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願いが叶った女  作者: 花梨
37/56

№36

緩む口元を無理やり引き締めた。

もう何度した事か…、侍女や傍付きの者達が近づく度に…。

クッ、それでも込み上げてくる笑みを抑える自分にまた笑いが漏れそうだ。


ユリアの魔力は想像以上のものだった。

あれでも全力は出してはいないはず……。

これが喜ばずにいられるか…。

心に安堵感が広がっていくのがわかる。


今まで、どんなに無力な女を娶る事になっても護らせればいいと思っていた。

鼻持ちならないプライドだけ高い女など、自分を護る術を持つはずもない。

そんな女達は、護られるのが当たり前だと思っている。

自分でどうにかしようなどとは考えもしない。

だから…、私も護りたいとも思わない。

仮に…、それが愛した女だったら…、その時は全力で護るだろうが…。


それが……、込み上げてくる程の笑いを押さえ込む事になろうとは…。

自分が一番驚いている。


やりたい事をさせられる。

行きたい所にも行かせられる。

きままに一人で自由に………。


そして、一番望んでいた事も………。

誰も傷つかせたくないという願い……。


放っておいても、隠居の老体達が身を護る術を教え込むだろう。

現在我が国最大の杞憂が、我が国を支える柱と生まれ変わるのも時間の問題。


私と二人で、民を国を導いていくのだから。

既に私の中では決定事項。本人への意思確認などしてもいない。


逃す気など毛頭ない。

逃れられるとも思わせない。

覚悟などまったくしておらぬようだが……、それもまた楽しい。



あれはまだ…、私の気持ちに気づいてもいない…。

今は…それで良い。

私にはまだ…、やらなければならない事がある。

物凄く面倒な事が……。

その事を考えてると気分が滅入ってくる…。正直面倒臭い。

さっさと国に帰ってくれないかと思ってしまう。


いっその事、さくっと国ごと潰してしまおうか……。

それが一番手っ取り早い。


そんな事をしても、誰も驚かないだろう。

あの国の皇太子なら…やりかねないと皆は簡単に受け入れるはず…。



そんな物騒な事を考えても所詮考えるだけ無駄だとわかってはいる。

あの可愛い姿を見ていたら、邪魔なものは排除したくなる。



「デューク、陛下と宰相大丈夫だったよ。」


「ん? ああ…わかった。オールデンお前も来い、ライナスもだ。」


「え?俺達も? 」


オールデンがニカッと笑う。


「そうだ、お前達二人にも見ておいてほしい。今後の為にも…。」


「りょーーかい。むふ…、お前がこんなに面倒見がいいとはな。

どういう心境の変化なんだか。」


「そうだな。」


「お前そこは否定しろよ、叔母上の為にも、命が幾つあっても足りなくなるだろ」


「心配ない。」


「はぁぁ?何の根拠でそんな事言うんだよ…。ったく…。」


「二人とも準備はいいか?行くぞ。」


既に消えた皇太子とオールデン、ライナスは一人大きな息を吐き出し、

二人を追った。






追いついた先でライナスは一瞬息を呑む。

陛下と父である宰相が来るのは知っていたが、将軍と神官長まで来ていた。

いつもの面子だと思えばそれまでだが、国の重鎮が揃いも揃って、

こんな場所まで来ているとは余程の事なのだと改めて思うのであった。



「親父、あっちは大丈夫なのか?俺、戻ろうか?」


オールデンが将軍へと心配そうに声をかける。


「ん? 大丈夫だ、アデルが戻ってくれた。お前はここに居ろ。」


その言葉にオールデンとライナスは自分達も呼ばれたのだと気づいた。

老体達が四人、部屋の中央に集まり魔力で結界に重圧をかけ補強していく

それを見ている三人。いつのまにか、統括責任者アデルの息子が隣に並んでいた。

ライナスはチラッと横目で確認しては、呼ばれたのかと目で問うと、

ニヤリと笑い頷くアデルに軽く頷き視線を戻した。


ユリアが呼ばれて結界でできた小部屋の真ん中に立つ。

彼女の姿に驚く三人、それは自分達が良く知る者の、

懐かしい服を着ているからだ。自然と顔を見合す三人。

一瞬たりとも見逃せないと直ぐに視線を彼女へと戻すのであった。


沈黙が室内に訪れた。誰もが彼女から視線を外さない。

目を閉じ魔力を集めている風な様子をじっと見ていた。

物音一つしない室内、妙な緊張感だけが漂っていた。



よし、イケル、さっきよりも魔力がスムーズに集まる。

ほら来た、身体が浮くような感覚、ギリギリまで粘って

後は上へと放り投げるだけ。と思った瞬間、急に増殖した魔力に、

バランスを崩した彼女は、その両手を思いっきり上から下へと

ふるスイングしてしまった。


轟くような地響きとともに揺れる床、それと同時に部屋全体が大きく揺れた。

室内なのに空気が振るえ、カーテンが勢い良くあおられていく。

マズイと思った瞬間、皇太子の魔力がその勢いを抑えて呑み込んだ。

それと同時に王妃が瞬時に彼女の傍へ行き肩を押さえたと同時に、

室内に静寂が戻ってきた。

今だ揺れるカーテンだけが、その凄さを語っていた。




驚いたように目を見開く国王達。

その様子にご満悦な老体達。

さあ喜べと言わんばかりに国王達を見ていた。






「ごめんなさい…、変な風に飛ばしてしまいました…。」


静寂を破ったのはユリアだった。


「バランスとれなくて……、すみません……。」


申し訳なさそうな声が皆に対してなのか傍にいる王妃へなのか、

わからないが、その後勢い良く頭を下げた。


それでもまだ目の前で起きた事に対して言葉が出ないのか、

彼女の魔力を初めて目の前で見せられた国王達は、立ち尽くすばかり。


「父上、ユリアが困っていますよ、何か言葉をかけてください。」


皇太子の声にハッと我に返った国王は、ゆっくりと彼女へと近づき、

優しい笑顔をユリアへと向けた。


「上出来だ。見事なものだった。その魔力大事に役立てなさい。

私は、ユリアを信じている、間違う事なく皆の教えを聞き、頑張りなさい。」


そう言って、優しく彼女の頭を撫でた国王。

ユリアは思いもしなかった優しい言葉に嬉しくなり笑顔で国王を見上げた。

国王が何を言いたいのか彼女も理解したようだ。


「はい、陛下の言葉を胸に刻み、間違う事なく一生懸命頑張ります。」


「はは、良い子じゃな。うんうん、頑張りなさい。楽しみにしておる。」


目尻がおもいっきり下がった国王と嬉しそうなユリア。

皆もまた嬉しそうに二人を見ていた。



皆が一息ついたとこで神官長が彼女に近づき声をかけた。


「少し休憩した方が良い、座ってゆっくり休みなさい。」


そう言って彼女の背中に手を当てた。瞬時に倒れこむユリア、

そんな彼女をわかっていたように抱える神官長、

部屋の隅にあるソファーへと彼女を横たえた。


あれだけの魔力を初心者のユリアが二回も放出させたのだから、

勿論彼女は疲れている。気が張っているからか、平気そうに見えるが、

本来なら立ってるのも精一杯な状況。身体は休息を望んでいるはず、

でも研ぎ澄まされた神経がそう簡単には、ほぐれてはくれない。

神官長は彼女を意図的に眠らせたのであった。


宰相が神官長に礼を言う。


「子供のように軽い、可愛いな…。我が娘もこの子を妹のように、

可愛いと言っていた…、宰相、わしにこの子くれないか?

お前のとこは三つ子がおるではないか、娘も妹ができたら喜ぶ。」


「いや…ユリアは…、私の妹で…、父が…許すとは思えない。

それに…私も…この子が可愛い…。我が家には女の子が居ない…。」


「冗談だ、ただ言ってみただけだ…。お前…少し欲張りすぎだぞ…。」


「おいおい、神官長、お前本心だろ、こえーー、絶対本心だこいつ。

さらっと言ってるけど、本気で娘にしたいと思ってるぞ、宰相。」


将軍が横から会話に入ってきた。


「オールデンは可愛げもないし、我が娘は逞し過ぎる、戦士のようだ。

気持ち的には勿論、娘は可愛い、美しい容貌も申し分ない、

でも騎士なんだよな、全身から殺気が湧き出ておる、隙がない…。

それに引き換え、このお嬢ちゃんは、可愛いのーー、

小さくて、ちょんもりしていて……。よし、ウサギの服でも贈るか…。

きっと可愛いぞ、似合いすぎるな。」


「ウサギ? おおー、最近女児に流行のあれか?うんうん、わかるっ、

絶対似合う。我が娘には到底似合いそうにもないが…、この子は似合う。」


「ちょっと、二人とも何を考えているのですか?私の妹ですからね。」


「一人占めするな、心が狭いなお前…。」


「そうですよ、こんなに可愛いのに一人占めはないでしょう。」


そこに王妃が一言。


「ふふふ、残念ね皆様、ウサギさんは私が既にユリアに贈ってるわ。」


「ええー、王妃様…流石と言うか…、で、色は何色ですか?」将軍の問いに、


「ピンクよ。ウサギのもふもふした耳に丸いしっぽ。手袋には肉球もあるわ」


想像した三人、目尻が下がる。


「それでは私は白を贈りましょう。」神官長が即答。


「そんじゃ、俺は黒な。」将軍がすかさず言う。


「ならば、私は、薄い水色にしましょうか…。」宰相が負けじと言う。


「王妃よ、金色を準備しなさい。」国王陛下が参加した。


「「 陛下!!! 」」 


「なんだ?私も混ぜてくれても良いだろう。

お前達、何か忘れておろう、ユリアは皇太子の正妃候補、

フフッ、将来、私の娘になるかもしれぬ。」


「レス、一人占めはいかんぞ、オールデンと恋仲になれば我が家の嫁だ。」


立場を対等にしたいのか、将軍が国王をレスと愛称で呼ぶ。


「そうだ、ライナスも居るし三つ子もそのうち成人する。」


「親族婚はいかんぞ、なにやら妖しいイメージになるだろ。」


将軍の言葉に宰相が反論する。


「関係ない、血など繋がってはいない。そしたら、兄として安心だしな。」


「宰相、兄という立場がありながら、父という立場まで手に入れる気ですか。」


神官長が忌々しげに宰相に言葉を吐く。


「あなた達、選ぶのはユリアよ、いったい…誰を選ぶのかしらね…。」


王妃が眠るユリアの髪を梳く。


「そう言えば……、アデルも何気に近くに居るわ…。後宮担当ですものね。」


「「……………。」」


皆は抜け目ない統括責任者のアデルを思い浮かべていた。

珍しく最近あの子にだけ優しいあの男、王妃の言葉に嫌な予感がする。


「でも……、デュークが本気を出したら……。」


「「………………。」」


魔王のように不敵に笑う皇太子が瞬時に思い浮かんでくる。

耳に『アーーハッハッハッハッ』とか『ハハハハハハハハハハハーッ』とか、

本人から発せられてはいないのに、嫌な笑い声が木霊していく。


「神官長、ユリアに悪い悪魔が取り付かないように祈ってくれ。」


宰相の言葉に将軍が、


「悪魔レベルじゃないだろ…、魔王じゃないのか?」


「まあ素敵じゃない、魔王は誰にも負けないわ。

でも……、天使にだけは優しいかもよ……。」


「まったく想像もつかん…、…悔しいが外野は見守るだけだな…。」


将軍の言葉に神官長が、


「陛下の時もそうだしてね、一番予想もしない相手でしたからね。」


その言葉に国王が、


「はは…、さてそろそろ、本題に入るか、老体達が待ちくたびれておる。」



雑談はここまでと会話をざっくりと切った国王。

皆は用意されたテーブルへと向かった。

統括責任者のアデルだけがこの場にいないが、

面子は揃ったと言っても可笑しくはない状況だった。





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