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願いが叶った女  作者: 花梨
33/56

№32

私は朝からいつもより綺麗なドレスを着せられていた。

今日の練習は休みだと言われてがっくりしていたけど、

その変わり、宰相さんが私に話しがあると言われた。

宰相さんは私のお兄さんになった人…。

取っ付きにくい人だと思っていたけど、お父様を見たら、

顔は怖いけどとっても優しいので似ていたらいいなと思った。





「ユリア様、お久しぶりです。元気そうでなによりです。」


いきなりの超他人的な挨拶……それはないだろ……。


「あの…、お兄様になられましたので、様はやめてください。」


一応抗議してみた。やんわりと…。


「あはは、そうですね。それでは改めて、

ユリア、我がオードノギュー家へようこそ。私はとっても嬉しい。」


やればできるじゃない…、意外とフレンドリーなのに驚きっ…。


「ありがとうございます。私も嬉しいです。家族になれて…。」


私はそれから、お兄様に明日からの練習の事や場所の事、

そして、私の魔力について説明をうけた。

正直言って、信じられない…、その事もお兄様に伝えた。

昨日の事は自分でもわからなかった…。何が起きたのかさっぱり…。

魔力を集中しようと頑張ったのは本当だけど…。

自分が魔力を出したのかと聞かれたら…わからない…。

まったく自覚なし……。


「ユリア、今日は君を我が家へ招待しようと思っている。

陛下の許しも出たから安心していいよ。

それにセイレンみたいに離れてないけど、我が家へ一緒に魔力を使い、

移動してみよう、明日の予行練習にね。

私の家族は皆、ユリアが来るのを楽しみに待っている。」


私は突然の事にびっくりした。そしてとっても嬉しかった。

いつのまにか、サラがお土産を用意してくれていた。ありがたや~~

王城の料理長特性のパンケーキ。

これは中々手には入らない一品らしくて、これが一番喜ばれると言われた。

うん、これは本当に美味しい。


瞬間移動は皇太子の拉致で経験済みだけど…、なんとなく言いそびれた…。

しっかり掴まってと言われ、お兄様の腕にしがみついた。

私はビュンって本当に一瞬で、気づいたら大きなお屋敷の玄関に立っていた。

玄関にはお父様とはじめて会うお母様、

それと…びっくりしたけど三つ子の少年?青年?

こっちの世界では、この大きさだと少年なのかな、私を待っていた。

可愛い、大きいけど、とにかく三つ子が可愛い。

玄関で熱烈な歓迎を受けてしまった。家族ていいな…。

何故かお父様とお母様、三つ子とはその場で別れて、

私はお兄様に連れられてある部屋の前まで来ていた。


「ユリア、私の妻が待っている。女同士、ゆっくり話しておいで…。」


「え? お兄様は一緒にこないのですか?」


「妻が、どうしてもユリアと二人で話しをしたいと言ってね。」


「はい、わかりました…。なんか緊張してきた…。」


「大丈夫、妻はユリアの味方だよ、それに一番の理解者だよ、安心して…。」


私はいきなりの事でなんだろうと不安になったけど、お兄さんを信じて、

ゆっくりと扉を開けて部屋の中へ入って行った。



部屋の中に入った私は、驚いて声も出なかった。

そんな私に近づいてきたお兄さんの奥さん…。

私より背が低くて、私のような肌の色。

物凄く見慣れた背格好に顔……。これって……、まさか…。

心臓がバクバク鳴りだした。息をするのも忘れそうだった。


「はじめまして、須藤ゆりあさん。逢えてとっても嬉しいわ。

カメハメハー、昨日したんだってね。笑っちゃった。

やっぱり掛け声はカメハメハーよね。私はゴムゴムのーーーっ、

とかも使ったわ。あはは、驚いたでしょ、私は正真正銘の日本人よ。」


私は、いつのまにか声を出して泣いていた。

子供のように泣いていた。嬉しくて嬉しくて本当に嬉しくて泣いた。

この世界に来て、サラ達には申し訳ないけど…今日が一番嬉しい。


「ユリア…、辛かったわね…。心細かったでしょ…。

もっと早くに私が決断してれば良かったわ…。ごめんなさい…。

本当は…すぐにでも会いに行って、安心させてあげたかった…、

でも……あなたは……、皇太子妃候補…、

これからのあなたの人生を邪魔してしまいそうで…

意気地なしでごめんね…。

家族になれて良かった…、ずっとこれからは一緒よ…。」



私とお兄さんの奥さんは、抱き合って二人で泣いた。

お互い、『嬉しい』、『良かった』と何回言ったかわからない。

落ち着いて顔を見合わせたら、二人とも目が腫れて酷かった。



「私がこの世界に来たのは…、今から27年前よ…。

私のあっちでの生まれた年は、平成元年…。

平成21年にこっちの世界にやってきたわ…。丁度二十歳…。

名前は、鈴木薇薇瑠……。」


「え?嘘……、……まって……私と6歳しか……かわんない…?。

てか、ららる? ららる? 本名なんですか?」


「え?本当? 今年は何年なの?

ちょっと待って、名前後で言うから、まず年齢が気になっちゃう。」


「うん、平成25年…。……………、

 ………………、…………。

ええーー、って事は…出てきた時間?年?…が違う…?」


「待って……なんか…衝撃過ぎて……、混乱してきた……、

…………、…………6歳しか違わないのね……。

……私って随分昔に出てきたみたい…。」


「……なんか…びっくりです。」


私達は笑いあった。お互い実際はあんまり年齢かわらないのに…、

今の見た目はお母さんと娘だったから…。

でもこのららるさん、とっても綺麗、同じ日本人として…、

なんか…肩身が狭い……。


「あっ、そうそう、名前は鈴木ららるよ、呼びにくいでしょ…。

これで随分寂しい思いをしたわ…、友達が呼びにくいってだけでね、

鈴木って呼ぶのよ…。せっかく最先端な名前なのに…鈴木よ、鈴木…。

懐かしいな~~~…、鈴木ららる……久し振りに口にした自分の名前……。」


最先端………。


「確かに…、ららる…、呼びにくいです。」


「そうなの、あっ、ここではラールっていうのよ、可愛いでしょ。」


「うん、ラール、呼びやすいし可愛いです。」


「私ね…、この世界に来た時、ティナと一番最初に出会ったの…。

あっ、ティナって王妃の事よ。当時は後宮に居て王妃じゃなかった…、

ティナもユリアと同じよ、皇太子妃候補だったわ、

でもユリアと違うのは、ティナは一生後宮から出られない側室だったからね。

ティナが…私を全力で護ってくれたわ…。誰にもばれないように…。

ふふ、懐かしい……。そして…サラもよ…。」


「え?サラも…?」


「今はユリアを護ってくれているのでしょ?

当時、サラはティナの侍女だったの。楽しかったわ…、でもね、

物凄く綱渡り的な生活よ…、私の存在は秘密だっから…、二人は必死よ。

ほら、あの二人とてつもなく凄いからね、特にティナ、今もだけど、

部屋に結界勝手に張りまくって、随分女官長に怒られていたわ…。

それにね、皇太子に逢って気に入られたら困るって、

ティナが、髪はボサボサにわざとして、ドレスは陰気なねずみ色、

顔にそばかすを筆で書くのよ、もう可笑しくって…、

ティナとサラが居たから…、気が変になりそうな時でも大丈夫だったの…、

なんで自分だけがこんな辛い想いをしなくちゃならないのって…

八つ当たりみたいに二人に酷い事も言ったわ……。

二人のせいじゃないのに…、それもわかっているのに…。」


ラールさんは懐かしそうにその当時の話しをしてくれた。

初めてここに来た時は、何がなんだかわからずに、

頭がおかしくなりそうだったって…。私と同じ……。


「あれは…、家に帰る途中、気づいたらまったく知らない場所に居たの…。

一番驚いたのは、大きな鳥…。バッサバッサ羽根をならして飛んでいたわ、

食べられるかと思った…。怖くて怖くて、何処をどう歩いたかもわからない…、

歩き疲れて人目につかない場所に隠れていたの…。

それが…後宮の庭だったみたい…。

後宮の庭の隅で震えていたら、いきなりティナがやってきて、

『ここは寒いでしょ、外に居ては風邪を引くわ』とかなんとか言って、

あの一見細い腕に、ガシッと抱えられてヒュンって気づいたら部屋の中よ…。

そして同じような大きなサラに私をヒョイって渡して、

湯浴みと着替えお願いって、偉そうに言うから、ますます驚いて…。

私ね…、最初はティナが怖くて…、サラもよ…。

物凄く大きくて、それに綺麗で、魔法使いみたいに何でもできちゃうし…、

唯一私を助けてくれる二人なのに…怖かった……。」


その後もラールさんは私に色々と話しをしてくれた。

ずーと口も聞かず、無視続けて、口はきかないのに、

毎日泣き喚いて二人を困らせたって…。

それでも王妃様とサラはそんなラールさんに対して怒ったりせずに、

困ったように笑っていたって……。


「ユリア? やだー、また泣いてるの?」


「そう言うラールさんも泣いてますよ…。」


「あはは…、私達泣きすぎね…。でも…ティナに一番に会えて良かった。」


私はその言葉に頷いた。

王妃様、物凄く変わっているけど、とっても優しいのは私にもわかる。


「何か私に聞きたい事はない?」


ラールさんの言葉に浮かんできたのは…言っていいのか悩んだ…。


「……わかってるわ…、元の世界に戻れるかって事でしょ…。」


びっくりしてラールさんの顔を見たけど、哀しそうに笑っていたので…、

聞かなくてもなんとなくこたえはわかった……。


「私がいまだにここに居るのがこたえかな…。

でもね…、今の私は戻れても…戻らないわ……、

ふふ…、だって…、窓の外に居るでしょ…。可愛いのが…。」


嬉しそうに微笑むラールさん、

窓の外から三つ子がひょこひょこ顔を覗かせていた。


「一番は…、優しい旦那様かな……、かっこいい長男もね、

お義父様、お義母様、ティナもサラも大切な家族が居るから…。

私の中では二人とも、ティナとサラは家族なの、

ティナは私の後見人でもあるのよ…、

だから本当にお姉さんになったわ…。

それにね…、私の事情を聞いても…、お父様もお母様も何も言わず…、

受け入れてくれたの…、本当の娘のように大事にしてもらってる…感謝しかない…。

私は皆が大好き、この世界にきて…良かったって思えるようになった…。

ちょっと持ち上げすぎたかしら…、ふふふ。

さてと…、悪趣味な事をしている人達のとこに行きましょうね。

心配でたまらないって顔しているわよきっと。」


「悪趣味? 」


そんな私の問いにラールさんはクスクス笑うだけ、

そして私の手を引いて部屋を出た。

連れていかれた場所は、すっごく広くて立派な部屋だった。



「あなた…、お義父様、お義母様まで……。

……ね、ユリア、とっても素敵な家族でしょ?

ここから離れる理由なんかないわ。

でもっ勝手に話しを聞くのは許しませんっ。

今回だけは大目にみるけど、二度としないで下さいね。」



悪趣味だと言われた人達は、

三人とも目を真っ赤に腫らし、泣いたんだと誰が見てもわかるのに、

三人がとても嬉しそうなのが印象的だった…。

優しい家族に囲まれてラールさんが幸せだったから、

私は自分の事のように嬉しかった。



私はその後、三つ子とたっぷり遊んだ、

軽々と私を抱えて走る三つ子…。

木の上に登ったり……、飛び移ったり、飛び降りたり…。

死ぬかと思った…。

おやつにパンケーキも食べた。

パンケーキにラールさんのテンションが上がったのにはびっくりした。

サラはラールさんの為に用意したのかなって思った。


なんとっ、夕飯まで一緒に食べた。

もう、今日は幸せ過ぎかも、だって肉じゃがもどきが出てきたし!!!

思わずうるうるとなったら、皆もうるうるになって困ってしまった…。



帰りは後宮から迎えに来てくれるって聞いて、

きっとサラが来るんだと思った。

サラもラールさんに久しぶりに会えると思うと私まで嬉しくなる。

でも…、まだ帰りたくない。

もっともっと沢山話したい事があるから…。


皆と楽しくおしゃべをしていたら執事さんが慌ててやってきた。

お父様と執事さんがなにやら話している。


「ユリア、迎えが来たようだ…、来なくていいのにな…。」


そう言ってお父様が立ち上がったので、私も席を立った。

急に寂しくなってきた…。

その時…、あの忌々しい声が聞こえてきた。



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