表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
願いが叶った女  作者: 花梨
21/56

№20

やっとの思い出振り返ったら、顎に手をやり意地悪な笑みを浮かべる皇太子と

その後ろで顔面蒼白のサラとアビエル、何故か肩を揺らし下を向いてるバルバラがいた。

サラとアビエルの動揺が伝わってくる。やってしまった……。


よろよろと皇太子の前まで行き頭を下げた。

言う事はもう決まっている。



「大変申し訳ございませんでした。牢屋に行きます。」



「ユリア、顔を上げろ。」


鬼畜の恐ろしい程低い声に心臓が止まるかと思ったイヤ、二秒程止まった気がする…。

ビクビクとしながら私は顔を上げた。

皇太子の手が伸びてきた。

!!! ぶたれる 瞬間的に脳裏に恐怖が走る。

ぎゅっと目を閉じ、奥歯を噛み締め衝撃に備えた。




あっ…、鼻に触れる指の感触……。え???


うわっ、イッ…  びろーーんと伸ばされる頬……。


最後は…予想通りだった…。

耳をキッーと上に引っ張られた…。



薄っすらと目を開けたら、ニヤリッと笑う皇太子とバッチリ目が合った。

涙目の私、その顔を見上げた。



大きな手で頭をくしゃっとされた。

そのまま何も言わず横を通り過ぎていく皇太子。



「殿下、」


サラが我に返ったように声を上げる。


「もう終わった事、ユリアには同じ事をした。それでいい。」


振り向かずサラに言う皇太子。

出した声とはまったく違う表情の彼、楽しそうに笑っていた。


「殿下、ありがとうございます。」


サラが頭を下げている、その様子をぼーと見ていた。

バルバラが飛んできて私をそっと支えてくれた。

良かった…緊張が途切れて倒れそうだったから助かった…。

私はこの後、サラから怒られた…。

そして、サラはお決まりのように鬼畜を褒めまくった。








私は対峙する父上と睨みあっていた。

話が違うと何度も意見したが、大国故だ仕方がないと、譲らない。

再度詰め寄ってみたが、隣国他国とのこれも付き合いだと言われ、

最後には王命だと言われた。


他国より私の嫁候補が来る。

それも自国の共を連れてやってくる。

後宮が荒れる。女達の戦場と化す。


一度受け入れてしまうと、そう簡単には返せまい……。

面倒な事になってしまった…。



護らなければ……。警戒心ゼロの無防備な顔が浮かぶ…。

権力と金の事しか考えてない者達が来る前に、なんとかしなければいけない…。


間に合うか……、








テーブルを囲む五人。

今日、何回目かのカードが配られていく、カードを見ない者達。

その者達の視線の先には一人の女性の顔。


『 わかりやすい… 』


四人の心の声、同じ想いでその女性を見ていた。

ニコニコと笑顔の女性、満足そうに手にしたカードを見ている。


皇太子、ユリア、グリンス、ガートルード、アイラの五人は

皇太子の誘いでカードゲームをしていた。

カードゲームといってもただのトランプのようなものである。

今、五人がしているのはババ抜きに似たものであった。



ふふ、私の一人勝ちかも…、手持ちがなんと六枚だし…。


皆の心の声を知らないユリアは呑気に手持ちのカードにご満悦だった。

一人づつゲームにそってカードを引いていく、何周目かした時、


『 ユリアに いったな… 』


四人は瞬時に気がついた。

彼女の顔、眉を下げ困った顔をしていた。


「うぅ…、また負けた…。なんでだろ……。」


彼女のつぶやきに、四人は面白そうに顔を見合わせた。

その後も勝てない彼女、

たまにつぶやくその声に皆は彼女の事をなんとなく理解していくのであった。


「ふふ、ユリアはとっても可愛いのね」


「本当、もう可愛くって抱きしめたいですわ」


「ええ、私もずっとそう感じてましたわ」


三人の異世界人達は皆同じような感情を彼女に抱いていた。

そんな言葉に一人照れているユリア。意味がわかってない。


「ふふ、綺麗なお姉様方にそんな風に言われて困ります。」////////


真っ赤になりふにゃふにゃとした笑顔で笑っている。

それもそのはず、彼女は今までこんな扱いをされた事がない。

背が高いというだけで、しっかりしている、大人っぽいと

見た目で判断されて、中身とのギャップに気づく人などほとんどいなかった。

そんなわけで、彼女はそのこそばゆいような感覚が実は嬉しかったのである。


「皇太子様、今日はとっても楽しい時間をありがとうございました。」


異世界人達の言葉に


「喜んで頂けて私も嬉しいです。私も楽しい時間を過ごせました。」



笑顔で応える皇太子であった。ふふふ、はははと笑いあう四人。

一人いつもの口調と違うそんな皇太子に冷かな視線を送る彼女。


なーーに、紳士ぶった風に言ってるんだか…、お姉様方騙されちゃダメっっ。

この鬼畜は命令口調で偉そうでものすっごく意地悪なんだからねっ。


そんな彼女に気づいた彼


「どうしたユリア、何か言いたそうだな。」


うわっ、こいつ…私にだけその口調かよっ…。差別ってやつですか…。


「何もありません。」



その後も一日と開けず皇太子は五人で何かしらの事をして

時を過ごしたのであった。

時には遠出をしてみたり、食事は勿論の事、政治について話をしてみたり

それぞれの国の話しを聞いてみたりと、色んな事で彼女達と関わったのであった。

その間も彼の態度は最初と変わらず、三人の女性達には優しく語りかけ、

彼女にだけはいつもの素の態度で接していたのであった。



今日もいつものように五人で過ごしていた。

そんな時、皇太子が口にした言葉。


「もう聞いてますよね、ここに他国の姫が来る事を、」


三人の顔が俄かに真剣な顔へと変わっていく。


頷く三人の女性達。

そんな中、一人会話についていけない彼女。


「何の話しですか? 他国の姫様?」


三人の女性達は顔を見合わせた。そして皇太子を見た。

何も言わずに目の前の紅茶を口にしている。


アイラが口を開いた。


「ユリア、何でもないのよ、街に歌劇が来るの。その事なのよ」


「ええ、演劇など久しく見てませんので楽しみですわ。」


グリンスがアイラに話をあわせていく。


「何を着ていこうかしら、わたくしも楽しみですわ」


ガートルードが真実味を持たせていく。


皇太子が三人の異世界人達の会話を聞いてにっこりと微笑んだ。


「他国の姫と自国の姫との争いの話だと聞いてます。

とても評判が良いので、私も楽しみにしています。」


何食わぬ顔で平然と言いのける皇太子。


「ええ、わたくしも今からとっても楽しみですわ」


グリンスが真っ赤な唇の口角を引き上げていく、

そして優しい笑顔でユリアに話しかける。


「ふふふ、ユリア他国の姫なんかまったく問題ありませんのよ、

歌劇の中では、いつも悪は滅びるって決まってますのよ。ほほほ」


歌劇の中の話だと信じている彼女は、

わくわくとした瞳でグリンスの話しを聞いていた。

その無垢な瞳にグリンスが応えるように彼女の頬をそっと撫でた。


視線を皇太子と二人の異世界人に戻したグリンス、言葉なく頷いた。

賢い彼女達は皇太子の意図を汲み取ったのかユリアに柔らかな視線を送っている。


そんな時、ガートルードがユリアに質問をした。


「ユリアの居た世界には後宮ってあったの?」


「ないですよ。あるわけありません。皇族の方々は居ましたけど、皇族と言っても象徴と言いまして…説明しにくいんですが…、政治に直接関与してませんでした、でも国民は皇族をとても尊んでいますし、心から敬愛してます。」


「そうなの…、そんな世界もあるのね…。」


「今はそうですが、昔は違ってました、皇族が政治に関与していた時期もあります。

歴史の授業とかで習いました、それに、私たちの国には昔武士と言う人達が、

権力を長い間握ってまして、その何百年…?詳しくは覚えてないけど…、

その間は後宮と言う呼び名ではないですが

大奥と言う殿様のハーレムがあったとそうです、よく小説とかにも書かれてます。

あっ、殿様と言うのはここで言う国王陛下です。」


「その…大奥ってどんなイメージなの?」


「んんー…女の園…、ていうか…、怖いイメージです。殿様の子供を産もうと

暗躍している感じ…、ドロドロな人間関係…。ドラマ…えっと劇とかで

表現されているのは、なんか、女の戦いです。その影には権力争いがついてました。

自分の娘を殿様の目にとまるように必死な感じで…。それに暗殺とか毒殺とかも…。

とにかく、こんな時代に生まれなくて良かったと思うほどでした。」


ユリアの話しに絶句する四人。

まさに今の状況がその生まれてきたくなかった世界だったからである。


片手で顔を覆い上を向く皇太子を、気の毒な想いで見ていた三人であった。






その夜の事、女官がドアをノックする。


「主からお茶のお誘いですが、宜しいですか?」


グリンス付きの女官がアイラとガートルードの部屋を訪ねていた。




「お呼び立てして申し訳ございません。お時間宜しかったですか?」


グリンスの言葉に二人は、自分達もそうしようと思っていたと告げた。


「皇太子殿下の意図…、お二人との相違がないかを確認したいと思いまして…。」


ズバリ言いにくい事を初っ端なから聞いてくるグリンスに苦笑いの二人。

それでも嬉しそうにしている。グリンスの腹を割った態度に安心したのであった。

その後三人で意見を交換し、まんまと皇太子にしてやられたと笑いあう三人であった。



「私は、以前後宮にて護衛の任についてました。」


アイラの言葉に驚く二人。


「ふふ、研究者だって言ったけど、騎士が本業。これでも優秀な騎士だったのよ」


「私は…、後宮にて女の戦いの中に身をおいてましたわ…。

戦いには敗れましたけどね。」


グリンスが笑い話しのように語る。


「私は…、後悔しています…。後宮に上がらなかった事を…。」


哀しそうな笑みでポツリとつぶやいた、ガートルード。


その後もポツリポツリと話をしていく、それを二人は静かに聞いていた。


ガートルードの家は伯爵家、力もそこそこ、権力もそこそこ。人の良い両親は別段地位を望んではいなかった。そんな時、城から、娘を後宮にとの王命が下る。当然長女であるガートルードが輿入れするのが筋であったが、性格的に内向的で人見知りの彼女を見かねた両親が妹のアデライードを選んだのである。優しい妹は姉の事も良く知っており、両親の気持ちを汲んで後宮へと入った。容姿が飛びぬけて良いわけでもないが、綺麗な顔の優しい笑顔の妹。気まぐれなのか、それとも気にいられたのか、後宮の主、時期国王が数度妹の部屋を訪れた。それが後宮の姫達の恨みを買ったのか今となってはわからないが、度重なる嫌がらせと口汚くののしられ続ける日々が続いた。それに耐え切れずアデライードは自ら命を絶った。



「私が…妹を行かせたばかりに……、私か行くはずの後宮…、私の代わりに…」


今までその事でどれだけ涙したのかと心を砕く二人、

目の前で静かに涙するガートルードを見ながらおもうのであった。


「私は……、あの時…出来なかった事をしたいのです。

妹のように可愛いあの子を……、私は…この世界で護れるでしょうか…。」


ガートルードの言葉に頷く二人。


「あなたならできるわ。私はそう…今、確信しましてよ。」


グリンスの言葉にアイラが頷く。


「後悔したくはないでしょう? もう…二度と…。」


「はい、後悔などしたくはありませんっ。」


ふっと笑うアイラ。ゆっくりと天井を見上げた。



「私達三人は、今、心を一つにしました。安心して下さいとお伝えてください。」


アイラの凛とした声が室内に響いた。

何事かとグリンスとガートルードがアイラを見つめる。


「闇の者が丁度居ましたので、殿下に伝えて頂こうかと思ってね。」


ふふふと笑うアイラに正直驚くも頼もしく思う二人であった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ