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願いが叶った女  作者: 花梨
50/56

№49

ゆっくりとユリアと過ごす時間もなく私は忙しい日々を送っていた。

本当に忙しかった…。

寝る暇がないとは言わないが、そんな言葉を言いたくなるほどだった。


あれは……、ユリアと本当に心が通じた日から数日たったある日。

私は父上である国王陛下に呼び出されていた。



「お前は、あれ程言っておいたのにっ。」


父上が何を言っているのかがさっぱりわからなかった。


「なんて事をしてくれたんだっ。」


一方的に責められてる状況が腑に落ちない。


「被害は尋常ではないぞっ。どうするつもりだっ?」


ちゃんと説明をしてくれないと私もわからない。首を傾け抗議の姿勢に出てみた。


「うっ…、そんな可愛い素振りをしても私は許さないからなっ。」


図体と態度ばかりデカクなって最近ではまったく可愛げもクソもなかったのに、

そんな可愛く首を傾げる姿は……、ぅぅうううう、やはり可愛いではないかっ。

イヤイヤいかん、ここは国王として父としてピシッと皇太子に接しなくては

ならない。ここで甘い顔などできぬっ。



宰相の心の声


陛下には……殿下の姿が可愛く見えているのですね……。…………。…………。

―――――

――――――――

私にはまったくわからぬ…、どこをどう見たら殿下が可愛く見えるのかが……。

ムスッとして、何を言いたいんだとばかりに不機嫌極まりないその顔…。

あれを可愛くなど……間違っても思わないし……。思えない……。



「タキーノ国からまた連絡が入っておる。」


「!!! タキーノ国?? 」


「何でタキーノ国なんだ? どうせなら他の国にして欲しかった…。」


あ……。


……。


……。


……。


「フンッ、やっと心当たりが見つかったようだな。」



ユリアと心が通じ私は嬉しかった……。


それは認める。少しばかり浮かれていたのも事実。


それにしても……、また…タキーノ国とは………。


私の喜びはあの国に直結しているのか?………???わからぬ…。


「父上、それで被害とはどのような事でしょうか?」


「森が消失したそうだ……。まあ今回は魔の森だったので、

さほど相手も気にしてはいない様子というか逆に喜んでおるぐらいだ。」


「はぁ…、それは良かった。」


本当に良かった。簡単に喜べぬとは本当に面倒な事だ……。


「だがな、問題も起きておる。魔獣が森がなくなり村や町まで出没しておるそうだ、

悪いが魔獣退治にちとばかりタキーノまで行ってくれ。」


「なぜ私が?」


「お前のせいであろう。私も心が傷む。少しでも役に立てたらそれで良い。」


「……、タキーノにも魔力保持者がいるでしょう。私が出るまでもないのでは?」


「あのな、森がなくなるんだ、数は計り知れぬと聞き及んでいる。

この際、一人でも多い方が助かるはずだ。お前とライナス、オールデンが行けば、

三百人分くらいの働きがあるはず、全力を出さずに少しばかり加勢をしてきてくれ

レガーナとして、王命として他国の被害に力を貸すと思ってな。

と言っても、原因はお前だ。今すぐタキーノに行くように、良いな。

それと絶対全力を出すな、一瞬で消し去るなよ。お前の力わざわざ他国に見せる

必要などない。必ずそれだけは守るように。」


面倒な事になった……。ユリアと逢えぬではないか……。

せっかく心が通じたというのに……。


父上から地図を見せられてびっくりした。


「タキーノ国……、こんなに遠いとは……。」


「ん? お前知らなかったのか?」


「はい、」


「まあ、お前達なら一瞬で行けるだろう。早速頼む。」


一方的に告げられた王命、拒否権など無い。

私は渋々ライナスとオールデンを連れ果てしなく遠いタキーノ国へと向かった。



「それにしても地図ではめっちゃ遠かったけど瞬間移動ってやっぱ便利だよな。」


オールデンが周りを警戒しながらもそんな言葉を吐く。

うん、それは私も思う。あんなに遠かったとは思ってもいなかった。


とりあえず王城に挨拶に行き父上の書状を渡し、早く帰る為に魔獣退治に向かった。




なんだこれは…、思ったよりも魔獣の数が尋常ないくらいに多いのに驚いた。

いっそこっそり魔の森を復活させてやろうかと思う程だった。


「ちょっくら行ってくるわ、なんかあの変めっちゃ大変そうだしな。」


オールデンの指さす方角には魔獣と戦う騎士達の姿があった。

あれは見ただけでもわかる。憔悴しきった姿、これほどの数を相手にしていたら

そうなるのもわかる。私もここにきて自分のしでかした事の重大さに気づき、

多少は心入れて魔獣退治をしなければと思った。


オールデンが嬉々として魔獣を退治していく。とても嬉しそうだ。

ライナスも心なし嬉しそうに見える。余程ストレスが溜まっているらしい…。

そんな私の目の前に一際大きな魔獣と戦う騎士の姿が目に入ってきた。

真っ赤な騎士服を身に纏う見ただけでも上級騎士な雰囲気の男。

正直そのセンスには眉間に皺が寄りそうになったのは言うまでもない。

真っ赤…、ありえない。騎士だというのに……。

だが疲れ果てているその騎士の姿に自分のしでかした罪を思い珍しく私は、

助太刀をした。瞬時にその騎士の前に立ち小指一本でその魔獣を倒した。


「なんて弱い魔獣だ。」


つい本音が出てしまった。


「っ、」


後ろから微かに何らかの動きを感じた私は振り向いた。

助けてやったのに物凄く睨まれている。なんて失礼な奴なんだと私も、

この目の前の男に凄んでみせる。そしていつものように嫌味な笑みを向けた。


「助けてやったのに、礼の一つも言えぬとは、失礼な奴だ。」


「っ…、くっ。」


それでもこの目の前の男は、この私に向かって呻きのような声を発しただけだ。

イラッとしてつい睨んで見てもよく見たらまだ子供のようだ。


「チッ。」


聞こえてきたのは舌打ち。

はっ、弱いくせに気だけは強いとは、子供とは言え、男として情け無い。

こんなのは無視して、早く帰る為にサッサと魔獣退治でもするかと私は向きを変え

魔獣達が暴れている場所へとその場から飛んだ。

ザッと見ても大小あわせて五十はいそうな魔獣達のど真ん中に降り立つ、

父上から言われていたように魔力を使わずに剣を取りバッサバッサと切り倒していく。

意外と楽しい。最近身体がなまっていたのか適度な運動になる。

そうこうしている内に魔獣を全て倒し、まだ力を持て余している私はその場から飛ぶ。

空中にて辺りを見回せば魔獣の群れを発見した。つい笑みがもれる。

瞬時にその場へと移動してまた、バッサバッサと魔獣を倒して行く。

爽快な気持ちで剣を振るい、いつのまにか楽しくて笑ってしまう。

楽しい気持ちの時はついユリアの事を思い出し、あの可愛い顔が目に浮かぶ。

そうなると早く帰りたくて、魔獣を今まで以上のスピードで倒していた。



切っても切ってもどこからか湧いてくる魔獣共に辟易していた。

それでも民を守る為に疲れた身体に鞭をうち必死で戦っていた。

最近我が国で起きている一連の摩訶不思議な事件、きっと魔人の仕業に違いない。

これだけ魔獣が街に溢れ民を苦しめているのが何よりの証拠。

私も王族の一人として民を護る為に必死だった。


そんな時、一人の男が現れた。

見上げるような大きな背、真っ黒い服とマントを身に纏っていた。

私が今まで苦戦していた魔獣をあっという間に倒したその男。

驚きで声も出ずに唖然としている私に振り向いたその姿に思わず息を呑む。

見目麗しい姿とはこの男の為にあるのではないかと思えるほどに、

綺麗な顔をした男が立っていた。


ふと笑った顔に心臓が鷲づかみされた。

こんな魔獣だらけの中でなんで笑える。私は不思議でならなかった。


『助けてやったのに、礼の一つも言えぬとは、失礼な奴だ。』


助けてもらったのに王族だというプライドが礼を言う事をさせなかった。

それは自分の悪いところだ、それは自分でもわかってる。

それが悔しくてつい舌打ちをしてしまった。


その男は、私の事などまるで無視をし、魔獣の群れへと向かった。

凄い数の魔獣を見事な剣さばきで仕留めていく。

返り血を浴びてもどこか楽しそうに魔獣を倒しいく姿が悪魔のようで恐ろしいが、

私は、その男から視線を外せなかった。

綺麗な顔の男は、残忍と言う言葉が可愛く聞こえてしまう程の勢いで、

その場を地獄絵図へと変えていった。無残に散らばる魔獣の屍。

そのど真ん中に悠然と立つ姿はまるで魔王。

私は無意識にその姿を瞳に焼き付けていく。




オールデンが音もなく彼の背後に現れた。


「デューク、お疲れーーー。派手にやったな。」


「ん? まあな、サッサと終わらせて早く帰りたい。」


「お前…、怖ぇぇえ…。返り血半端ないな…、気色悪っ。」


「そう言うお前も人の事は言えんぞ。」


「ライナスは?」


「知らん。」


「ちょっと……、ヤバくね…。あいつ…止めないと……。」


オールデンの言ってる意味は直ぐに理解できた。

ライナスは普段色々と抑えている分、何かのスイッチが入ると人が変わる。

想像できる姿は殺人マシーンのようなライナス……。

瞬時にライナスの気配を探りその場へと向かった。



案の定、夥しい数の魔獣の死体の山が出来上がっていた。

それでも容赦ないライナスは、逃げ惑う魔獣を面白そうに血祭りにしていた。


「ライナス、そのくらいにしておけ。」


僅かばかりの怒気を含んだ私の声にビクッと身体が反応しこちらを振り向く。

ニヤリッと笑うと顔にかかった返り血を無造作に拭き気づいた時には、

私の前で傅き静かに顔を上げた。


「少しばかり楽しんでしまいました。」


笑みをもらすその顔は、悪戯をして怒られた子供のようで私もつい許してしまう。


「そろそろ王宮に帰るぞ、タキーノ国の国王陛下が待っている。」


オールデンと三人で魔獣の屍の中意味なく笑いあっていた。




遠めに見ていたが、この三人どこの者達なんだ。

見事な働きであっと言う間にこの地区で暴れていた魔獣を一掃した。

我が国の騎士達と近隣諸国からの応援の騎士達で必死で倒していたのが、

馬鹿らしくなる程に意図も簡単に退治していくとは………。

どこの国の騎士かわかるぬが、是非とも我が国の騎士になってもらいたいものだ。

父上に進言し、なんとか我が国に留まってくれるよう頼まなければならぬ。

その三人に近づこうと向かったその時、三人の姿が一瞬にしてその場から消えた。


どうやら…魔力保持者のようだ。あの剣さばきに加えて魔力保持者か……。

既にどこぞの国の名のある武将かもしれぬ……。




王宮にての晩餐の席に先ほどの真っ赤な騎士の姿があった。

なんだこいつ王族だったのか……。礼を言わぬわけだ。

王族という者はどこの奴も皆同じか…、人に頭を下げる事ができぬとは…、

それだけでその者の器が知れると言う者。

ほー、皇太子の兄弟か…、なるほどな…。




あの男…、レガーナの皇太子だったのか………。

魔王のようなあの姿……、噂そのものだと身震いした。

レガーナの国王陛下がこの度の我が国の災難に皇太子とその側近を

我が国に向かわせたのが理由だと知り、流石大国やる事が違うと感心してしまった。

あんなに遠いのに三日で我が国に来るとは……、底知れぬ魔力に畏怖さえ感じる。

我が国の精鋭部隊の近衛がピリピリとしているのがわかる。



それから彼等三人は、我が国の魔獣退治の為に国内を転々とし力を貸してくれた。

意外と気さくな側近と無口で寡黙だが、静かな皇太子に視線が釘付けとなっていた。

彼等の案内役として随時行動を共にするようになっていくと、次第に打ち解け

今では気軽に会話もできるようになっていた。



そしてそんな彼等との間柄も急激に変わり今では私も三人とは昔からの

知り合いのように仲良くなっていた。


「クラリス、もう殆ど魔獣は退治したよね。はぁーあぁぁー。」


オールデンが疲れたように声をあげ最後に大きな欠伸をした。

それもそのはず、一日の休みも入れずにガツガツと魔獣退治に勤しんでいた。


「本当に何から何までありがとうございます。」


今では彼等にお礼も簡単に言えるようになっていた。


「それでは、私達もそろそろレガーナに戻るとしましょうか、デューク?」


ライナスが余計な事を言う。


「ああ、そうだな。明日ここを立つとする。」


あっさりと返事をする皇太子。


「クラリス、明日立つ前に街を案内してくれないか?」


私は皇太子の言葉に大きく頷いた。

皇太子の大きな手が私の頭をくしゃりと撫でていく。





父上に出立の挨拶を済ませた三人は、私の案内で街へと来ていた。

レガーナの城下は見た事もないが、我が国もそこそこの賑わいだと私は思う。

彼等は思い思いに店を眺めたり、お土産だと言い買い物をしていく。

人は見かけによらないと言うが、皇太子を見ていたらそう思ってしまう。

今まで見てきた彼とはまったく違う顔で城下を歩いている。

少しづつだが、何やら買い物もしている。土産なのかもしれない。

隣に並んでついていく。何を買っているのか興味があったから……。

私の事など気にもとめてないのか…、小走りでついていく。


購入していたのは、普通の品物だった。


タキーノの風景が描かれた絵画。

様々な焼き菓子。

二組のカップとソーサー。

大量の入浴剤と香油、これは女への土産だと直感した。

そして、可愛い飾りの髪飾りと同種のネックレス。

これが一番驚いた。焼けてくる程…優しい表情で選んでいるから…。

誰の為に買っているのかが気になる。



でも…、聞けなかった。





「遊びに行ってもいいか?」


私の問いに笑顔で返事がきた。


「勿論、歓迎するよ。」 


ライナスはいつも優しい、心が癒される。


「レガーナの美味いものを食わせてやる。」


オールデンはいつも楽しい、そして強い。


「ああ、構わぬ。」


皇太子はいつも素っ気無い、でも顔が笑ってるから安心する。




彼等は、その日のうちに我が国から去っていった。



私は淋しくて仕方なかった。





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