いつもより少し静かだった。


 王都西区画の屋敷。


 柔らかな魔導灯の光に照らされた食堂には、セラフィスの用意した温かな料理が並んでいた。香草を使った鶏肉の煮込み、焼きたての白パン、根菜の甘いスープ、薄く切った果実の蜂蜜漬け。


 普段なら、ルナは学院であったことを少しずつ話す。


 エマと昼食を取ったこと。


 リリアーナが歴史の年号にまた苦戦していたこと。


 カインが剣術訓練の感想を熱く語っていたこと。


 そういう小さな日常が、食卓を温かくしていた。


 けれど今夜のルナは、匙を手にしたまま、何度も何かを言いかけては止めていた。


 アルトはそれに気づいていた。


 セラフィスも当然気づいていた。


 ヴァルクは黙って肉を切っていたが、目だけは一度ルナへ向いていた。


「ルナ」


 アルトが静かに声をかけた。


「何かありましたか」


 匙が、器の縁に小さく触れた。


 澄んだ音がひとつ、食堂に落ちる。


 ルナは少し俯いた。


「……セシリアに、模擬戦を申し込まれた」


 セラフィスの手が止まった。


 ヴァルクの目が細くなる。


 アルトは表情を変えず、ただ続きを待った。


「決闘じゃない。教師立ち会いの、正式な模擬戦。でも……たぶん、セシリアにとっては、それに近いものだと思う」


「受けたのですか」


「うん」


 ルナは小さく頷いた。


「受けた」


 食堂に沈黙が落ちた。


 窓の外では、夜風が庭木を揺らしている。


 ルナは手元を見つめたまま続けた。


「セシリアは、私との差を確かめたいって言った。私のことが嫌いなのか、悔しいのか、羨ましいのか、自分でも分からないって」


 その言葉を口にするルナの声には、怒りよりも戸惑いがあった。


「私も、セシリアのことを知りたいと思った。だから受けた」


 アルトは静かに頷いた。


「よいと思います」


 ルナが顔を上げる。


「いいの?」


「ええ」


「危ないかもしれない」


「教師立ち会いであれば、危険は抑えられるでしょう」


「でも、セシリアを傷つけたくない」


 その一言に、ヴァルクがわずかに視線を動かした。


 アルトはルナを見つめる。


「なら、それを目的に戦いなさい」


「傷つけないことを?」


「ええ」


 アルトは穏やかな声で言った。


「勝つことだけなら、あなたには難しくないでしょう。ですが、相手を壊さず、誇りを踏みにじらず、それでもきちんと終わらせることは難しい」


 ルナは黙って聞いていた。


「それは、ただ強いだけではできません」


 セラフィスが続ける。


「セシリア様は、あなたを傷つけたいのではなく、自分の中にあるものを確かめたいのでしょう。であれば、無惨に負かす必要はありません」


「じゃあ、どうすればいい?」


 ルナの問いに、ヴァルクが短く答えた。


「受け止めろ」


「受け止める?」


「相手の剣も、魔法も、怒りも。避けるだけではなく、見る。流す。折るな」


 相変わらず言葉は短い。


 けれど、ルナには少し分かった。


 セシリアは敵ではない。


 ぶつかってくる相手だ。


 なら、自分は倒すのではなく、受け止めるべきなのかもしれない。


「……できるかな」


「できます」


 アルトが即答した。


「どうして?」


「あなたは、そうしたいと思っているからです」


 その言葉に、ルナの胸が少しだけ温かくなった。


 セラフィスは柔らかく微笑む。


「明日の朝は、少しだけ対人の流し方を確認しましょう。相手を傷つけず、しかし納得させるための動きです」


 ヴァルクが頷く。


「剣は止める。魔法は包む」


「包む?」


「壊すな」


 ルナは小さく息を吸った。


「うん」


 怖さは消えない。


 でも、何を大切にすればいいのかは少し見えた。


 勝つ。


 でも、傷つけない。


 逃げない。


 でも、踏みにじらない。


 それはきっと、今の自分に必要な戦い方だった。



 翌朝。


 屋敷の裏庭には、まだ朝露が残っていた。


 芝生の先にある訓練用の空き地で、ルナは木剣を構えていた。


 向かいに立つのはヴァルク。


 アルトとセラフィスは少し離れた場所で見守っている。


「来い」


 ヴァルクが言った。


 ルナは踏み込む。


 木剣を振る。


 ヴァルクは受けない。


 横へ半歩。


 剣の腹に触れ、力を流す。


 ルナの身体が前へ崩れかける。


 しかし、そこでヴァルクは追撃しない。


 木剣の先を、ルナの肩に軽く置いた。


「これだ」


「……終わらせるだけ?」


「そうだ」


「痛くない」


「痛くする必要がない」


 ルナは何度もそれを繰り返した。


 相手の剣を受け止めるのではなく、流す。


 魔法を真正面から壊すのではなく、包んで散らす。


 相手の動きを見て、行き先を少し変える。


 倒すのではなく、止める。


 止めた後に、相手が自分で気づけるように。


 それは難しかった。


 力を抑えすぎれば、相手は納得しない。


 強く出すぎれば、傷つける。


 セシリアの誇りを折らず、しかし自分との差を示す。


 その加減が、剣よりも魔法よりも難しい。


 それでも、ルナは朝の光の中で何度も動いた。


 額に汗が滲む。


 息が上がる。


 けれど、その目はまっすぐだった。



 模擬戦の日。


 学院の実技場には、いつもより多くの教師が集まっていた。


 立ち会いはミレディア。


 補助に魔法実技主任のオルガン。


 剣術担当のガルド。


 さらに数名の教師が観察のために席を取っている。


 正式な授業ではない。


 だが、Sクラスの名門伯爵令嬢セシリアと、学年首位ルナの模擬戦。


 その意味は大きかった。


 生徒たちにも観覧が許されたが、騒ぎにならぬよう人数は制限されている。


 観覧席には、リリアーナ、エマ、カインの姿があった。


 リリアーナは表情を引き締め、エマは不安げに手を握っている。


 カインは真剣な眼差しで訓練場を見下ろしていた。


 白砂の中央に、二人の少女が立つ。


 ルナ。


 黒髪を後ろで束ね、訓練用の軽装に身を包んでいる。


 手には木剣。


 腰には魔法制御用の小型触媒。


 対するセシリアは、美しい金髪をきっちりまとめ、白と紺の訓練服を着ていた。


 姿勢は凛としている。


 木剣と魔法触媒を持ち、目は真っ直ぐルナを見ていた。


 逃げるつもりはない。


 そのことが、立ち姿から伝わってきた。


「ルナさん」


 セシリアが口を開いた。


「受けてくださり、感謝します」


「うん」


 ルナは頷く。


「私も、ありがとう。ちゃんと言ってくれて」


 セシリアの瞳が少し揺れた。


 すぐに表情を整える。


「手加減は不要です」


「分かった」


 ルナは答えた。


 だが心の中で、もう一つ言葉を足す。


 手加減はしない。


 でも、傷つけない。


 ミレディアが二人を確認する。


「これは正式な模擬戦です。殺傷能力の高い魔法は禁止。過度な打撃は禁止。降参、戦闘不能、または教師判断で終了とします」


 二人が頷く。


「始め」


 声が落ちた。



 先に動いたのはセシリアだった。


 魔法陣が足元に淡く浮かび、細い風が彼女の身体を包む。


 身体強化。


 風属性による軽量化。


 さらに木剣の先に小さな火の魔力が宿る。


 美しい制御だった。


 さすが名門伯爵令嬢。


 魔法理論も実技も高水準。


 彼女は決して、ただの嫉妬に駆られた少女ではない。


 努力してきた者の動きだった。


 踏み込みは軽い。


 剣筋はまっすぐ。


 風を纏った身体が、白砂の上を滑るようにルナへ迫る。


 ルナは受けなかった。


 半歩下がる。


 剣の軌道を見て、木剣の腹を添える。


 だが、セシリアは読んでいた。


 剣が触れる直前、火の魔力が弾ける。


 小さな閃光。


 視線を奪うための魔法。


 観覧席から小さなどよめきが上がる。


 ルナは目を細めた。


 眩しさを正面から受けず、顔をわずかに逸らす。


 同時に、風の膜を手元で展開した。


 閃光が薄く散る。


 セシリアの剣は、その隙を狙ってルナの肩へ伸びていた。


 速い。


 だが届かない。


 ルナの足が白砂を擦る。


 半歩内側へ入る。


 木剣同士が触れた瞬間、セシリアの剣がわずかに下へ流された。


「っ」


 セシリアはすぐに体勢を立て直す。


 火。


 風。


 水。


 三つの属性を組み合わせ、小さな魔法弾を複数展開した。


 直接傷つける威力ではない。


 だが当たれば姿勢を崩される。


 ルナを動かすための布石だった。


 教師席でオルガンが唸る。


「よく練っておる」


 ミレディアも頷いた。


「セシリアは優秀です」


 その言葉は事実だった。


 セシリアの戦い方は美しい。


 魔法と剣を分けて使うのではなく、連動させている。


 火で視界を揺らし、風で自分の間合いを伸ばし、水で足元を乱す。


 貴族令嬢らしい優雅さの裏に、確かな努力があった。


 ルナはそれを感じていた。


 セシリアは本気だ。


 自分を傷つけるためではなく、自分の全部をぶつけるために戦っている。


 なら、自分も逃げてはいけない。



 ルナは木剣を下げた。


 一瞬、観覧席がざわつく。


 構えを解いたように見えたからだ。


 だがカインは息を呑んだ。


 違う。


 あれは構えを解いたのではない。


 ヴァルクの構えだ。


 剣を下げ、力を抜き、相手の流れを待つ姿。


 セシリアもそれに気づいた。


 だからこそ、踏み込んだ。


 待たせない。


 自分の流れを作る。


 風を纏い、火を剣先に宿し、水で足元を滑らせる。


 速く、美しい連続攻撃。


 ルナは、そのすべてを見ていた。


 一撃目。


 剣の腹で流す。


 二撃目。


 身を沈め、肩先を通す。


 三撃目。


 風の魔力を指先で撫でるようにほどく。


 足元の水膜。


 土属性で白砂をわずかに盛り上げ、滑りを止める。


 火の閃光。


 光属性の薄い膜で包み、散らす。


 魔法を壊さない。


 剣も弾かない。


 ただ、危険な形になる前に、少しずつ向きを変えていく。


 セシリアの攻撃は続く。


 だが、届かない。


 届きそうで、届かない。


 ルナは逃げているのではない。


 彼女の全力を、真正面から見ている。


 そして傷つけずに受け止めている。


 教師陣の表情が変わった。


 ガルドは拳を握った。


「……見事だ」


 剣術だけなら、倒す方法はいくらでもあったはずだ。


 ルナなら、初撃で終わらせることもできた。


 だが彼女はそうしなかった。


 セシリアの力を見せる時間を作っている。


 彼女が積み上げてきたものを、否定せずに受けている。


 オルガンも低く呟く。


「魔法をほどいておる。相殺ではなく、包んで散らしているのか」


 ミレディアの目は鋭かった。


「難度が高い。制御を誤れば、相手の魔法を暴発させる。だが、あの子は乱さずに処理している」


 教師たちは、ただルナの強さではなく、その優しさを見ていた。


 そして、その優しさが高度な技術によって支えられていることを理解していた。



 セシリアの額に汗が滲んだ。


 息が上がる。


 魔力も消耗している。


 それでも彼女は止まらなかった。


 悔しい。


 やはり届かない。


 どれほど組み立てても、どれほど工夫しても、ルナはその先にいる。


 けれど、不思議なことに、惨めではなかった。


 ルナは笑っていない。


 見下していない。


 退屈そうでもない。


 真剣に見ている。


 セシリアの剣を。


 魔法を。


 努力を。


 そのことに気づいた瞬間、胸の奥が熱くなった。


「まだ……!」


 セシリアは最後の魔法を展開した。


 四属性複合。


 火、水、風、光。


 彼女が今できる中で、最も難しい構成。


 火で推進し、水で軌道を柔らかく変え、風で速度を上げ、光で視認をずらす。


 小さな魔法槍が三本、彼女の周囲に浮かぶ。


 観覧席がどよめいた。


 制限内の威力ではある。


 だが、制御は難しい。


 失敗すれば暴発する。


 ミレディアが止めるべきか一瞬判断した。


 しかし、その前にルナが動いた。


 前へ。


 逃げるのではなく、踏み込む。


 魔法槍が放たれる。


 三方向。


 セシリア自身も同時に剣で迫る。


 ルナは息を吸った。


 世界が静かになる。


 一本目。


 光を包み、視認ずれを戻す。


 二本目。


 水の軌道を土で受け、速度を殺す。


 三本目。


 火と風の推進を、薄い空間膜で外へ逃がす。


 同時に、セシリアの剣が来る。


 ルナは木剣を合わせた。


 真正面から受けず、滑らせる。


 セシリアの身体が前へ流れる。


 しかし倒さない。


 ルナは空いた左手で、セシリアの背を軽く支えた。


 そして木剣の先を、彼女の喉元ではなく、胸元の手前で止めた。


 触れない距離。


 傷つけない距離。


 けれど、誰の目にも分かる終わり。


「そこまで」


 ミレディアの声が響いた。


 白砂の上で、二人は止まっていた。


 セシリアは息を切らし、ルナに支えられたまま立っている。


 ルナの木剣は、彼女を傷つけていない。


 魔法槍もすべて散らされ、暴発もない。


 セシリアの身体には、かすり傷ひとつなかった。


 勝敗は明らかだった。


 ルナの勝利。


 だがその勝利は、相手を潰すものではなかった。



 沈黙が続いた。


 やがて、教師席でガルドが深く息を吐いた。


「……あれが、傷つけぬ勝ち方か」


 オルガンが頷く。


「力でねじ伏せる方が、よほど簡単じゃ」


 ミレディアは静かにルナを見つめていた。


「よく見ていた。相手の術式も、感情も」


「感情?」


 若い教師が聞き返す。


 ミレディアは短く答えた。


「セシリアが何をぶつけたかったのか、ルナは逃げずに見ていたということです」


 それは、教師として感心せずにはいられない戦いだった。


 勝つことは才能でできる。


 圧倒することも、力があればできる。


 だが、相手の誇りを残して勝つことは難しい。


 それを、ルナは選んだ。



 セシリアは、しばらく動けなかった。


 負けた。


 完敗だった。


 自分の全力は届かなかった。


 けれど、胸の中にあった重いものは、少し形を変えていた。


 悔しい。


 それはある。


 涙が出そうなほど悔しい。


 でも、ルナは自分を壊さなかった。


 恥をかかせる勝ち方をしなかった。


 最後まで、見てくれた。


 そのことが、余計に胸を締めつける。


「……なぜ」


 セシリアは小さく呟いた。


「なぜ、倒さなかったの」


 ルナは少し考えてから答えた。


「セシリアを傷つけたかったわけじゃないから」


「私は、あなたに勝ちたかった」


「うん」


「あなたが嫌いだと、思っていた」


「うん」


「それなのに……どうして」


 声が震えた。


 ルナは木剣を下ろし、静かに言った。


「私は、セシリアのことを知りたかったから」


 その言葉に、セシリアの目が揺れた。


 白砂の上。


 多くの視線の中。


 彼女は唇を噛み、必死に涙を堪えた。


「……負けましたわ」


 ようやく、それだけ言った。


 ルナは小さく頷いた。


「ありがとう。戦ってくれて」


 セシリアは返事ができなかった。


 悔しさと、安堵と、よく分からない温かさが胸の中で混ざり、言葉にならなかった。



 観覧席で、エマがほっと息を吐いた。


「よかった……怪我しなくて」


 リリアーナは静かに微笑んでいた。


「ルナさんらしい勝ち方でした」


 カインは真剣な顔で頷く。


「あれは、すごい」


「剣術的に?」


「それもある。でも、それだけじゃない」


 カインは白砂の上のルナを見ていた。


「相手を倒せるのに、倒さない。相手の全力を見てから止める。俺には、まだできない」


 リリアーナは優しく言った。


「だから学ぶのでしょう?」


「はい」


 カインは小さく頷いた。



 その日の放課後、ルナは少し疲れた顔で屋敷へ帰った。


 アルトたちはいつものように迎えてくれた。


「おかえりなさい」


「ただいま」


 アルトはルナの表情を見て、結果を聞く前に理解したようだった。


「終わりましたか」


「うん」


「どうでした」


「勝った」


「そうですか」


「でも、難しかった」


 ルナは歩きながら、模擬戦のことを話した。


 セシリアの魔法。


 剣。


 最後の四属性複合。


 自分がそれを包んで散らしたこと。


 傷つけずに終わらせたこと。


 そして、セシリアが負けを認めたこと。


 セラフィスは穏やかに聞いていた。


 ヴァルクは短く言った。


「よくやった」


 それだけだった。


 だがルナには十分だった。


 アルトも静かに微笑む。


「相手を傷つけずに勝つのは、難しかったでしょう」


「うん」


「それができたなら、今日はとても良い戦いでした」


 ルナは少し俯き、照れたように笑った。


「セシリアと、少し話せるようになるかな」


「なるかもしれません」


「ならないかも?」


「ええ」


 アルトは正直だった。


「ですが、今日あなたは逃げませんでした。セシリアも逃げなかった。それだけで、関係は少し変わります」


「うん」


 ルナは夕暮れの空を見上げた。


 胸は疲れている。


 けれど、重くはない。


 誰かと真正面から向き合うことは怖い。


 勝っても、傷つくことがある。


 でも、向き合ったからこそ見えるものもある。


 セシリアの悔しさ。


 努力。


 誇り。


 孤独。


 そのすべてを、少しだけ知れた気がした。



 夜。


 ルナは自室でノートを開いた。


 いつものように、今日の出来事を書く。


 ――セシリアと模擬戦。


 ――勝った。


 少し考えてから、もう一行。


 ――傷つけずに終われた。


 さらに、ゆっくりと書き足す。


 ――少し、近づけたかもしれない。


 その文字を見つめ、ルナはそっと息を吐いた。


 窓の外には王都の灯り。


 明日、セシリアがどう接してくるかは分からない。


 また冷たくされるかもしれない。


 距離を置かれるかもしれない。


 それでも、今日の白砂の上で交わしたものは消えない。


 剣と魔法。


 悔しさと誇り。


 そして、傷つけたくないという願い。


 ルナは灯りを消した。


 胸の中に、まだ少しだけ模擬戦の緊張が残っている。


 けれどそれは、嫌なものではなかった。


 誰かを知るために戦うこともある。


 今日、少女はそのことを知った。

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