№19
とんでもない事になってしまいました…。
皆を巻き込んでしまった事に物凄く反省しています…。
あの鬼畜が今日から毎日やってくる…。
あからさまに皆の元気がない…。
だよね…、わかります…。嫌な上司がやってくるんだもんね…。
それも、私のせいで…。責任感じて反省中なのです…。
「サラ、あれは何をやっているんだ?」
皇太子の質問にこたえにくそうに返事をするサラ
「おはようございます、殿下。あれは…その…反省の意だそうです。」
反省かっ、面白すぎる。流石はユリア。
意表をついてくれるわ。クックッ
父上の言ってる意味が多少わかった気がする。
百倍楽しい人生とは本当らしいな……。
彼女の中での反省。
バケツを両手に持ち廊下に立たされる事。
しかし、廊下に立とうとしたら皆に物凄くとめられた為、
彼女は仕方なく、バルコニーにその格好で立っていた。
「おとめしましたが…、絶対すると言い張られまして…。
申し訳ございません。皇太子妃候補の方を…。」
「ああ…、好きにさせていい。気にするな…。」
そんな彼女を目を細めて見ている彼。
「身体が冷えきってしまう前に中に入れるように。」
「はい。畏まりました。」
窓の外に立っているユリアを見ながら私は執務をしている。
なんとも可愛い奴…。
見ていると心が和む。
今まで私に擦り寄ってきた女達とはまったく違う。
何をしでかすのか楽しみにしている自分がいる。
早くその可愛い顔を間近で見たいという思いにかられるが…
あの黒縁のメガネを外させるわけにはいかない。
ここには信頼している者達しかいないが、僅かな危険も許したくない。
これは何なのか…。面白い玩具でも見つけたように執着しているのか…。
それとも……。
ふっ…、既に…わかっている…、今は…蓋をしておこう。
なあ…ユリア……。
だから早く……、私を見ろ。
それに…もう遅い…。お前は…私にその手を差し出したのだから。
「クシュンッ」
気づいた時にはそうしていた。
手にするバケツをどうやって下ろさせたのかもわからない。
ユリアを肩に担いで部屋の中へと向かい歩いていた。
しかもご丁寧な事に、もふもふのケットを彼女に纏わせている。
この姿は以前見た事がある…………………。
そうだ……。父上だ……。
母上がまさに同じように肩に担がれて運ばれていくのをよく見ていた。
あれは、こういう理由だったのか……。
ふっ…、今頃わかるとは……。
突然な事に動けなかった。
たまたまそこに居合わせた者達全員が思っていた。
彼女のくしゃみが聞こえてきたかと思うと目にも留まらぬ速さで動いた皇太子。
気がつくと、肩に担がれた彼女が叫んでいた。
「ギャーーーーっ、降ろせーーっ。離せーーーっっ。」
「騒ぐな、落とすぞ。」
「怖いーーーっ、誰か助けてーーーーっっ」
走り寄って来たバルバラ。彼女と視線が合う。
「バルバラーーーっっ。助けてーーーっっ」
視線を外すバルバラであった。
うあっっ、バルバラめっ、裏切ったなっ。
なぬーーー、笑ってるのかーーーっっ。バルバラっ
視線を外すバルバラの下を向いた口元だけが見えた彼女、
笑っているバルバラの口元を見てしまった。
静かな微笑みで立っているサラ、皇太子を普通に出迎えていた。
「殿下、ご苦労様です。」
「サラ、何処に降ろせばいいか?」
「衣服が湿っぽくなっているかと、着替えの間に…。こちらです。」
サラに着いていく皇太子と担がれた彼女。
案内された場所、ごちゃごちゃと荷物で溢れていた。
積み重ねられた大小の箱達。可愛いリボンがついている。
「何だこの箱は?」 怪訝な顔の皇太子。
「オードノギュー公爵からの贈り物です。それと…王妃様から…。」
「ふーーん。」 と一言だけの皇太子。
それにしてもこの箱の数は何だ?
この部屋は決して狭くはない…、いや…かなり広い。
それなのに…半分が埋め尽くされているとは……。
あの、じじいめっ、興味ない振りして…。
じじいは良しとしても…、母上は何を考えておるのか…。
「サラ………、助けて……。」
皇太子の肩に担がれたままの彼女が悲痛な声を上げていた。
「ユリア様、そう怒らないでください。殿下はユリア様の為を思ってなのですよ」
着替えをしている彼女にサラが優しく語り掛けていく。
ムスッとした彼女はそんなサラの言葉に頷かない。
「だって…、いきなりなんだもん。それも荷物のように…。」
「あれは殿下の優しさですよ。」
「はぁ? 優しさ? 肩に担いで?」
納得いかない彼女。
「腕に抱かれて運ばれるのとどっちがいいですか?」
「うっ。…………。」
それからも延々と皇太子の優しさを言い聞かせるサラであった。
腕に抱かれて………。腕に……。
それは困るっ、てか無理っ、肩に担いだのが心遣いだとサラが言うけど…。
やっぱどっか変…。
うーーん…、あの王妃様の息子なだけはある…やっぱ変だし…。
血って凄いな…。
変な人の息子はやっぱ変態だった…。
部屋に戻るといつのまにか殺伐とした箇所ができあがっていた。
私が反省をしている時にできたのかと思ったけど…。
なんでここまで本格的なんだと不思議でならなかった。
広い部屋の一箇所、大きな机とストレージが数棚。
気遣い程度の豪華なパーテーション風区切り板。
私はそこら辺のテーブルで仕事をすると思っていたのに…。
まさか、まじで居座るつもりなのかと不安になってしまった。
当の本人は机に向かっている、私が来た事にきづきもしないので、
本当に真面目に仕事をしてるらしい。
嫌だったけど…、サラにお礼を言うように言われていたので、
私は仕方なく近づいていった。
「皇太子殿下…、先程はありがとうございました。」
……??? あれ? 無反応?
「皇太子殿下、先程はありがとうございました。 ……?? 殿下?」
「ユリア様、皇太子殿下はお出かけですよ。」
アビエルの言葉に頭の中に???が飛ぶ。何?と問いかけたら
どうやら魔法とやらでここには居ないそうだ。
難しい話で理解できなかったけど、目の前の鬼畜は、抜け殻みたいな物らしい。
ニヤリとつい笑ってしまった私…。
鬼畜の目の前に手をかざしヒラヒラと振ってみても動かない。
確認の為にもう一度してみたけど、やっぱり動かない。
これはっ、もしかして、またとないチャンス!!!
その高い鼻を触ってみた。ふふ、反応なし。
ほっぺをびろーんと引っ張ってみた。ふふ、反応なし。
楽しい……。
調子に乗った私、耳をつまんで引っ張ってみた。ふふ、反応なし。
「楽しそうだな。」
ゾクッと背筋が凍る。これは…鬼畜の声…。
最悪……、耳を引っ張ったままだ、
耳から手を離そうと思っても、緊張して動けない。
それどころか耳をもっと引っ張ってしまた……。
うぅ…、牢屋行き決定かも……。
フリーズした私…。
身体は一ミリも動かなくなっていた。
ああーーん、誰か私を元の世界に戻してーーーっっ。




