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願いが叶った女  作者: 花梨
45/56

№44

今日は色々な事を体験している。

自分を呪うって事もしてしまった……。



誰が言ったのかも今では覚えてないけど、

小さな判断ミスが後々大きな事を引き起こすってのが良く分かった気がする…。

今はまだ、後々とは言えない時期でも、既にその予兆がするのが怖い…。



隣を歩くこの男、確実に調子付いてる気がする……。

………この手は何? いったいこの手は何なのよっ。

歩きながら私の髪や頭に触ってくる………。

今更ながら思いっきり後悔してたりする……。

だから…とりあえずお願いしてみた。


「あの……殿下……、やっぱり…私……、自力でなんとか致しますっ。」



返事もしない、こいつ……。


聞こえない振りですか……、それとも耳が遠いとか……。

見た目だけ若くて実は年寄りだったりして……。



「私、死ぬ気で頑張りますので、先ほどの件は辞退させて頂きます。」


「却下。」


簡単な一言で私の言葉を遮る、言葉では遮っただけなのに……。

まわされた腕に、よりいっそう強く近くに引き寄せられ私の言葉を拒否していく。

強引だとは思っていたけど……、これって横暴では?

そんな不満を頭の中が占領していく。

離せと言いたいけど言えないもどかしさ…、その意味は………、それは恐怖心。

認めたくないけど、どこかでこの男を頼っている自分が嫌い。



だからと言って………



簡単に突き放されたらきっと………立ち直れない気がする。

もう…何もかもが………わからない……………。



後ろを振り向く勇気もないくせに、殿下の腕を振りほどく事もできないくせに…。




「悩むな、利用していると思えばいい……。」




欲しい言葉をくれるこの男が………むかつく。




「………誰を……信じていいのか………わからなくなった……。」




私は……この男に何を期待しているんだろ……。




「何も変わってはいない、ただ…私とユリアの服が揃っただけだ。」




それが……信じられない原因だって……言えなかった……。







………現金な私………、今は楽しいから何もかも忘れて癒され中。

連れてこられたのは、セイレンでも見かけていた羊とも山羊とも言えない

不思議なもふもふの動物が飼育されている場所だった。

三人のアデルは仕事も忘れて動物と戯れている。

その姿が微笑ましくて、私も絶賛もふもふの感触を堪能中。

私の隣ではアイラ様が、私に負けないくらい触りまくっている。

そして、グリンス様とガートルード様もちゃんと今は触ってその感触にご満悦。

グリンス様とガートルード様が何度も何度も手を差し伸べては、

戸惑い引っ込めるを繰り返していた、それはもうかなりの時間、

躊躇しそれでも触りたいを行ったり来たり、それを見かねたんだと思うけど殿下が、

『 見ていてイライラする 』と二人の手を強引にもふもふに突っ込んでしまった。

二人の叫び声と殿下の『うるさい』って声に私は笑いが止まらなかった。

私達の周りだけがいつも通りの空気だったから……。

楽しい時間はあっと言う間に過ぎ、お茶会の終わりをアデルが告げた。



私達は最初のサロンに戻ってきていた。

殿下はいつも一番にこの部屋を一人で出て行く。

オールデンとライナスが居る時は三人で…。

たった一枚のジジイ柄のドレスのせいで私の立ち位置が変わった。

後宮統括責任者のアデルが先頭を歩き、バルバラそして殿下と私、後ろにサラ。

皆の視線を浴びてこのサロンを出る事になるとは、今も信じられない。

当然のように前を歩くアデルとバルバラ、きっとサラも同じだと思うと…、

私だけが取り残されたようで、妙に足元が不安で堪らない。



中央棟の回廊が終わる頃殿下がサラに後で部屋に来ると告げその場から消えた。


いつもなら…図々しいあいつに開放されたと安心しているはずなのに…、

私を支えていた温もりが消え冷んやりとした空気が直に浸み込んでくるから…、

途端に心細くなる自分が情けない……。

今すぐにでも振り向きサラの腕を取りたくなるのは……認めたくないけど怖いせい…。

きっとサラ達は、この瞬間も私を護ろうと寸部の隙もなく神経を張り巡らせている。

一番安全なこの北棟でさえ……。


だから私も必死で歩く、顔を上げて胸を張り後ろのサラに私の全てを預けて…。



部屋に入ると目の前のバルバラが肩の力を抜くのがわかった。

振り向いたバラバラが笑って近づき私の頭を撫でて通り過ぎていく、

きっと今の私は情けない顔をしている。声をかけられなくて良かった。

ローレンの『お帰りなさい』が嬉しくて、たったそれだけで涙が出そうになる。



ドレスを着替える事もせず、ソファーに座りクッションに顔を埋めていた。

そんな私に誰も声をかけずそっとしといてくれるから今はそれに甘えていたい。

今だけ、今だけと何度も自分に言い聞かせていた。



「ユリア様、少しいいですか?今は…私しか居ません。」


サラの声に頷きクッションから顔を上げた。

涙を拭いてくれるタオルの感触が優しくて、また泣きそうになる。


「突然の事に驚かれたと思います。それは私達も同じです。

きっと……殿下もそうだと思います。」


「うぐっえぐっ……なんでなの……。うぇっ」


サラは一番恐れていた事にだけはならないようにと思うのであった。


「偶然でしょうか…、以前より魔力を封じるドレスの話は聞いていました。

殿下が着用なされている生地は特殊で、一枚の布地を作るのに日数がかかります。

ですから、ユリア様の生地の準備が間に合わない為、殿下の生地を用いると、

私も聞いてましたが、まさか、今日殿下が同じ物をお召しだとは思いもよらず、

それは王妃様も同じかと存じます。ユリア様がまだ魔術の取得が不十分な今、

間違ってもこんな状況をわざとお作りになるとは思えません。

国の重鎮の皆様が必死でユリア様の事を護り育てている今、

余計な負担をユリア様にかけるはずがありません。それだけは信じて下さい。」


一生懸命引きつる息を堪えて言葉にした。


「うぅぅっ、……いったい……誰を信じたらいいの……。」


今ここでユリアとこの国との信用を崩す訳にはいかない。

やっと心開き、この国をサラ達を信用するようになったユリア、

今回の事でユリアがこの国にサラ達に対して疑念を持とうとしている。

サラは必死だった。しかし、言葉が見つからない。


「事故としか言いようがありません。正直私も驚いています。

何を言っても弁解に聞こえるかもしれませんが、信じて下さい。」


「もう………わからなくなってきた……。グスッ…っ」


ユリアはまたクッションに顔を埋めた。





「いつまでそうしている。」



突然かけられた声に肩が跳ねる。

呆れたようなその声は殿下だ。そう言えば後で来るって言っていたと思い出した。


……、今は顔を上げられない。こんな顔見せたくない。見せられない…。



「まったく…。」


「ユリア様…、……。」


サラの私を気遣う声に悪いと思いながら…、それでもこんな顔みらせれない。


「少し話しをしないか?」


私もきちんと話しをしないといけないと思ってる……けど……。

顔を伏せたまま頷いた。


「サラ、ユリアを借りる。」


「殿下……。」頭を下げるサラ。


皇太子は泣いてるユリアをクッションごと抱えるとその場から消えた。






「あら、デューク、え? ……ユリア……どうしたの?」


王妃の私室に来た皇太子、抱えていたユリアをソファーに降ろした。

クッションを抱えたまま、顔を上げないユリアの姿に凍りつく王妃。


「あなた達……その服……、まさか茶会で……。」


「ええ、そのまさかですよ、揃いで参加してしまいました。」


「っ……。」


息を呑む王妃、口を押さえあまりにも最悪な偶然に声が出ない。

ユリアの姿に慌てて彼女の傍に行き膝を折り彼女を抱きしめた。


「ユリア……、ごめんなさい……、私のせいね……、

私が今朝このドレスを届けさせたばかりに……。

あぁ……、あなたに何て事をしてしまったのかしら………。

私が一番後宮と言う場所を知っていながら……、あぁ…ユリア……。」



王妃様…、その言葉を私は信じていいのですか?



私は…頑張ってクッションから顔を上げた。

涙と鼻水でたぶんぐちゃぐちゃになってるけど……今更どうする事もできない、

それよりも…私には確かめなければいけない事があるから……、

そうしないと……もう………誰も信じられないから……。

嗚咽がとまらない。


「うぅっ……王妃様……、失礼をお許し下さい……。」


「ええ…、構いません、言いたい事を我慢してはいけませんわ。」


「うぐっ…殿下が……今日この服を着る事……本当に知らなかった……、

それを……私は……信じてもいいのですか?」


私の頬に両手を添え、目と目を合わせてくる王妃様。


「ええ、本当です。この国に民に誓うわ。

私は王妃、国や民を裏切る事はしない、信じて頂戴…。」



「よ……良かった………。うぇぇ…。ぐすっ」



また…涙が出てくる。止めたくても無理……。

それだけ言うのが精一杯だった。嬉しくて嬉しくて何も言えなかった。

王妃様が私を抱きしめ小さな子供をあやすように背中をポンポンと叩く

その優しい振動に、鼻の奥がツーンとして涙がとまらない…。

私はしばらく王妃様に包まれていた。




「デューク……、茶会は……。」


「ええ、見事に勘違いされました。私達を見る目が今までとはまるで違う。」


「そうよね…、こんな偶然……、誰も信じないわよね……。

私が皆に説明するわ、そして殿下と同じ柄の物を皆に贈ります。

そしたら……、皆も少しは気持ちも違うでしょう……。」


「余計な事はしないで下さい。既に茶会にて私はユリアを護り、

これ見よがしに仲良く振る舞い、皆にそれが事実だと知らしめたばかりです。」


「デュークっ、あなたって人は……。」


「何故です、あの場ではそうするしかなかった。

私と揃いの服など……到底考えられぬ事がおこってしまったのですよ、

変に取り繕うより、私が全面的にユリアを護る方が安全。」


「……、それは……そうですが……。これから先……。」


「ええ、ユリアはきっと狙われるでしょう。誰よりも……。

それはこの私に正面切って喧嘩を売る事にもなります。

そうなれば、私もただ見ているだけでは済まされない、

私の手でどんな小さな事でも、売られた喧嘩、買いましょう。

勿論、母上にも力を貸して頂きます。

この偶然を引き起こした責任、きっちりと払って頂きます。」


殿下が王妃様に……止めなくちゃ……、こんなの…駄目…。


「殿下、王妃様に何て事を言うんですか、そんなの駄目です。」


「これは私と母上の問題、ユリアは気にしなくてもよい、」


「でも……、お姉様達もいるのに…王妃様は平等でないと……。」


「ユリア、ありがとう…、その気持ちはとても嬉しいわ、

デュークが言うのは、あなたを狙う相手に対して、

私に協力をと言っているのよ、だから心配しないで…。」


私は殿下の顔を見上げた。

ばつが悪そうな顔で横を向いている。


「ごめんなさいね、この子…こんな態度しか取れなくて…、

いつもこれで誤解されているのよ、本人もそこは分かっているのに…、

まったく直そうともせず…、こんな言い方ばかり、そこ…わかってあげて…。」


………………。…………。

うそ………。私……騙されてるかも……。


見上げた殿下はさっきよりも、もっとばつが悪そうにガシガシと頭を掻いていた。


……これって………、…………。

…………、今日は本当に……いろんな事がおきる…。


「余計な事は言わないで下さい。ったく…。

それより、協力はしてもらいますから、」


「はいはい、わかりました。

ユリア、私とデュークがいれば怖い者なしよ、安心してね、」



なんか…物凄く心強いような……不安なような…複雑…。

王妃様…良い人だけど……変わっている……。


でも…私の手を取る王妃様は信じたい。

ラールさんを護り抜いた王妃様やサラの事…、

……本当は…一番信用している自分がいる…。


だから……涙が止まらなかった…。

一番信用していた人達に…裏切られたと思ってしまったから……。



少し吹っ切れた私は……、やっぱり安心していた…。





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