№46
なんて爽やかな朝なんだろう。
昨夜は嬉しくて眠れなかったが、
この目覚めの良さ、
幸せとは良いものだ。
ピチピチ、パチパチとかいう鳥の声とかが聞こえてきそうだ。
鳥ってなんて鳴くんだろ……。擬音語にするのが難しい…。
実際王宮に居る鳥は意外と大きく、ギャースギャースと可愛くない声で鳴く。
今の幸せな気持ちの私には不釣合いだ。
やっぱりピチピチとか、…ん?ピピピピ、チチチチッ、これだ。
やっと見つけたその鳴き声に心が穏やかになっていく。
フッ…、つい口元がニヤケてしまう。
だからか…ガラにもなくそんな事を考えてしまう。
「殿下、国王陛下が朝食をご一緒にと言われております。」
「承知した。」
今朝はユリアの所で食事をするから、断りにでも行くか。
「おはようございます。父上、母上。」
「おはよう、待っていたぞ。さあ座りなさい。」
「おはよう、デューク。」
とりあえず…座るか…、まだこんなに早朝だしな…。
「昨夜、南のタローキ国で山が二つほど消失したそうだ。
幸い人々が寄り付かぬ程の奥深き山で死傷者はいないそうだが、
原因がわからず我が国にも早朝から連絡が入ってな…。
なんとも不思議な事だ……。」
「…………。…………。」
「デュークは何か感じましたか?不穏な魔力や魔人の気配とか?」
「いえ、まったく。」
「そう…あなたが感じないということは…、お手上げね…。
タローキ国には、分からないと返事をしなくては………。」
そんな母上の言葉を聞いていた。……。
山か……、あれは……、山だったのか……。
確かに…手応えがあったような……、今度は砂漠にでもするか…。
簡単に浮かれる事もできぬとは……、不便だな…。
多少というか…、ほんの少しだけだったのにな…。
「デューク、ユリアは大丈夫かしら…。」
「そうであった。皇太子よ、昨日王妃から聞いたが、すまなかった。
なんと詫びていいのか、ユリアのこれからが…大変だと思うと…。
お前の気持ちを考えると……、本当にすまない事をした。」
「いえ、逆に私は助かりました。ユリアに昨夜、私と婚姻するように
言いましたので、返事はまだですが、断るなと言っておきましたので、
大丈夫です。あとは、後宮をどうするかだけです。」
「「 !!!!! 」」
「まあ、デューク、おめでとう、とうとう告白したのね。」
「はい。」////////////////
「待て、ちょっと待て、ユリアから返事はまだと言ったな?」
「はい、」
「断るなと言っておいたとも言ったな?」
「はい、」
「皇太子、お前まだ何も決まっては、ないではないかっ。」
「「 どうしてですか?」」
「親子揃って、我が道を行くとは…、危なくてたまらん。
きちんとユリアの返事を聞いてからだ、お前と婚姻すると本人の口から聞くまで
正式とは言えんではないかっ。」
「ハハハ、父上、口に出さずとも私には分かります。」
「お前……、まさか……、婚姻もすんでないのに……ユリアに…。」
「まあ、デューク、どうしましょう、孫ができるのかしら、」
「王妃よ、少し黙っていてくれないか、ややこしくなる。」
「いえ、まったく何も、無実です。」
「なーーんだ…、残念ですわ…。」
「王妃っ。」
「母上、早目になんとかします。待っていてください。」
「皇太子っ。」
「まあ、デューク、頑張ってね。」
「私も反対はしない、ユリアは王妃に負けぬ良い王妃に将来なるであろう。
でもだ、本人の気持ちが一番大事だと言う事を忘れるでない。良いな。」
ふぅぅぅ、王妃といい、皇太子といい…、まったく…。
………、…………。
………、…………。タラリ…。
「皇太子……、お前…昨夜……、山を消したであろうっ。」
「あ……。」
「…………。」
「…………。」
「わたくし…、何も聞かなかった事にしますわね…。」
「嬉しいからと言い、他国に迷惑をかけるなっ。」
「…………。 今度は北の…氷山にでもします…。」
「ならぬっ。」
「ちょっと喜びを表現しただけです。」
「ちょっとではないわっ。」
「魔の森に魔獣でも退治に行きましょうね、デューク楽しいわよ。」
「王妃よ、お前も少しは自重しなさい。」
「だって……、思い切り力を出したい時ってあるでしょ。」
「もう良い……。」
「さて、私はユリアと共に朝食を取るので失礼します。」
「あら、私も後で行くわ。」
「来なくていいです。邪魔しないで下さい。」
「ケチ…。」
「王妃よそう言うな、、ユリアに宜しく伝えてくれ、」
「はい。」
「陛下…、孫って……、楽しみですわね…。」
「うむ……、可愛いはず……。待ち遠しいな……。」
「王宮も、今以上に警備を強化しなくてはですわね。」
「ああ……、あの子が赤子の頃は…、大変だったな…。」
「ええ…、夜通しあの子を胸に抱き…、刺客から逃げ回りましたわ…。」
「私が囮となり、王妃とあの子を逃がし…、刺客と戦っていたのが、
昨日の事のようだ…。」
「毎日飽きもせず、よくあんなに来ていましたわね…。」
「アデルがあれから、間者に対して過敏になったな…。」
「そうでしたわね、闇部も陛下直下と将軍管轄と二つ作ったのも、
あれが原因でしたものね…。」
「父上が、北棟を建ててくれたおかげで、助かったようなものだ…。」
「そうですわね…、皆が疲れていましたわ…あの頃は……。」
「王妃だったから…、皇太子を安心して任せられた。お前は誰にも負けぬ。
それこそ、私と将軍、宰相、神官長や老体達がおんぶ紐であの子を
背負って逃げなくてはならなかった……。たまにしていたがな…。」
「ふふふ、私が睡眠を取る間は皆で交代で護ってくれていましたわね…。」
「命懸けの子育てだったな…。」
懐かしそうに目を細める二人。
「あの子は…、我が国の希望だったからな……。」
「ええ…、もう立派な希望になってくれましたわ。」
「タローキ国の山を吹っ飛ばす程にな……、あんなに遠いのに…信じられぬ。」
「いまさら…我が国を攻めいる者などいないでしょうね…。」
「ああ…、考えただけで恐ろしいわ…。一国丸々消失させてしまいそうだ。」
「早めに後宮をどうにかしなくては…、本当に大変な事になりかねないわね…。」
「……………、ユリアの返事次第か……。」
遠い目の二人であった。




