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願いが叶った女  作者: 花梨
11/56

№10

快晴の空を見上げて、何もする事がなくぼーと空を見ていた。

すぐ近くでは、おしゃべりをする女性達の声。

なんとなく仲間に入れず一人離れた場所に居た。


「ユリア様、ここではお話しできませんよ、あちらへ…。」


「うん…。でも…ここでいいよ…。」


「それと…、どうしてもメガネは外しては頂けませんか?」


「うん…。ごめんなさい…。」


サラさんの小さな溜息が聞こえてきたけど、これだけは譲れなかった。



彼女達がこの世界にやって来てから既に十日が経っていた。

皆それぞれが苦労をしながらも、なんとかこれまでやってきていた。

捉え方はそれぞれで、この不幸をチャンスと考える者や、なんとか元の世界に戻る手立てはないかと模索している者、ただこの世界が知りたい者、これが彼女意外の異世界人であった。



「皆様、皇太子様がそろそろ来られます。お席に付いてください。」



その言葉に周りの空気が変わる。ピリピリとした雰囲気になっていく。

女官や騎士達が慌しく動き始める。



私は正直言って迷惑だった。

その為に朝から準備に追われ、何人もの人の手を煩わせてしまった。

サラが城から呼び寄せた、日本で言うメイクアップアーティストみたいな人に念入りに化粧をされ、髪をセットされた。髪の毛が短いのを思いっきり嘆かれた。この国では女性は長いのが基本らしい。ただ出来上がりは化粧おばけみたいになってなく、ナチュラルメイク。あれだけ塗りたくられて、色々と細かくされたような気がしていたのに、本当に自然な感じで中々気に入ってしまった。

サラが言うには、この人しかできない技らしい…。だから城から呼び寄せたと言っていた。

うん、それはたぶん本当の事だと思う。この世界の人達は皆派手なメイクをしている。

また、それが似合う。たぶん目鼻立ちがくっきりしているからだと思う。東洋人の私はくっきりとはしていない。ある意味この化粧はありがたかった。

その為か、幼さに磨きがかかり、嫁候補だと言うのも逆に厚かましい感じさえしていた。

まあ、私にとっては嬉しい誤算。第一印象で外される事間違いない。

サラ達には申し訳ないけど、私の嫁候補脱落計画はまずまずの出だしだった。



慌しく動いていた人達が綺麗に整列した。



うわー、神々しいオーラを放って現れたよ、皇太子様…。

王族ってある意味凄いな…。三人若い男の人が歩いて来たけど、一人だけ目立つ。

皇太子だって言われなくてもわかってしまう。


それにしても…、何あの態度…。見るからに嫌そうだし…。

え? なにあれ……まじ…。笑っちゃう…。



「デューク…、その顔なんとかしろよ…。レディーの前だぞ…。」


「ちっ。」


私はいつものように、取り繕ったような笑顔を貼り付けた。

これでいいだろうと言うように隣に居るオールデンを見た。


「よし、完璧。」


ライナスは既に女性達を観察している。

私にふさわしいかを見極めるのが自分の仕事だと意気込んでいたけど…

私の顔よりライナスの顔の方が怖いと思うのは私だけだろうか…。


「ライナス、顔。」


オールデンに言われライナスは皇太子同様、笑顔を貼り付けていく。



近づいてくる皇太子に、近くから息をもらす声が聞こえてくる。

チラッと横目で見たら、なんだかお姉様達が頬を染めているんだけど…。

まじですか?まあ、見た目が良いのは認めるけど、さっきのあれはないでしょう。

それ見なかったの? あんなに急に取って付けたような笑顔に変身したのに…。

なんかあれだけで性格悪そうなのがわかりそうなものなんだけどね…。


それにしても…色めき立つってこんな事を言うのね…。若い女官さん達まで…。

いやいや、何気に騎士さん達もだし…。

この国の人達にとっては、王族って無条件に憧れなんだろうな…。



席についた皇太子とお付の二人。

異世界人の美女達は皆、落ち着かない様子で椅子に座っていた。

頬を赤らめ、もじもじと上目遣いで皇太子を見ていた。

ただ一人違うのは、見るからに幼げに見える彼女だけ。

背筋を伸ばしたまま、無表情。メガネをかけているので表情はあまりわからないが、

口元は無一文に閉めたまま、ぴくりとも動かない。


女官に即され前もって言われていた自己紹介を端から順にしていく異世界人達。


グリンス・オルコット、年齢は二十二歳、貴族のご令嬢で花嫁修業中。

赤毛の綺麗な髪に大きな目、真っ赤な小ぶりの唇、官能的な美女であった。


「貴族の家に産まれ、将来はそれなりの立場ある方に嫁ぐ予定でした。」


ガートルード・アリンガム、年齢は二十歳。貴族のご令嬢で芸術家志望。

金色の髪に、高い鼻と上がり気味の目。こちらも官能的な美女。


「将来は画家になりたくて現在、国の有名な画家の元で勉強しておりました。」


アイラ・バークワース、年齢は二十六歳、学者。植物を研究している。

薄い緑の髪に、配置の良い目と鼻と口。こちらも、同じく官能的な美女。


「植物の生態や地質の繋がりを調べ、品種改良の研究をしています。」


須藤ゆりあ、十八歳、学生、政治経済学部、国際商学科

黒髪のショートカット。黒縁のメガネ着用、一見男子のようである。


「将来は外資系の企業に勤め、流通の第一線で活躍したいです。」


一人だけ毛色が違う彼女、未発達と見受けられる身体と男子のような容姿。

それもそのはず、他の美女達は神官達が皇太子の好みを必死で念じて呼び寄せたからである。だから揃いもそろって同じタイプの三人の女性達であった。



私は、大学の面接で言うような事を言っていた。

それが私のやりたかった事、将来の夢だからしょうがない。

この場で皇太子に媚を売る必要なんかないし、そのつもりもない。



「私がこの国の皇太子、デュークハインヒル・ワーズナー・ボイト、異世界から呼び寄せた事、大変申し訳なく思っています。少しはここの生活に慣れましたか?」


「はい、大変良くして頂いております。」


「はい、皆様本当に良くして頂いて、ありがたいです。」


「はい、とてもよくして頂いてます。おかげで少し慣れました。」


「とても良くして頂いてます。でもまだ慣れてはいません。」



「何か不便な事とか、欲しい物とかはありますか?」


「はい、入浴剤と香油の種類が少ないので、増やして頂きたいです。」


「そうですか、わかりました、それでは私から贈らせてください。」


頬を染めて嬉しそうなグリンス嬢。意外と大胆な発言に回りも多少驚いていた。


「あの…、私も入浴剤と香油が欲しいです…。」


「わかりました。入浴剤と香油ですね、あなたにも贈ります。」


頬に手をあてて、嬉しそうなガートルード嬢。お付の女官達が嬉しそうな顔をしていた。


「私は、植物の種が欲しいです。あとできれば、それを植える鉢があれば助かります。」


「わかりました。種と鉢もまとめて数種類づつ贈ります。」


パッと嬉しそうな顔をするアイラ嬢。違う意味で周りの者達が驚いていた。


「今の所、何の不自由もしていません。」


「そうですか、何かありましたら遠慮なく言ってください。」


「はい。」


飄々とした彼女と、がっくりしているサラ達であった。



絶対欲しい物なんか言わないもんね、それを持って後宮の女性達を後日訪問するって聞いたし…、逢う必要なんかないし。関わりたくない。



これから食事か……、よーーし…、めいっぱい食べてやる。

こんな大食漢な女、嫌だって思わせてやる。



私は運ばれてきた料理を食べに食べまくった。会話もせず、また、聞きもせずに。

ほほほ、とか、ふふふ、とか、あははは、とか、男女入り乱れた笑い声を聞き流し、目の前の料理を食べ尽くしていた。ほらほら、他の女性達はみんな小食だし、皇太子の顔見るのが精一杯って感じね。

ん?あの学者さん…、意外と食べてる…。むむむ、負けられないぞ。



それにしても…よく食べますね…。さっきから気になって見ていましたが…凄い…。

あんなに細いのに……。後で具合が悪くなっても知らないですよ…。



「それでは食後の散歩に、庭の散策でもしませんか?」


「はい、是非」


「はい、喜んで」


「はい、 素晴らしい庭ですね。色んな植物があるので楽しみです。」


「私は後で行きます。」



食べ過ぎて動けないのでしょうね…。クックッ、


「わかりました、それでは、先に行ってます。」


「どうぞ。」



うぅぅ…、苦しい…。散歩とか無理だし…。できればこのまま昼寝でもしたい…。



「ユリア様、大丈夫ですか?はい、お薬です。」


「あ…ありがとうございます。」


「沢山食べましたね。」


「サラさん…、もしかして…怒ってる?」


「まさか、そんな事はありません。沢山食べる女性は良い御子を産めます。」


「はぁ ?」 思わず眉間に皺を寄せてしまった。


そんな私の眉間にツツと指で触れ、にっこり微笑むサラさん。

本当に優しいな…。サラさん…。


「よいしょっと…、散歩に行ってきます。」


「はい、気をつけて行ってらっしゃいませ。」




ふらふらと庭を歩いていた。ぽかぽかと暖かな日差しが気持ちいい。

このまま…、この草の上で寝たら気持ちいいだろうな……。




ふいにオールデンに腕を捉まれ耳元で


「おい、デューク、面白いものを見つけたぞ。向こうの端の方だ。」


ん? なんだ?


「このお嬢さん達は俺達が相手するから、お前見てこいよ。」ニヤニヤと笑うオールデン。


「ちょっとすみません。外します。」


「はい、どちらへ?」


「生理現象です。」


「申し訳ございません。」////////





はは…、面白いものとはこれですね……。

たしかに……、ここで寝るのは気持ちよさそうです。

それにしてもよく眠ってますね。



「お母さん……」 



目尻から流れる一筋の涙。



……………。辛いのですね……。申し訳ない……。


自分のせいで…辛い思いをさせてしまった…。家族と引き離してしまった…。



彼は彼女の涙を拭う為に、静かに彼女のメガネをずらした。



え?//////////// ………。 何かの間違い…。


……////////// ………、落ち着け…もう一度…。


まさか……//////////



彼は何度もメガネをずらしては顔を確認した。


メガネの下から出てきたのは思いもよらぬ綺麗な顔だった。

陶器のような白い肌、長いまつ毛にスッとした鼻、可愛い唇。




瞳を閉じていても綺麗だ……。



瞳を開けたら……。




彼はしばらく彼女の寝顔を眺めていた。




三十分後に解ける結界でも張っておきましょうね。

勿論、外から見えないようにして…。

ゆっくりおやすみ…。


ユリア………。






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