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願いが叶った女  作者: 花梨
12/56

№11

ふあぁぁあ…。良く寝た……。


…………、シマッタ…。つい…寝てしまった…。



私は慌てて起きて走り出した。

何なのこの庭…、広すぎだし…。いったい何処にみんなはいるの?

ああーーん、探せないーーーーっ。



ガサっと言う音とともに息を切らした彼女が、皇太子達の前に飛び出してきた。

走ったからか、寝ていたからか、微妙に乱れた髪。おまけに草まで付けていた。


肩で息をし、両腕を膝にのせている。どう見ても淑女の姿ではない。


「ゼーゼー、ハァーハァー。」


怪訝な顔の二人の美女達。呆れたように彼女を見ている。


「あらあら、この庭広くて探すの大変だったでしょ?」


学者のアイラが彼女の背中を労わるように撫でている。


「ゼーゼー、ありがとうございます。ゼーゼー」


「無理にしゃべらなくていいから、ふふふ、気にしないで。」


コクンと頷く彼女。



彼女が突然現れた時、一人だけ嬉しそうに口角を上げた人物が居た。

周りの者達は全員彼女に気をとられていて、彼のそんな変化に気づかない。




「おい、デューク、やっとお目覚めか?」面白いものでも見るようなオールデン。


「そのようですね。」 目を細めて見ている彼。



「あの…さっきはありがとうございました。」深々とアイラにお礼をする彼女。


「いいのよ、気にしないで。少しは落ち着いた?」


「はい。」



さっきから疲れたと皇太子に甘えたように言っている二人の令嬢、グリンスとガートルード。


「それでは、そろそろ戻りましょうか?」


「私はもう少し散策したいので残ります。」


アイラ嬢の言葉に


「あ、それなら私もご一緒してもいいですか?」彼女が反応した。


「ええ、勿論よ。」 快諾するアイラ。


仕方ないと言うように彼が


「オールデン、グリンス嬢とガートルード嬢をお願いします。お疲れのようですので先にお連れしてください。」


「はい、殿下。では、行きましょうか?」


二人のご令嬢に視線を向けるオールデン。

さっさと行くぞと言うように歩き出した。


「皇太子様は戻られないのですか?」半泣きのガートルード。


「ええ、戻りません。では、失礼します。」


「皇太子様…。そんな…。」口惜しそうなグリンス。



彼は、彼女とアイラを追いかけるように二人に背を向けた。


ライナスが軽く二人のご令嬢に礼をして彼の後を追う。




「大きいなぁ…。この世界の植物…。」


「ええ、本当ね。土が良いのか…、種が良いのか…。」


「なんでも大きい…。人も…建物も…。」


「ユリア様の世界は違ったのね…。」


「ユリアって呼んでください。」



「それでは遠慮なく呼ばせて頂きます。ユリア。」


声の主、皇太子が立っていた。


「…………。」途端に眉間に皺を寄せる彼女。


なぁーーに寝ぼけた事を言っているのよーーっっ。

馴れ馴れしいんだよっ。



「あら、お戻りにならなかったのですね。」


「はい、アイラ嬢とユリアだけでは迷子になりかねませんからね。」


「夢中になるとつい時間を忘れ、ユリアを巻き込んでしまいますわね…。」


「学者とは、そう言うものでしょう。」


「ええ、まったくですわ。お恥ずかしいです。」


私の名前呼び捨てにはスルーなの?アイラさん?


「ユリア? どうしたの?」


「あ…いえ…。」


あの男はここには居ない。見えない。そうよ…私には見えない…。

私は完璧無視を決め込んだ。


「ユリアの産まれたとこはどんな世界だったの?」


「はい…、木も植物も…ここよりは小さい。人も小さいの…。」


「人も?」


「はい、私はこれでも大きすぎる方でした。女性でここまで大きいのは珍しいです」


「それでは、私も含めこの世界の人達はユリアから見たらかなり大きいのね。」


「はい。私は平均の男性よりも大きかったので…。誰かを見上げる事があまりありませんでした…、ただ私の家族は例外で…。遺伝子なのか、父親も兄弟も私より大きくて…。あっでも皆さんよりはそれでも小さいです。」


メガネのせいで表情はあまりわからないが、アイラ達には寂しそうな声に聞こえていた。



こんなに…小さくて儚そうに見えるのに……。これで大きいとは…。

ユリア……、この世界に慣れ親しむには…まだまだか……。


彼は、彼女の話しを聞きながら、彼女が流した涙を思い出していた。



それからしばらくアイラに付き合い庭を散策していた四人。

いつのまにか日も傾き、もうすぐ日が沈む。

ライナスが無理やり散策を終わらせ四人は庭を後にした。




無事皇太子との対面を果たしたユリアと三人の異世界人達。

皇太子に好意を寄せる者と、興味がない者、極端にわかれてしまった。



「グリンス様、皇太子様の印象はどうでしたか?」


「とっても素敵な方でしたわ…。もっと…お近づきになりたいと思います。」


「はい、皇太子様もグリンス様の美貌に心奪われますでしょう。」




「ガートルード様、皇太子様の印象はどうでしたか?」


「私…あのように綺麗な方見た事ありません…。今もドキドキしています…。」


「はい、皇太子様はとても素敵な方ですから、ガートルード様とお似合いです。」




「アイラ様、皇太子様の印象はどうでしたか?」


「良い青年でしたわ。この国も安泰ですわね。」


「男性としてどうでしたか?」


「一般的に見て素敵な方でしょうね。鑑賞するには最適ですわね。」




「ユリア様、皇太子様の印象はどうでしたか?」


「んーー……。別に…。」


「男性としてどうでしたか?」


「んーー……。わかりません…。」





同じ頃、王の私室にて



「皇太子、令嬢達との対面無事終わったと聞いたが印象に残る子はいたか?」


「いえ、特には」


王が異世界人達のリストを見ながら


「この、グリンス嬢はどんな感じだ?」


「なにやら…獲物を見るような目つきでしたね…。」


「うははは、そうか? 好意を持たれておる証拠だ。素直に喜べ」


「ガートルード嬢はどうだったか?」


「はい、グリンス嬢と同じタイプかと思われます。」


「うむうむ、良い傾向じゃ。」


「アイラ嬢はどうだ? 学者かこの子は…。」


「ええ、とても植物に傾倒されている様子で、私の事など眼中にもないでしょう。」


「あははは、流石の皇太子も植物には勝てなかった。」


「ユリア嬢はどうだ?」


「まだこの世界に慣れてない様子でした…。」


「そうか…、男など見ている余裕はないな…。」


「ええ…。」


「それにしても大胆なお願い事をするな…、入浴剤に香油とは…。」


「はい、正直驚きましたよ。」


「デューク…、側室を取る気がないのなら簡単に関係を持ってはいけません。」


「なっ、母上、当たり前です。私もそこは考えてます。」


「この娘達の世界では…王族は側室を娶るのが当たり前なんだろうな…。」


「後宮と名のつく場所に居る事を彼女達は知ってますからね。」


「学者さんは学者さんらしいお願い事だな。笑ってしまう。」


「ええ、でも嫌な気はしませんでした。ごくごく自然に言われたので」


「ユリアは…何も要求してないのね…。」


「はい…、私が来る理由を消したかったのでしょうね…。」


「事前に伝わっていたからな…。」


「ああ…そうでしたわね…。」


「そのうち、時間をかけて親しくなれば何か要求してくるかもな。」


フッ…父上…私は時間をかけるつもりはありませんよ…。


「ええ、その通りですわ、デューク諦めたらだめですよ。」


「皇太子よ、贈り物を届けた後の報告、忘れないように。」


「でも…ユリアの報告を聞けないのが残念ですわ…。」


薄っすらと微笑む皇太子。


「それでは、これで失礼します。」



軽く礼をして瞬時に消える皇太子であった。








「あらデューク、どうしたの? 陛下なら宰相とお話し中ですわ。」


突然現れた皇太子に嬉しそうな王妃。


「母上にお願いがあって参りました。」


「あら、何かしら?」わくわくとした瞳を皇太子へと向けている。


………。言いにくいっ…。


「何が欲しいのかを…聞いて下さい…。」


「まあっ!!!」嬉しそうに声をあげ微笑む王妃。


「お願いします。」


姿勢を正し咳払いをする。


「デュークは何が欲しいの?」


「……、母上…私の事ではありません…。ユリアに…聞いて欲しいのです。」


「キャー!!! そう言う事ね。私に任せてっ。すぐに行ってきますわ。」


スクッと立ち上がる王妃の腕をガシッと掴む皇太子。


「こんな時間におやめください。母上のお暇な時でかまいませんので。」


慌てる皇太子に、突っ走りたい王妃。


「あら…そう…。残念ですわ…。明日、聞いてきますわね。」


「はい、是非そうしてください。」






本当に任せて大丈夫なのでしょうか……。

物凄く不安なのですが…、人選を間違えたような……。



自分で頼んでおきながら、不安を隠せない皇太子であった。








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