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願いが叶った女  作者: 花梨
14/56

№13

椅子にちょんもり座り、心もとない感じで座っている。

腕組みをし、仁王立ちの彼は、そんな姿を目の前にしても、その態度を変えるつもりはない。



「悪かったわ……。そんなに怒らなくてもいいでしょ……。」


彼の母は、まるで少女のように口を尖らせている。

彼の母であるこの国の王妃は、確かに聡明であり、国民の信望も厚く慕われている。

しかし、どっか変であった。

彼の父、国王陛下は、そんな母を無条件に受け入れ溺愛している。

彼自身も母である王妃の事は誰よりもよく知っている。知りすぎている。

今更、母のこんな行動驚くはずもないのだが、今回だけは違っていた。


「怒られているという…自覚はあるのですね…。」


見目麗しい顔が怒ると、平凡な顔よりも怖い。


「あるわよ……。デュークの顔を見たら…そのくらいわかるわ…。」


「私が母上に頼んだのが間違いだったようです。」


「デューク…、そんな寂しい事言わないで…。母は…あなたの為を思って…」


「ええ、そのお気持ちは私もわかっています。ただ…、なんであんな時間にっ」


「だって…、あれでも…朝まで一生懸命待ったのよ…。」


息子相手に、拗ねたような口ぶり。


「五時ですよっ、五時っっ。みんなまだ寝てる時間ですっ。」


彼に責められているのに、何かを思い出したように、目が笑っている。


「ええ、ユリアの可愛い寝顔を堪能できましたわ。長い睫毛がふるふる揺れて可愛かったわ、今度はデュークも一緒に行きましょうね。ふるふる睫毛を見に。」



………。…可愛いのは…当然の事…。

長い睫毛がふるふる……。ふるふる……。それは…可愛いでしょうね…。

ええ、勿論私も行きますよ。


………、何を考えてるんだっ、私はっ……。



彼は軽く咳払いをしては、思考を元に戻していく。


「母上…、もう二度とこのような事はおやめください。普通の時間に訪問してください。」


「ええ…今度からそうするわ…。」


「で、例の件はわかりましたか?」


何?と言うように首を傾けてく王妃。


「何をしに行ったのですかっ、朝五時からっ。」


ああっと思い出したように手をパンと叩く。


「そうそう、その事なんだけどね、ユリアは魔法にとっても興味があるみたいよ」


「魔法にですか?」


彼は王妃から、事の詳細を聞いた。彼女が魔法に興味を持ってしまった事を。


「魔法の仕様書ではなく、魔法とは何かを知る事が先ですわ。」


難しい表情で聞いていた彼が


「ええ、そこをわからずに使い方だけ覚えると…、人として間違った方向へいくでょうね」


先程までとはまったく違う厳しい表情の王妃が頷く。


「書物に関しては…、わたくしが選びます。」


「それを、私が彼女へ渡す…。」


「ええ、そういう事です。」


にっこりと笑う王妃。


彼はニヤリと笑い王妃へと視線を合わす。


「私もこの件に関わる…、それが狙いなのですね。母上…。」


「あら、何の事かしら? 私は可愛い息子のお願いを聞いただけですわ。」


ふふふといつものように笑ってはいるが、その纏う空気が違う。

こんな時の王妃は、聡明で博識な部分を隠すことなく

たとえ、それが愛する息子だろうと、何も言わずに黙って従えと威圧している時。



「わかりました。私がユリアに届けましょう。」



彼も王妃の意図するところは理解できている。

突然この世界にやってきた異世界人、愛国心もない者が魔術を学ぶ。

その力量と思考によっては、危険極まりない。

下手すれば、この世界から抹殺されかねないからである。



ユリアの盾となる事には、何の文句もありません。母上だけでなく、私も関わっているとなると、いざと言う時に彼女の盾になる人物は多いほうがよい。




「ただね…、ユリアの魔力が…あまりにも感じられなくて…。」


王妃が辛そうな声をだした。

それに対して皇太子は口角を上げていく。


「良い師が付けば多少は違うとは思いませんか?」


「良い師…そうね…。では、私が、」


王妃の言葉を遮るように皇太子が言い放つ。


「私がユリアの師になりましょう。この国最強の魔術師、適任ではありませんか?」


「え? 皇太子自ら? あなた…本気で言ってるの?」


「勿論、何か問題でも?」


問題大有りでしょ…。皇太子の執務はどうするのよ…。

ユリアを独り占めしようたって、それはこの母が許しませんわっ。



大事な嫁候補だと言う事をすっかり忘れている王妃。

皇太子のこの行動に何故気づかないのか…。



「デュークは執務が山のようにあるでしょ?そんな負担はかけられないわ」


「その事なら問題ありません。空いた時間に魔術を教えますので。」


まあ…、なんて聞き訳のない子なのっ。

母はそんな子に育てた覚えはありませんわっ。



「母上、絶対間違いを起こさない者が教えるのが良いのでは?適任者は私、それと母上。」


えっという表情をした王妃


「まあ、協力体制って事ね、独り占めは認めませんわ。ふふふ」


「話がついたと言う事で、宜しいですか?」


「ええ、勿論よ。」


彼と王妃は言葉なく頷きあった。


「では、母上、失礼します。」


そんな彼に王妃が声をかける。


「デューク、他の三人の令嬢、忘れてはなりませんよ。異世界人は四人居ますからね。

ユリアはあくまで、四人の内の一人なのですよ……、表立たぬよう、こころ配りなさい。」



「わかりました。そのように。」


瞬時に消える皇太子。



四人の異世界人達……。

この世界にて、一人でも生きていける力をつけてくれる事を願う…。

身勝手な言い分だとわかってる…。

この世界に呼び寄せる原因を作ったのは……私なのだから……。



皇太子は一人しかいない。




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