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願いが叶った女  作者: 花梨
52/56

№51

いつもより早い時間に起こされてなんでだろうと思っていたら……。

はい、もう優雅な姿で椅子に座り当たり前のようにお茶を飲んでおられましたよ。

この国の人達は迷惑という言葉を知らないらしい…。

時計見ろよと言いたい……。言ってもなおらない気はするけどね…。


朝からどんだけピッシリ皇太子しているのかと言いたくなるのを、

グッと我慢して、サラに連れられてお風呂に行く私……。

ここで逆らっても無理だと知ってる私は脱力しそうだし…。


はぁぁ…、昨日の今日でまともに顔も見れないのに……。

あんたのせいで完璧に寝不足なんだと言いたい。

よくもまあ平気な顔をしているよね、私だけドキドキして馬鹿みたいじゃん。


しかもサラに『予定があるので急いでくれ』と偉そうに俺様発言だし…。

そんなに忙しいならわざわざこんな朝早くから来なくていいのに…。

もう少し寝ていたい…、てか、やっと寝たのにもう起こされたってのっ。


バタバタとお風呂に入り、着替えもさせられて、食欲もないのに、

殿下と二人朝ごはんを食べてる。

朝からよくそれだけ食べれるねと言いたいよ…、見ているだけで胸焼けだし…。

でも…二人きりなのはちょっとだけ嬉しいかも…。

皆から見られて食事をするのはいまだに慣れないから…。

でも……、この状況もあまりよろしくはない…。

朝から、あんた変な妖気撒き散らしすぎなんだってばっ。

うぁぁぁ、何だか知らないけど笑ってるよぉぉ。

胸がぁぁ、苦しい……、まじで無理かも…。

ちょっと結界張ってみた……、ふぅぅぅ、疲れる…。


「昨日までタキーノ国に王命により行っていた。」


突然殿下が話しはじめて…。

それから、タキーノ国の事を殿下からご飯を食べながら色々と聞いたりした。

…魔獣退治…、まったく想像もつかない話に食欲なんか綺麗さっぱり消えたよ…。

そんな事までするのかとびっくりした。

朝からスプラッターな話……、それも嬉しそうに話しているし……。

まあ殿下が魔獣に負ける気はしないけど、それでも牙を剥き出しとか、

長い爪とか、変な毒を吐くとか聞くと多少は心配になったりもする…。

でも…、殿下よりも魔柔の方が可哀相な気がしてくるよ…。


「怪我もなく無事に帰ってこられて良かったです。」


社交辞令でもなく、普通に人としての感想を述べたんだけど……。

これのどこがいけなかったのか……。


めっちゃ拘束されてるし……。

ぐりぐりと私の頭に殿下が自分の頭を摺り寄せてくる……。

正直痛い、少しは加減と言うものを覚えてほしい…。

そのうち頭とかとれそうだし…。

お願いだよ…、あんたは平気かもしれないけど、私は沸騰しそうだし…。

きっと今ならお湯を沸かす自信がある。


そんな時、ポンと手のひらに乗せられた包み。


「タキーノ国を発つ前に購入したんだが……、土産だ。

普段自分で買ったりしないので……綺麗な装飾など気がまわらなくてな…

こんな包みですまない…。」


レーズンパイや書物が入れられている可愛い包装とはまったく違う、

地味な簡素な袋が手のひらに乗っていた。


それでも私は嬉しい…。殿下が買い物とかまったく想像できないけど…、


「開けてもいいですか?」


「ん…。」


素っ気無い返事の後、開けられるのが嫌だったのか顔を背けられた。

嫌なら嫌って言えばいいのに……。

でもお土産の中身が知りたくてそんな殿下はほっといて私は包みを開けた。


「わー、可愛い…、ありがとうございます。」


出てきたのは可愛らしい髪飾りとネックレス。

おおーー、可愛い~~~~、素直に嬉しいかも…。

これを選んでいる殿下の姿を想像したけど…、やっぱ無理…。


ん? んんん?? んんんんんん???


もしかして……、照れてる? うそっ…、まさかね………。


そんな彼は口に手を当て横を向いてはいるがなんとなく彼女にも、

普段とは違う彼を垣間見る事ができた。


「帰りに…時間がなく…高価な物でもないが…そんな物ですまない…。」


うぁぁぁ、反則でああありますっ。あんたっそれわざとじゃんないよねっ。

なに、はにかんでんのよっ、うぎゃーー、絶えられない…、

どうしよう伝染してきたじゃん、恥ずかしすぎるるるるるぅぅ…。

私は、恥ずかしくて下を向くことしかできなかった。


「…う……ううれしいっす…。」


な…何言ってんだろ、どうしよ…。まともにお礼も言えないし…。

どこの体育会系の部活かよって自分にツッコミ入れたくなてしまった…。


「貸せ、私がつけてやる。」


ふいをつかれた私は殿下の行動についていけない。

首筋にふれる冷たい感触がそれを教えてくれた。


「似合っている。」


そう言って嬉しそうに笑うから……、やっぱり彼は危険。

その顔がどれだけ威力があるのか本人は知っているのか……。

私たぶん半分くらい溶けてる…、きっとドロドロの液状化…。


「たたた大切にしまっすっ。」


うぅぅ、思わず力んでしまったじゃん…、もうヤダ…。


「時間が足りないな…、もう行かなければならない…。」


うんうん、わかったから、サッサとどっかに行ってくれよ、

このままだと心臓がもたないよ…、


「はいっ。」


すっげー元気に返事をしてしまったよ…。

あ…なんか睨まれたし……。


「サラに香油と入浴剤を渡している、アイラ達の分もあるから渡してもらえるか?」


「はいっ、わかりましたっ。」


「そうだ、サラや他の者達にもわけてやってくれ。」


「きっと皆喜びます。ありがとうございますっ。」


もう敬礼でもしそうな私は…、きっと恋する乙女じゃない…。

素直になる前に、まずこの男の濃厚な瞳に慣れなければ無理な気がする…。

慣れる日とか来るのかな……、来ないような気がするよ…。



そんな私の気持ちを知らないフェロモン男は、クスリと笑うと…


そっと触れるだけのキスをして、『また来る』と言ってその場から消えた。



空気の抜けた風船みたいに腑抜けな私は、サラに救助されるまで、

ソファーの上で悶絶死中だった。







殿下達三人は、執務室にて溜まりに溜まった書類を処理している。

タキーノ国に行っていた分の皺寄せが半端ない三人は

その書類の量にうんざりしていた。いつ終わるのかと疑問さえ出てくる程。

そんな時、国王の使いだと近衛が彼を呼びに来たのであった。


嫌な予感しかしない、まさかな……、昨日帰国したばかりだというのに…。

渋々彼は国王の執務室へと向かう。



「まあ座れ。」


開口一番、ジロリと睨まれ冷たく言われた彼、あぁと半ば諦めていく。

その内容は案の定彼の予測した通りであった。


「魔人の仕業かしらぬが、魔獣が巨大化して暴れているそうだ。

ふんっ、こんな事をしでかすのは、皇太子、お前しか考えられぬ。」


「まったく身に覚えがありません。誤解です。」


しれっとすっとぼけた彼であった。


「ふんっ、戯言を、タキーノ国からの連絡だっ。」


それでも無表情を決め込んだ彼、証拠もないのにと真っ向から対立していた。

それにしても彼の喜びだけでなく興奮もタキーノ国と繋がっていたとは、

流石に彼も今回ばかりは多少なりとも関わった国に対して申し訳なく感じていた。


「オールデン一人で大丈夫でしょう。なんならライナスも一緒に、」


「状況が掴めない以上は今回も三人で行ってもらう。」


「は?私は忙しい身、そう何度も行けません。」


「よくそんな事が言えるな、お前のしでかした事なのにっ。

とにかく、行って見てこい、それで判断すれば良い。」


半強制的な国王の言葉にまたしても彼は三人でタキーノ国に行く事となる。






「サッサと終わらせるぞ。」


不機嫌極まりない彼は二人に一声かけて、タキーノ国の王城へ足を踏み入れた。

簡単な挨拶をタキーノ国の国王陛下にし、魔獣の情報にしたがい早速その場へと

向かった。クラリスは既に魔獣討伐の為に現地へ赴いているらしい。



見事なまでに巨大化した魔獣が彼等の前で暴れていた。

それでも彼等にしたら別にどうって事無く、魔獣を倒して行く。


「デューク、この分だと三人は必要ない、俺がサクッと片付けて帰るよ。」


オールデンの言葉にライナスが噛み付く。


「お前、書類の山から逃げるつもりだな?」


そんなライナスの言葉を掻き消すような殿下の声。


「構わぬ、オールデン後は頼んだぞ。」


皇太子の言葉にライナスが『 チッ 』と舌打ちをする。


「了解、クラリスと合流してサッサと片付けて帰るよ。」


「オールデン、早く帰って来いよ。お前の分はきっちりと残しておくからな。」


ライナスの言葉に何の反応もせず、オールデンはその場から消えた。






レガーナに戻ってきた皇太子は、朝の短い時間だけユリアと過ごし、

後は執務室にて黙々と書類を処理していた。

その間、ライナスがオールデンが戻ってこないとぼやいても、

タキーノ国へ様子を見に行く事もせず、またさせず日々を過ごしていた。

彼としてはタキーノ国とあまり関わりたくないのが本音。

そんな事を知らないライナスは日に日にやさぐれていくのであった。







「只今戻りましたーー。それと客人を連れてきた。」


そんな時、オールデンがやっとレガーナに戻ってきた。

しかも、二人の客人を連れて、


「お久しぶりです。その節は大変お世話になりました。」


元気に挨拶をするクラリスと、クラリスの後ろに男性が一人。

ライナスが慌てて挨拶をする。


「こちらこそ、お世話になりました。皇太子殿下がまさかいらっしゃるとは、

歓迎しますよ。」


「突然申し訳ない…、父上に……たまには大国を見て勉強をしてこいと…」


「オールデンがお世話になったようで、こちらこそ礼を言う。

ライナス陛下へ取り次いでくれ。」




タキーノ国からの突然の訪問者。

彼は今までの摩訶不思議な現象が自分の仕業だと絶対ばれない自信はあるが、

嫌な相手が来たと内心思うのであった。





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