№26
後宮内は騒がしいみたいだけど、私が居る場所にはその賑わいも届いてこない。
その方がいい。私にはやるべき事があるから……。
私は黙々と本を読んでいた。
とにかく、ここで生き抜くために、やらなければいけない。
それにしばらく部屋から出ないと決めたから…。
元々あまり出歩いてなかったし、寂しくもなかった。
今、姫様達のお引越しがあってるんだって、
全員が今日ここに着いて、一斉に荷物を入れてるって聞いた。
きっと、煌びやかな衣装とかが運び込まれているんだと思った。
皇太子の目に留まる為に…。
「ユリア様、ちょっと宜しいですか?」
サラの声に本から目を外したら、なんとっ、リアル執事が四人勢揃いしていた。
うわーーー、すごーーーい。かっくいいかも…。
リアル執事喫茶だ…。お嬢様とか言われたいかも……。
そんな事を考えていたら、紹介されちゃった。
……、なんか知らないけど、親子だって…。
名前はアデルさん。後宮の統括をする方達…。
初めて会った。………。
そんで、私が居る北棟の担当が父親のアデルさん。
このアデルさんが、統括責任者さんなんだって…。
なんでも、ここは私一人しか居ないので、責任者の父親アデルさんが、
一番楽なここの担当らしい。だよね、全部の棟とかけもちだもんね。
………、て事は…、お姉様達のとこには、お姫様達が居るんだ。
なんだか、どこまでも恵まれていて申し訳なくなった。
「アデルと申します。今後とも宜しくお願い致します。」
と…傅かれた私は、……、執事さんとの禁断の妄想へと突入しそうだった。
でも、現実は、父親アデルさんが私の担当…。
何か必要な物とか、設備上困った事があったら遠慮なくって言われたので
とりあえず言ってみた。
「図書室に入りたいです。」
以前言ったら、異世界人の私達にはまだ許可が出せないと言われた。
必要な知識から知ってもらう為に、制限をしていると言われたから…。
「申し訳ございません。それはまだ許可できません。
何かご所望の書物がありましたら、私が取って参ります。」
父親アデルさんは、優しそうでも、やっぱ父親アデルさんだった。
きっぱりと言われてしまった。
「私、魔法の本が読みたいです。出来ればまとめて数冊持ってきて下さい。」
「畏まりました。幾つかみつくろって持って参ります。」
おおー、交渉成立だ。
嬉しくなってニコニコと微笑んだら、
突然父親アデルさんに、頭をよしよしと撫でられた。
……まあいいけど……、きっと見た目がお子ちゃまだからだと思う事にした。
「サラ、ユリア様の魔力は…、」
「アデル…、さっきのよしよしは、その為だったのですね…。
残念な事に……、ユリア様の魔力は…。」
サラの言葉を遮るようにアデルが言う。
「まったく無いと聞いていたが、そうでもない……。
見ただけなら私も気づかなかった、ただ…妙なんだ……、
その魔力の量がわからないのだ……。こんな事は初めてだ…。」
「王妃様は何も仰ってなかったのですが…。アデルのその能力は
私も認めています。そのあなたが言うとなれば……。」
「ごく微量かもしれない…。でも…希望はある。
私と少し話しをさせてくれないか?」
「わかりました、ユリア様に聞いてきます。」
私は父親アデルさんと話しをする事になった。
魔法の書物を持ってくるので、その参考にいくつか質問をさせてくれと言われた。
魔法に対する自分が思ってる事と、何の為に魔法を使えるようになりたいのかと…。
正直にこたえた。
「今まで魔法の心構えの本を数冊読んでいて気づいたのが、
使う人の心次第では、とても危険だという事です。
膨大な魔力を保持している人なら、その魔力を使い…、
悪い事もできる、でも、やり方さえ間違わなければ、
とても便利で世の中の為になるって思いました。
便利な物には制約が必要、それは自分の心でするもの…。
それに気づかない者は、手にしてはならない力だと思います。
私が魔法を使えるようになりたいのは…、
自分の身は自分で護りたいからです。
最低限、人に迷惑かけない程度にはなりたいんです。
サラが…私を護る為に命を懸けると言ってくれました…。
そんな事はさせたくないの…、命って大事なものでしょ…。
他人の為になんか使ってはダメだもん……。
平和ボケした世界から来た私でもわかります。
そんな言葉を言うくらいに、ここが危険な世界なんだと…。
私が居た世界では、そんな事言う人はいません。
冗談では言うかもしれませんが…、
そんな言葉が存在しない程平和だったの……。」
黙って聞いていたアデルであった。
相槌もせず、彼女の目だけを見ていた。
「よくわかりました。合格です。陛下には私から魔法習得の許可を頂きます。
主に仕える身として、サラの事そんな風に考えて頂き嬉しく思います。
私からも礼を言わせてください。
お優しい主に忠誠の儀を、失礼します。」
そう言っていきなり傅き、私の手のひらにキスをした父親アデルさん。
外国の映画とかで見るあれだ……。まさかっ、自分がされるなんてっ。
もう、腰抜かしそうだった。あまりにも執事でほれぼれしたから。
「陛下、今、宜しいですか?」
「姿を見せよ、」
「はい、今は、アデルと申します、陛下。」
ニヤリと笑うアデル父、スッと陛下の前で傅く。
「ふふ、アデルか、良い名だ。それにその姿も似合っておる。まあ座れ。」
「はい、失礼します。」
「こうやって話すのは久しぶりだな。アデルよ、無理を頼んで悪かった。」
「いえ、仰せのままに。
それに息子達にも良い経験になり有難く思っております。」
「伯爵という爵位があるのに、いまだそのような事をさせてすまない…。」
「領地の方は父が取り仕切っておりますので、大丈夫です。
それに私共の仕事は闇部、我が一族に任されている大事な任務です。
そのうち、隠居の身になりましたら、ゆっくりさせて頂きます。」
「ああ、そうしてくれ。で…アデル、私に話しがあったのであろう。」
「はい、陛下。」
アデル父は、先程の事を国王陛下に報告した。
ユリアの考え方から、その魔力の事まで全てを話した。
「ユリア様に魔法取得の許可を頂きたいのですが。」
「お前が良いというのであれば、確かであろう。わかった許可する。」
「ありがとうございます。」
「それで、誰が教えるのだ?アデルお前か?」
「いいえ、オードノギュー公爵にと思ってます。」
「オードノギュー…なぜだ?」
アデルは自分の考えを国王陛下に話した。
それを聞いた国王は、オードノギューがなんと言うかと、頭を抱えたが、
オードノギュー公爵には、自分から言うといい、アデルを喜ばせた。
確実に決まるまでユリアには伝えないという国王との約束で、
アデルは後宮へと戻るのであった。




