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願いが叶った女  作者: 花梨
32/56

№31

わしは祈るような気持ちで一心に魔力を放出した。

王妃様も同じ気持ちなのか、ユリアの為に……ありがたい。


まだ駄目だ……。

今は……、まだ……、この力知られてはならぬっ。



「オードノギュー、来るぞっ。」



王妃様が叫んだ。

わしは頷き、王妃様に従うように魔力を閉じた。



呆然としているユリアに王妃様が近づき、


「ユリア、何を聞かれても、そのまま、わからないって言えばいいのよ。」


それだけ仰られた。そしてわしには…、


「オードノギュー、気づいた者はたぶん……見当はつくわね。

その他の者達には、意見の食い違いで私達が喧嘩をした事にしましょう。」


その言葉にわしは頷く事しかできなかった。


「では、結界を解くわよ。ユリア、さっきのお願いね。」


ユリアはコクコクと首を縦に振り、わかったと言っている。

さてと…、どこまでできるか…、やるだけやってみる事にするか…。

わしは、覚悟を決めた。




王妃様が結界を解くと同時にわらわらと室内に護衛の騎士達が入ってきた。

その中には、ユリアの護衛もいる、勿論サラがユリアの所に直ぐにやってきた。

それと…来るとは思っていたが…、

錚々たる顔ぶれに頭が痛くなってきた……。



「何事だ王妃よ、それにオードノギューもだ。

皆が心配して寄ってきておる。外は野次馬で溢れておるぞ…。」



陛下のその言葉で、貴族達も集まっている事がわかった。

有難い…、何かを察して下さったようだ。

余計な事は話すなと理解した。



「ちょっとした意見の食い違いですわ。」


「ほう、ちょっとした食い違いでこれか?」


王妃様がわしを見たので、わしは陛下と王妃様の会話へ入る。


「申し訳ございません陛下、私が大人げなく騒ぎ立ててしまいました。」


「オードノギュー、お前だけではあるまい、王妃も十分大人だ。」


「この頑固者が、今時のファッションに理解がないからですわ。」


わしは、申し訳なかったが、王妃様の売り言葉を買う事にした。

内容は不満だが、ユリアに魔術を教えている事、知られる訳にはいかない。


「王妃様たるお方が情けない、家臣にしめしがつきませぬ。」


「あら、嫌ですわ、時代遅れの公爵に言われたくはありません。」


「なんですとっ、私が時代遅れと申されるのか?」


その後もわしと王妃様は馬鹿げた言い合いを続けた……。

そんな時、わしらに聞こえるように遠くで将軍の声がした。


「ほらほら、皆も仕事に戻りなさい。いつまでここに居るんだっ。

聞こえぬのか? 戻れと言っておるだろうがーーーっ。」


将軍の一喝したような大きな声の後、

皆がここから立ち去る足音とざわめきが遠ざかる。

その後、一切の音が聞こえなくなった。将軍が結界を張ったようだ。

わしはおもわず、ほう、と一息ついてしまった。



わしはユリアに近づいた。そして微笑んだ。


「ユリアや、今日の練習はここまで、続きは明日な、

それとだ、わしが居ない所で一人で練習してはならない。良いな。

この約束が守れぬようなら、ユリアには魔術は教えられない。」


「はい、わかりました。約束必ず守ります。」


「うむ、良い子じゃ。それと…、ユリアはその服、よく似合っておる。」


わしのその言葉に嬉しそうに頬を染めるユリアが可愛い。

思わず頭をよしよしと撫でてしまった。実に可愛いっ。


どさくさに将軍がユリアの頭を撫でようとしているので、

わしはその手をはたいてやった。

その横で陛下が手を引っ込めているのが見えた……。陛下……。


わしはサラにも念を押して頼み、ユリア達を見送った。

……、さて…これからが大変だ…。


ざっと見渡したら、陛下、皇太子、将軍、神官長、それに…我が息子の宰相。

それと…皇太子付きの孫のライナスと将軍の息子のオールデン。

いつもの顔ぶれに笑いそうになる。


わしはこの際だから言わせてもらった。


「アデルとその長男も気づいているだろうな……。」


わしのその言葉に


「はい、オードノギュー公爵、既に居ます。」


どっから入ってきたのか、わしの前に姿を現しよった。



この国では昔から長男にのみ、その強大な魔力が受け継がれてきた。

その為、国の重鎮である宰相と将軍、神官長は代々同じ家系が引き継いでいた。

勿論、アデル達もそうである。

ただし、まれに神官長のように跡継ぎがいない時代もある。



「場所を移す、私の部屋に良いな。」



陛下の言葉にその場に居た者達が瞬時に消えた。





「オードノギュー、いったい何があった。」


陛下の問いに、わしは全てを話した。

ユリアが口にした言葉に驚いた事と、

その後、ユリアが魔力を発した事。

そのユリアの魔力を誤魔化す為に、

王妃様とともに自分達の魔力を放出させた事。

陛下がそのユリアの魔力について問われた。


「あれは…一部か?それとも…全力か?」


わからないとこたえた。一瞬の事で正直わしにもわからなかった。


「わたくしも…わかりませんでした…。

あれが…ユリアにとって…どの位の魔力なのかは…。

私も公爵も、ユリアの魔力に合わせた量を放出するのが精一杯でした…。」


王妃の言葉に国王が、


「その事を責めているのではない、二人の対応は見事であった。

特に王妃よ、よくぞあの場に居合わせた。

お前があの場に居なかったらと思うと…。もっと面倒な事になっておった。」


陛下の言葉にわしも怖くなった。

わし一人では、ここまでスムーズに誤魔化せなかった。


「そうですね、後宮に入った姫達の国の者達が、

まだ少しは王城に残っている…。

各国にとって強大な魔力保持者は…、それだけでも邪魔な存在、

ましてやユリアはまだ上手くそれを使いこなせないとくれば…、

早目に何とかしたいとやっきになるはず…。」


皇太子の言う事はもっともだった。

誰もが否定はしない。


「宰相、この王城に他国の使者達などは、どの位いる?」


「はい、殿下、ざっと見積もっても…50人位は居るかと…。

毎日入れ替わりにやって来るので、帰国したと思っていても王城にて

休憩等していたら、また、その逆もありえます。

その人数把握には少し時間がかかるかと…。

客人に開放しているサロンや、同じく開放している王庭などありますので…。」


宰相の言葉に将軍が


「いや…もっと居るな…。商人達も入れたらな…。

商人とは名ばかりで、密偵者かもしれぬ。」


その言葉にアデルが、


「そうなると…、各国の間者も人数に入りますね。

適当に泳がせてますが、この際全員牢へいれましょうか?

逃げられてからでは、他国にばれてしまいましょう。

将軍、そちらのリストと私のリスト照らし合わせている暇はないですね。

とにかく、全員捕まえるのが先決でしょう。

本来なら、泳がせて国を突き止めたいとこですが、

あの者達の口を割らせるのは…かなり困難かと……。」


「アデル、突き止めるのはやはり無理か…。」


「将軍もそこはわかっておいででしょう。

闇の者達はどこで誰に接触するか見当もつきませぬ。

一度王城から出してしまえば、国は突き止めても…、

情報漏洩は止められない。ユリア様の魔力はきっと…他国に知れます。」


「ふっ、アデルよ、お前普段とは違うな、どういう心境の変化だ?」


「将軍、今の私は、後宮統括責任者ですよ。

ユリア様は私が担当している北棟の主、当然の事です。」


表情も変えずに言うアデル、そんなアデルでも一同は何故か安心した。

このアデルという男、本来はこんなに優しい男ではない。

仕事に忠実で、闇部という属柄だからか、その判断は冷たい。

目的の為なら、多少の犠牲は厭わないのが普通であった。

ある意味一番怖い男である。


「では、間者の件、他に異論はないな?

ないなら早速動いてくれ、一応生かしておくように、良いな。」


国王の言葉にアデルの息子とオールデンがその場から消えた。


「それでは私は、その者達の尋問役を致しましょう。

生きているうちに行わないと、尋問はできませんので、

アデル、何を尋問すればよろしいですか?」


神官長の言葉に、アデルは


「国の名と、目的、それと誰に頼まれたかをお願い致します。」


「承知した、他に何か私がお役に立てる事があればお呼び下さい。」


神官長がその場から消えた。

尋問で神官長の右に出る者はいない。

ただし、国王と皇太子が尋問を今までした事がないのも事実。

二人が出てこなくても神官長で事足りるという事である。



「さて、これからどうする。まずはユリア嬢の事だな…。

とにかく早急に魔力の量を調べる必要がある。

アデルの報告でもあった、魔力の量がわからないと言うのも…、

何か関係しているのかもしれんな……。」


陛下の言葉に皇太子が


「調べるにしても、場所は何処にしますか?

もし…私達の誰よりも強力な魔力の場合…結界が持つかどうか……。」


誰もが言葉を失くした。

そんな時王妃がひらめいたように話しだした。


「あそこは……、アデルの領地はどうかしら、ちょっと遠いですが、

移動魔術を使えばなんなく行けるでしょう。それにあそこには、

アデル達が訓練する特殊な施設がありますわ、あの施設はかなり強固、

そこに私と皇太子、それに公爵の結界を加えて補強すればどうかしら?」


「王妃よ…、お前いつ行った、そこに…。」


「んー…、忘れましたわ…。

今はそんな細かい事言ってる場合ではないですわ陛下。」


はぁと息を吐く国王、その後、気を取り直したように言葉を続けた。


「アデル、お前はどう思う。」


「はい、王妃様の言い分確かかと、それにあの場でユリア様には、

訓練も同時にして頂いていいかと思います。

これは私の個人的意見ですが、この際、隠居されている老体殿達を引っ張り出し、

ユリア様にご教授いただいては、それにその方達の魔力、いまだ健在、

結界の補強も随時できます。今日拝見したオードノギュー公爵の魔力、

遊ばせておくには勿体無いと思いました。」


「まあ、それは良い考えですわ。将軍、お父上を引っ張り出して頂戴。」


「はい、承知いたしました。」苦笑いの将軍。


将軍の言葉を聞き、国王が皆に言う。


「アデルよ、私も賛成だ。早速それで準備をするように、良いな。

それとだ、この事…、サラ達にはなんと伝える。

私としては…、ユリア嬢の傍付の者達、信頼できると信じておる。

隠さず、事実を伝えて良いと思うのだが、皆はどう思う?」


その場の全員が賛成をした。


ユリアは後宮より真っ直ぐアデルの領地セイレンへと向かう事となる。

セイレンへの移動は傍付の者達には遠すぎて無理な為、

随時行動を共にする誰かがユリアの送り迎えをする事になった。

膨大な魔力を保持している彼等だからできる事である。

移動魔方陣を、後宮内に設置する事も協議されたが、

それはかなり危険と判断され、誰もが賛成とは言い切れなかった。

秘密裏に事を運ぶ為にも、身体一つで移動するのが一番安全だからである。

今後、ユリアが参加をする後宮での細かい行事には、その都度戻り参加をし、

今回の事、決してばれぬように細心の注意をする事と決まった。


ユリアや隠居達の世話は、アデル家の使用人達に任せられた。



「ユリアへの説明は私がする。」


皇太子の言葉、陛下が即座に却下した。


「ユリア嬢への説明は、今回は宰相に頼む、

サラ達には王妃とアデル二人同席にてする事、良いな。

明日説明をし、明後日にセイレンへと行けるよう準備する事。

皇太子よ、お前には別に頼みたい事がある良いな、

ただし、明後日は王妃とともにセイレンへと行き、

ユリア嬢の魔力確かめてきなさい。

お前と王妃、それに隠居の者達が居れば万が一、魔力が暴走しても、

対応できるであろう。頼んだぞ。」




ユリアが知らないところで、着々と進んでいくのであった。




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