№52
たぶん私は突発的な事に対して対応できる能力が人より劣ると思う。
そして、人より突発的な事がおきる割合は残念な事に抜きん出てると思った。
今、目の前に殿下とはまったく違うタイプのキラキラとした御仁が、
優雅にお茶を飲んでいる姿を見ながら、他人事のように考えていた。
昨日、サラより他国の王族がレガーナに滞在していると聞き、
私達異世界人と歓談したいとの申し出により急遽、お姉様方とその御仁とで、
昼食を取る事になった。本来なら、皇太子妃候補の私達は後宮より出る事も
できない立場で、ましてや他国の王族で男性等との食事等、ありえない事、
サラやお姉様方の女官の大反対も押し切り、無理やり的に国王陛下と王妃様が、
会食をお膳立てしてしまったらしい。あの人達は本当に面倒な事をしてくれたものだ、
自分の息子の嫁候補を……、理解できない…。
私と殿下が、心が通じた事をどこかから知り得、私達を引き離そうとされているのかと、
疑ってしまう。イヤ…きっとそうなのかもれしない…。
どう見ても、お姉様達が殿下にはお似合い。礼儀というか所作というか全てが、
既に整っているお姉様達、私は太刀打ちできるはずもない。
豪華なバラや綺麗な白百合の中にたまたま紛れ込んだ雑草。
孔雀の群れの中に雀、サラブレットの中のロバ…、
もう色んな例えが溢れてくる…、むなしいような気もするけど、
否定できないのが物悲しい…。
ってそんな私の感傷的な事はこのさいどうでいもいいんです。
はい、もうそれよりもこの目の前の白馬の王子様と言っても誰も否定しない人物を、
まずはどうにかしなければいけなかった。
それにしても、白いタイツとかぼちゃのパンツを穿いてくださいと言いたい。
絶対似合うはず…。
なんでこうなったかと言うと、昼食会の時、私達四人と白馬の王子様とその弟殿下
勿論初対面、楽しく食事は進んでいくかと思っていたのですが……。
実際食事会は和やかな雰囲気の中、進んでいきましたよ、はい。表面上はですね…。
私達四人と弟殿下の五人だけ…。あまりにもすんなり楽しく時間が過ぎていったので、
その時はこのキラキラ白馬の王子様の事はすっかり忘れてしまった程…。
この王子様、なんかめっちゃ人見知りらしくて…、すっかり怯えてしまったらしい
その理由を聞いて、……失礼ながら納得してしまいました…。
どうも私意外の異世界人のお姉様方があまりにも美しすぎてしまい、
妖艶な迫力に負けてしまったそうです。
うん、わかるよその気持ち。女の私でも見つめられたら落ち着かないもんね。
で…、……、複雑極まりないけど、一番普通で地味な私だけが、私だけが、
悔しいからもう一度言うけど、私だけが、平気そうだという事らしい…。
そんな理由で、私達は今、二人でお茶を飲んでいるという事になってます。
でも、突発的な事に対してのスキルもなんもない私と、極度の人見知りの御仁、
ずーーと、ずーーと、ずーーと、会話もないまま、お腹がガボガボになるほどの、
お茶だけ飲みまくっている状況なんですよね…。
気まずいのを通り越して、もはや一人で居る気分。
ただ、キラキラとした彫刻を観賞していると思っていいほどに一人きりの時間。
「異世界から……来たとは……本当?」
んぬぬぬぬーーっ、びっくりした、マジでびっくりしましたっ。
突然目の前の置物、いや彫刻がしゃべったて感じっ。
それにしても…今更その質問………。脱力しかけた肩をふんっと起こした私は、
「はい、そうです。」
「本当なんですね。」キラキラキラキラ
「はい。」
ふにょ~ん、なんか…可愛いですっ、あなた可愛い過ぎます。
キラッキラとした瞳が、大きく見開き、もうもう顔中に嬉しいと書かれている。
なんか…しらないけど、こんな気持ちを母性本能をくすぐるって言うのかと思った。
見るからに年上だよねこの白馬の王子様は…。それでも何か可愛すぎますっ。
うぅ、大型犬のような……。尻尾ぶんぶん振り切ってるのが見えそうだし…。
と……喜んだのもそこまで、あとはまたお茶を飲むしかする事がない。
うぅぅ、私が『はい。』と完結に返事をしたのがダメだったんだ…。
あそこはもう少し何か広げる話しを振るべきだったんだ……。
心の中でひとしきり反省をしてしまいました。
「ユリア様、殿下がとっても嬉しそうにしておられます。
なんとお礼を申してよいのやら…この爺は本当に感謝しております。」
アデルとはまったく違う柔らかい笑顔がよく似合う執事のようなおじさんが、
私に涙ぐみながら頭を下げている…。
いやいや、大袈裟ですよ、ただちびっと会話をしただけなのに、
こっちが恐縮してしまう……。なにも泣かなくても…、
いやいや、泣くほど嬉しいのかいっ?
「今もあんなに嬉しそうなお顔…記念に肖像画にして残しておきたい程です。」
ど…どんなに贔屓目に見ても…、今現在嬉しそうには見えない。
百歩譲って、さっきの会話の時はそれは私も感じたけど、
いいい…今は………、んーー…。まったくさっぱり理解できない…。
チラッとサラを見ても、サラはいつもの笑顔、
うん、いつもあなたは完璧ですよね。
「それではユリア様、晩餐の席にてまたお会いしまょう。
どうか殿下を宜しくお願い致します。」
「後で……、……また…。」
晩餐!!!聞いてないよっ、そんな話っ。
バッとサラを振り返れば、笑顔で頷かれた………。
まさか…、また…、二人っきりで…この窮屈な時間を過ごすのかと思うと、
逃げ出したくなってきた。
「ユリア様、晩餐の席には陛下や王妃様、皇太子殿下、それに
異世界人のご令嬢の皆様もご参加されます。」
有無を言わせぬサラの言葉…、てかっ、おじさんっ、
何また泣いてんのよっ。
「殿下……、晩餐が…お楽しみなのですね…。
私は嬉しいです…、会話が弾んで何よりでございます。」
っっっ!!!
会話が弾んでって!!!
いったい何処に弾んだような会話があったのよっ。
弾むどころか沈んでいたでしょ、いやむしろめり込んだとでも言いたいっ。
そんな私の驚きとかまるで無視したように、殿下とおじさんは去って行った。
クギギと音でも出しそうな私は固まったまま、首をサラへと向けた。
「サラ…、今の何?」
「はい、タキーノ国の皇太子殿下とお付の方です。」
そんな事わかってるわよっ。
そんなこんなで今、私は今夜の晩餐の為にと着替え中…。
で…何故だか、グリンス様とアイラ様とガートルード様も、
完璧にお着替えしてここに居るのよね…。
お姉様方、今夜もお綺麗ですっ。
「ねーねーユリア、あのキラキラ王子様どうだったの?」
ニヤニヤと笑うグリンス様が怖いです……。
「でもおとなしいと言うか、存在感がないというか…、
ホントッ不思議な方でしたわ…。」
ガートルード様、はい、その通りです。
「そう?不気味としか言いようがないわ、あの男は危険よ。」
え?アイラ様、なぜに?
なんだかアイラ様が言うと真実味があるというか…、マジで怖くなってくるし、
「物凄く、静かな方でしたよ、てか、会話という会話はしてないです。」
私の言葉に驚く三人、はいそのリアクションはわかります。
「ちょっと、二時間以上お茶してるって聞いたわよ。」
「グリンス様、正解です。もう苦痛の時間でした…。」
私が会話の内容とあのおじさんの態度を話して聞かせると、
三人は信じられないというか、どっちかと言うと呆れたような顔をされた。
うん、私も同じだよね。物凄く同意しますっ。
「あれで皇太子って…やっていけるのかしら?」
うぁぁ、毒舌すぎます、ガートルード様っ。
「でも…隙がまったくなかったのよね…皇太子殿下…。」
え?そうなの? 私はまったく気づかなかったよぉぉぉ…。
修行の成果が……まったく反映されてないし…。
どっちかと言うと犬的なイメージ…。
うん、犬だよね。もふもふした毛並みの大型犬だよね。
「今日の晩餐って、殿下もいるんでしょ、なんだか面白くなりそうですわね。」
グリンス様の言葉に二人のお姉様が大きく頷いているし……。
「あはは…、……。」
乾いた笑いしか出なかった…。
「大丈夫よユリア、今日のエスコートはお父様らしいわよ。」
「え?そうなんですか? 」
まったく聞いてないよね…。
「あ、私はオールデンよ。お父様は忙しいって。」
「私はなぜかライナス様でした。」
ガートルード様がライナスっっ???
バッとサラを振り返れば、普通に、いたって普通に返されたよね…。
「ユリア様はクウゴー様とテンゴー様とハンゴー様です。」
「誰?」
「はい、オードノギュー家の三つ子ですよ。」
「おおー、三つ子ちゃん達かーー。」
不思議そうなお姉様方に可愛い三つ子ちゃん達の話しをしてあげました。
ふふ、元気いっぱいの彼等とのこんな粋な再会に私は少しだけ、
今夜の晩餐が楽しみになっていたり、現金だけどそう思ってしまっていた。
そうこうしている内に、着替えを終えた私は四人でお茶を飲んで時間を
潰していたら、突如現れた三つ子達、てかライナスも一緒だけどね。
「ユリアー、会いたかったーーー。」
「ユリアー、元気だったーー。」
「ユリアー、なんかまた小さくなってね?」
もう三人にもみくちゃにされそうな私をサラが間一髪のとこで、
救いだしてくれたよ…、よかった、せっかく着飾ったから…。
「な…なんかさ…三人ともまた大きくなった?」
どっから見ても青年のような三人…。
可愛い姿がかけらもないし…。涙…。
「きゃーー、三つ子可愛いっ。」
と三人のお姉様方…、あの方達から見たら、三つ子は可愛いのね…。
私から見たら、なんだか…ライナスが三人増えたような…。
ライナスってめっちゃイケメン君なのよね。
実はオールデンもイケメン君です。
完璧すぎる殿下の隣にいつもいるから、残念な事に霞んで見えるけど…。
この世界に不細工って存在しないのかもしれない…。
アデルにしても、その息子達にしても…。
いやいや、そんな事はないはず…、たまたま私の周りに集中しているだけっ。
無理やりに結論ずけたよね…。なんか心が哀しいのはこの際無視して…。
それから私達というか、お姉様方が三つ子を撫で回して楽しい時間を過ごした。
三つ子も豊満で妖艶なお姉様方に、逆らえずにされるがまま…。
まあ…今後の良い経験になるだろうと密かに伯母として生暖かく見守った。
「ユリア様方、そろそろ時間です。」
サラのその声に私達はそれぞれのお付とともに、
滅多に出る事のない後宮より、私はセイレンへ行ってるけどね、
滅多に行く事のない王城へと向かった。




