氷の冷たさと本音 ~そっとほどけていく心のカベ~
「足が腫れているね、捻挫したみたい」
優花先生は楓ちゃんのけがを隅々まで丁寧に診ていく。
「楓ちゃん、まずアイシングをしますね」
言うと、優花先生は隣の冷蔵庫から氷のうを取り出した。
「佐藤くん、楓ちゃんを支えて、ベッドに寝かせてあげて」
「はい、優花先生」
私は素早く楓ちゃんを支え、ベッドへ連れていった。
「楓ちゃん、けが自体は大したことないけど、足が腫れているから、これからあちこち走り回っちゃダメだよ。
この数日はゆっくり休んでね」
「ただいま、全教職員は大講堂にお集まりください」
「会議か。じゃあ、氷のうは当てたから、私は棚から湿布を取ってくる。佐藤くん、アイシングが終わったら、湿布を貼ってあげて」
「わかりました、優花先生」
「あと、これから追いかけっこしちゃダメだよ、佐藤くん。聞いてる?」
優花先生は少し責めるような視線を私に向けた。
私はその視線にびくりとする。
「は、はい、優花先生」
「わかればいい」
優花先生は視線を和らげ、いつもの生徒を気遣う表情に戻った。
「じゃあ行ってくるね。佐藤くん、楓ちゃんをお願いね」
「はい、優花先生」
先生の背中を見送ってから、私は楓ちゃんのベッドの側へ歩み寄る。
「楓ちゃん、大丈夫?」
「佐藤くん、大丈夫だよ。ただ足が少し痛いだけ」
「佐藤くん、喉が渇いたの。水をもらえる?」
「いいよ、今取ってくるね」
保健室の中をざっと見渡すと、入り口近くにウォーターサーバー、机の上に使い捨てコップの袋が置かれていた。
このコップは保健室の備品だ、勝手に使うわけにはいかない。
だめだ、このままじゃ。まあ、優花先生も患者のためだと知れば、怒ったりしないだろう。
私は袋からコップを一つ取り、ウォーターサーバーで水を注いだ。
「楓ちゃん、水持ってきたよ。ゆっくり飲んで」
楓ちゃんは黙ったままコップを手に取り、一気に飲み干した。
息をつくと、満足そうな様子だ。
「佐藤くん、どうして私を探しに来たの?クラスの透明人間じゃいけないの!」
「それは、このイベントはみんなでやる集団活動だから、誰一人欠かすわけにはいかないんだ。
私はイベント実行委員長として、みんなのことを気にかけなきゃいけない」
「私なんて参加しなくていい。不器用だと思われたくない!」
「どうして?楓ちゃん、なぜそう思うの?」
「この学校に転校してくる前、前のクラスに空気を読むのが上手な女子たちがいたの。クラスの繊細な女子たちは何人も、彼女たちに目をつけられた。彼女たちは粗探しばかりして、活動で担当した部分に少しでも不備があれば、すぐに責め立ててきたの!どうしてそんなに参加させようとするの!」
「楓ちゃん、違うよ。このクラスのみんなは優しいから、まず少しだけ試してみてほしい」
「本当に?」
「うん、安心して。私がクラスのみんなと一緒に、楓ちゃんと素敵な青春の思い出を作るよ」
「素敵な思い出?」
楓ちゃんの口調が和らいだ。
「一度だけ、私を信じてみて、楓ちゃん」
私は楓ちゃんに手を差し伸べる。
「きっと、今までの考えが変わるよ、楓ちゃん」
楓ちゃんは手を伸ばし、私の手を握った。
「楓ちゃん、一緒に素敵な思い出を作ろう——」
スペルミスを発見したら、私に報告してください
読んでいただいてありがとうございます。もっと頑張ります




