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願いが叶った女  作者: 花梨
49/56

№48

想いが通じた?と思ってしまったあの日が嘘だと思う今日この頃……。


あれから三日続けて早朝より押しかけられて大変な目にあったけど、

朝食だけ済んだら帰っていくので朝だけ濃密な雰囲気にやられっぱなしだった、

今ではあの濃厚甘甘駄々漏れな日々が嘘のように平穏な日々を送っていた。


ただ少し違うのは、一日置きにあっていた茶会がぱったりなくなった事。

そのお陰で毎日セイレンで充実した日々を過ごす事ができた。

結界の張り方から防御の仕方、自分の身を護る事が重点的に教えられている。

カッコよく言えばそうだけど、実際は違う。逃げる練習と避ける練習をしている。

色んな攻撃から逃げるのがメイン、容赦ないおじいちゃん達の攻撃から必死で逃げる。

もう何度死んだことか…、それでも最近ではたまに生き残れる事もある。

避けるはそのまま、ナイフだとか毒針、毒矢を避ける事、しかも優雅に…。

どんだけ大変な事か、優雅に逃げ避けるという事が…、マジで辛い。

相手に避けてると思わせずに何気なくよける事を要求されているから大変。

ホホホと笑いながらナイフをかわしたり毒針を間一髪でさける。

この人達の要求のレベルが高過ぎて私は毎日筋肉痛と戦っているというのに…。

おじいちゃん達は、老人をここまでこき使うとはと嘆かれている始末…。

それでも、たまに褒められると嬉しくてたまらないから単純だと思う。

そしてやっぱり皆が言うのは絶対に無闇に結界や攻撃をするなという事だった。

周りの誰かが必ずしてくれるので、本当に駄目だというまで自分の力を使うなと

口うるさく言われ続けている。殿下の幼少の頃の話しを聞いたから何となくわかる

物凄く危険な私の立場、それでも殿下は一国の皇太子だっから、皆が全力で護った。

今の私はただの異世界人。

行為的にみて、お父様やお兄様、ライナス位は護ってくれるかもしれないけど…、

だからと言って四六時中一緒に居るわけにもいかない。

そうなると、やっぱり隠し通すのが一番得策なんだと思ってしまう。



後宮に戻りお風呂に入り汗を流した私は、サラからとんでもない爆弾を落とされた。

私の静かな日々がまるで終わりを告げるように……。


「明日、ブレガ国のオルネア姫様よりお茶会への招待状が届きました。

如何なされますか?」


うぅ…、これって断ってもいいものだろうか……。


「正直…行きたくないです…。断ってもいいですか?」


私は駄目元と思いながらも口に出してみた…、サラがなんだか…怖いです…。


「無理でしょうね、行かないなどと気後れしたお言葉ユリア様らしくありません。」


簡単に言わないでよ……、あの姫様、見た目どんだけ怖いか知ってるでしょ…。

心の中で毒つきながらも口に出せない自分が悔しい……。

はぁぁと情けない息を吐き出した。


「ん……、わかりました……。行きます。」


「はい、それではそのように返事をします。

明日はローレンとバルバラが一緒に行きますので、楽しんできて下さい。」


楽しむ余裕なんかないっつーの…、人の気も知らないで……。

ジトッとした視線をサラに送るとフフンと鼻で笑われた…。くそぉぉ。




そして次の日、私は湯浴みと言う名のお風呂を堪能して衣裳部屋へと向かった。

そこにはバルバラとローレンが嬉しそうに鏡の前でキャキャッとはしゃぐ姿が……。


はい、もうお分かりですよね…、あの王妃様から送られていた衣装。

女児に大人気の衣装を着た二人が今か今かと私を待ち構えていた。


「サラ様からこれを着てもいいとのお許しが出ました。もう最高に嬉しいです。」


ローレンの本当に嬉しそうな顔と声……。

幸せそうな二人とは別次元の私は、どんよりと二人を眺めていた。

それからいそいそと二人に着替えをさせられた私……、テンションは急下降…。

鏡の中にはふざけまくった三人の姿、うん絶対喧嘩売ってるよね私達。

この前の水色のまだ見られる可愛い衣装とは違い、今日のはまさに牛。

あのホルスタイン顔負けの柄に頭には角までついてる。

この柄はこの世界でも動物なんだね…、そんな事を考えていた。

意外と細かい部分にまで凝ってあるのが凄い、しっぽも蹄もある。

そんで何故か手袋は蹄チックでも肉球つき…。

バルバラはそれでもちゃんと腰に剣を挿していているから凄い。

二人の衣装には流石に肉球はないとか思っていたけど、なんとっあったし…、

私のより幾分薄くて飾りではなく機能的なのがまた凄すぎ…。


そんなちょーふざけた私達三人は、あのちょー高飛車な姫様相手にこの姿。

これでいいのだろうかと内心、恐々だけど連れの二人は満面の笑み。

もう半ばあきらめ状態で姫様が待つ扉の前に立っていた。





ほらね…、私達の姿にめっちゃ引いてるし……。予想通りで笑えるよ…。

でも、もうここまできたら恥かくわけにはいかないもんね。

ふざけた格好だけど、ビシッと背筋を伸ばして優雅?に振舞ってみた。


「今日はお招きありがとうございます。とても楽しみにしていましたわ」


牛の姿なのに、めっちゃ気取って挨拶をした。

普段は使わないないグリンス様的な口調…、笑える…。

もう見た目ちゃかしているから、この際全部ちゃかしてやると肝が座った。

なんの肝かわかんないけど…。

どう見たってコントかなんかにしか見えないかも…、まあ…いいや…。



「っ……、私も楽しみにしておりましたわ…。」


嘘だっ、今の絶対嘘だ。でも…ある意味嫌な感じで楽しみにされていたかも…

そんな怖い事がよぎったけど、負けられないと笑顔を姫様に向けた。

なんだか怖いその微笑に心臓がきゅうとなる。あぁウザい…。


その後、棘のあるようなたわいもない会話を続けていた。

なんだかバカにされてる…、まあ間違いではないのでスルーしたけどね…。

大人の対応ってとこですかね。


お茶のお代わりにとやってきた、あの女官の一言があるまでは…。


「獣のような服を着て一国の姫様にお逢いされるとは、

異世界人の方のお考えは理解ができませんわ、あなた方もさぞ大変ですわね。」


そう言ってバルバラとローレンに労いとも取れるような事を言われた。

勿論少ししか離れてない私にもしっかりと聞こえるように。

その言葉に私も配慮が足らなかったと正直反省した、だよね…。

言われてみればそうだ、姫様の前に出れる格好ではない。

うん、それは私も認める。なんかシマッタとやらかした感が否めなかった。


「え?違いますよ、姫様とのお茶会が大切なのでこれを選んだんです。」


満面の笑みのバルバラのそんな言葉にローレンが同意の言葉を吐いていた。


「我が国では大人気でして、入手困難なんですよ、せっかく姫様のご招待、

少しでも我が国の事を知って頂きたくて選びました。

とっても可愛いでしょ、こんな素敵な服を着せて頂き私は幸せです。」


頬をほんのり染めを同じく笑顔のローレン、それとは対照的な苦い顔をした女官。


「なんて事…、そんな奇抜な格好…、あなた方は主に逆らえないのですね…。」


思いっきり気の毒そうな視線を二人に向け、

そして、ゆっくりと私に視線を移し眉間に皺を寄せた。

あぁ、言いたい事はよーーくわかりました。私が悪いと二人に言わせたいのね。


「いえいえ、そんな事言ってませんけど、今の聞いてましたか?」


うぁぁ、空気を読まないバルバラッ、いいのよっ、私は悪者でもっ。


「私達、喜んでこの服を着ています。欲しくても手には入らないものです。」


あぅぅ……、ローレン…、私を喜ばせてどうすんのよ……。


「こんな事を言わせてしまうなんて…あなた達の主は何を考えておいでなのか…」


めっちゃ可哀相な子を見るような目で二人をみないでくれない……。仕方ないか…。


「あの…、少しお話ししても宜しいですか?

………この世界にもコスプレがあるとは思ってもいませんでしたの。」


感慨深げに視線を遠くに向けた…。


「コスプレ? 何の事ですの?」


早速食いついてきたわね。申し訳ないけどここはハッキリと主として、

二人を護らせて頂きます。


「コスチュームプレーの略です。コスプレとはアニメやゲームなどの登場人物やキャラクターに扮する行為を指す。それらのジャンルの愛好者や同人サークルが集まるコミックマーケット、同人誌即売会を始めとする各種イベント、また、ビジュアル系バンドのライブ会場等で見かけられるのが多いですね」


不思議そうな顔で私を見ている姫様。だよね…。


「私の居た世界では、コスプレは世界共通語になる程普通になっていましたの、大人も子供も関係なく自分達が好きな服を着る。勿論こんな格好を認めない人も居ましたわ、それもまた自由なんですもの、言語が違ってもコスプレは共通語になる程浸透していたって事を言いたいのです。私が居た世界は総人口が七十億人以上でした。その世界で共通…、お分かりですか?誰にも咎められる事などないと言う事ですわ、この世界の皆様は勿論こんな細かい事などお気になさらないですわよね。」


可愛く首を傾げて問うてみた。


「っ…、ええ、も勿論ですわっ。」


ふふ…うろたえてる…。よしなんとかこの場は回避したかも…。

少しだけ安堵した私だった。ほんの少しだけね…。ここ肝心だからね。


だって…、私の思わぬ反論をくらい姫様の顔が険しくなったのを境に

この部屋の空気がピリピリしてきたから……。

私は別に構わないんだけど、意外や意外、ローレンがガッツリそれに

反応しちゃってるし……。そんなローレンにバルバラはニヤニヤ笑ってるし…。


そんな一触即発的なムードの中、またまた空気を読めない強ーい味方が乱入したから

どんだけ姫様に喧嘩を売ったかわからない気がする。

その強ーーい味方とは、サラとエリアス。

なんとっ、牛さんの格好で二人が私達を迎えに来たんだよね……。………。


もう嫌味な女官も流石にサラが牛さんだったからか、妙に納得しちゃってさ…、

『流行だそうですね。』とかなんとか笑顔で言ってるから蹴り飛ばしたくなったよね。



と……、



今日の報告を目の前の無駄にキラキラしたこの男に説明をしている私。


「似合ってる。」


たった一言感想を述べましたよ…。あーんなに長く話したのに……。


「可愛いな。」


うっっっ。


この状況でそれを言うのかっ……。

この世界の人間は空気を読むという事ができないのかと疑ってしまう。


あんたっ、周りを見てよっ。アビエル意外全員居るでしょっ。

羞恥心というものがないのかっ。



私……、自分で自分がわからなくなってきたかも……。

この男を本当に好きなんだろうか……。


この全身から溢れ出ている妖しげな妖気みたいな何かに毒されただけかも…。

うん、きっとそうに違いない……。

こんな空気読めない変態、普通は対象にならないでしょ…。


「サラ、これからも個人の茶会にはこの手の服をユリアに着せるように。」


なーーに勝手に決めてんのよっ。今日のでこりごりなんだからねっ。


「他の姫達には着こなせぬからな、きっと姫達はこぞってこれを入手するはず、

一度見てみたいものだ、絶対似合わぬその姿を、クッ、ハハハッ」


なんて意地が悪いの……。まあ…私も見てみたい気はするけどね…。


「そうだな…、リディアーヌは似合うかもしれぬな。」


!!! リディアーヌっ。誰? 


…………。……………。


あ…、一番若い姫様だ……。



……。


……。


……。




リディアーヌ……、呼び捨てだし……。



……。


……。


……。



べ…別に呼び捨てでも構わないよね……。


うん……、皇太子妃候補なんだしね……。




どんな顔だったっけ………。


……。


……。


……。



ん?……、



釣り目がちだったけど…、


めっちゃ可愛かったかも……。



リディアーヌ姫………。



あ…あは…はは…、


私が気にする事なんかないない。


うんうん、絶対ないしね。





リディアーヌ姫………か……。



目の前のキラキラな男は、何も気にした様子もなく、

楽しげにサラと『次はうさぎにしろ』と言っては笑っていた。




気づいたら、ふぅとため息を出す私がいた。






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