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第6話 静かなる凶刃

 僕はとうとう出発の準備を整え、この町を出ようとしていた。


「最後に魔機屋さんにも挨拶しないとな……」


 この町に来てから、彼女には世話になりっぱなしだ。

 自身の装備を整備、調整してもらい、たくさんの魔導機械アーティファクトの説明をしてもらった。

 購入させていただいた大量の魔導機械は、この先の冒険でも必ず役に立ってくれるだろう。

 そして、毎日のように入り浸ってしまった。

 それほどに、あの場所は僕にとって天国だったのだ。


 しかし、それも昨日まで。

 すでに依頼していた装備は受け取った。

 名残惜しい気持ちもあるが、目的があるんだ。

 僕は再び旅立たなければならない。



 ラットは宿屋を出て、魔機屋まきやへの道を歩いていく。


 ス______




 ……ふと、すれ違った。



 視界を掠めた純白に引かれ、盗み見る。

 雪を連想させる長い白髪を、いつか、どこかで見たような。


 ……いや。

 この独特な雰囲気は、覚えている。


 ラットは反転した。


(どこで出会ったかな?)


 この街での知り合いではない。

 勇者パーティと旅をしていた頃の、知り合いだろうか?


 冒険者……には見えない。

 であれば、〝商人の娘さん〟だったかな?


 いずれにしろ町を転々としているならば。

 ラットが王都へと向かっている目的__怪我をした仲間の情報が、今ここで得られるかもしれないのだ。



 ラットは故郷の村〝ウィアベル〟にいるときに、たまたまその噂を耳にした。聞いたのはギルドの中だ。


 ラットの店は閑古鳥が鳴いている。

 

 ……であっても最低限の日銭は稼ぐ必要がある。


 定休日には、冒険者として依頼をこなしていた。


(おい、聞いたかよ)

(地の国で勇者パーティの一人が大怪我を負ったんだって……)

(嘘だろ……。あの伝説のパーティがか?)

(相手は誰なんだよ?)

(魔族って噂が立ってるぞ)

(また魔族かよ……。せっかく戦争が終わったのに……)

(さっさと全員滅ぼしてほしいよな……)

(王都はいったいなにやってんだよ)

(そのための騎士団なんじゃねえのか?)



 また別のところでは。



(おい、注意喚起が出てるぞ……)

(有力な騎士だけじゃない。冒険者たちまで襲われてるって……)

(俺たちも気をつけないとな)

(いや、俺たちC級は少なくとも〝有力〟じゃないだろ……)


 そんな話題でギルドは埋め尽くされていた。

 ラットは受付で詳細を確認した。


「はい、どうやら本当らしいのですが……。なにぶんここは〝最果ての村〟なので、最新の連絡方法がある王都とは違い、古い方法での情報のやり取りしかできず……、詳細まではわからないんです」


 それを聞き、ラットは村を飛び出した。

 まだ戦いは終わっていないのだと感じたからだ___。



 村を飛び出してからこれまでの間、新たな情報を掴めずにいた。

 そんな折での今の状況だ。

 話を聞くだけでも問題ないだろう。


 脇道へと進む少女。


 ラットは走る……。

 追いかけ、曲がった…………。


(いない!?)


 長く続く一本道。

 どこにも見当たらない。

 


 消えた。

 雪のように……。

 

 なにが起きたのか、理解できずにいた。

 その時だった。


 ドォーン……


 遠くから音が響く。

 上がる土煙。

 

「あっちは魔機屋さんの方角じゃっ?」


 ラットは胸騒ぎを覚え、走り出した。



 時は少し遡る___。

 ちょうどラットが旅支度を終え、宿屋を出た頃だった。


 カランカラン___


 軽快に開かれる扉。

 弾む鐘の音。


「いらっしゃいませ……」


 魔機屋がそれを出迎える。


「あのさ。ここに……」


(名前なんだっけ?)

(聞いてないよ)


「灰色の髪の眼鏡をかけたやつ……来てないか?」


「来てない……」

「っかしいな。ここに来てるって聞いたんだけどな……」

「知り合い……?」

「ん? 少し前に魔物が町で暴れたろ。そのときに助けられたんだ。あいつの分の報酬も出ているんだけど、ギルドに現れなくてよ。確かここによく来てる感じで話してたから、ギルドに代わって渡しにきたんだよ」

「そろそろ来る……と思う」

「なんだ。まだ早かっただけなのね」

「ちょっと待たせてもらってもいいか?」

「いい……」


 仲間の一人が近寄ってくる。


(リーダー、一度出直さない?)

(なんでだよ? もうすぐ来るっていうんだから待ってたらいいだろ)

(ここって〝ガラクタ置き場〟って言われてるんだよ。あんまりいるところを見られたくないんだ)

(おまえな~)

(そうよ。面白そうなものがいっぱいあるじゃない。話を聞いて、来てみたかったのよ)

(リーダーたちはこの町の出身じゃないから知らないんだよ~)


 そんな話をしていると。


 バンッ

 カランカランカラン___


 豪快に開かれる扉。

 激しく打ち鳴らされる鐘の音。


「いらっしゃいま……」


「おい、ここに勇者パーティの〝7人目〟が来てないか?」


 フードを被った者が荒々しい足音で乗り込んできた。


「ずっと探してるんだが、てんで足取りが掴めないんだ。ここに入り浸ってるって話を聞いたんだが、いるか!?」


 どうやら。この者は焦れているようだ。噂だけが独り歩きする者に翻弄されているらしい。


 それを見て笑って話しかける。


「落ち着けって。おまえもあいつを探してんのか?」


 その者に近づき、


「あいつ、存在感がないみたいでな。あんまり認知されないらしいんだよ。気持ちはわかる」


 肩に手を回し、


「でも、安心しろよ。ここは正解らしい。もうすぐ来るみたいだぜ」


 気さくになだめる。


「おいっ……」


 しかし……。


「何を勝手に触ってる!!」


 肩に回した腕は払いのけられた。


「汚いな。僕に触るなっ!!!」


 その態度に腹の底が煮え始める。


「勝手に触ったのは謝るけどよ。さすがに、それは失礼じゃないか?」

「そうだ。謝れよ」


 静まり返る店内。


「そうだな……僕が悪かった」

「ほっ……」

「〝雑魚〟相手にムキになってしまったよ」

「おまっ!!」


 フードを掴む。


(こいつ小柄だが、やっぱ男だな……)


 フードの隙間から覗かせた不敵な笑み。

 見下すような視線を男は向けていた。


「ん?」


 フードを掴む手を、払いのけようとしたその手が止まる。


「確かおまえらも……」


 男は改めてフードを掴む手を払いのけ、


「ついて来い。僕に言いたいことがあるんだろ?」


 扉を出た。

 顔を見合わせる仲間たち。


「どうするの?」

「いこう。さすがに、あれだけ言われて引き下がるわけにはいかないだろ?」


 続いて扉をくぐった。


「ありがとうございました……」


 魔機屋はそれを見送った。



 それから少しの時間が過ぎる。


<撃ち抜け__ファイアボール>


 ドンッ____


「おい、詠唱を待ってやったんだ。ちゃんと狙え」


 ズバッ__


「きゃっ」


 倒れる魔法使い……。


「くそっ! なんなんだお前はっ!!」


 小柄な一人の男。

 だが、油断なんて一切なかった。

 最初の一撃で、この男は自分が俺たちよりも圧倒的に格上なのだと、わからせてきたからだ。

 先日のことに倣って、全員が強化薬を飲んだ。

 連携も十分にできていたはずだ。

 それなのに、こんなにも差があるのか?

 あの魔獣兵器にだって、もう少しは持ち堪えられたはずだ……。


 こうなったら……

 鞄に手を入れ、


「くらえっ」


 取り出したものを投げる。


 パリンッ___

 フードの男の横を通り過ぎたそれは割れた。


「最後の足掻きくらい、ちゃんと当てろよな……」


 男は油断している。


「走れっ! ギルドへいってできるだけ強いやつを呼んでこい!!」


 走り出す魔法使い。

 

 キンッ

 それにあわせて、剣士が男に斬りかかり引きつける。

 男はそれをサーベルで受ける。


「まさか……これを狙って…………」

「そうだ。これでお前は終わりだ。俺たちを殺したとしてもなっ」


 くくく___

 男が笑う。


「視えてるよ……」


 ズバッ___


「ぐぅ……」

 

 ザッ

 一瞬で剣士を斬り、魔法使いの前に回り込んだ。


「お前がさっき使ってたのは〝速力の水〟じゃないだろ?」


 ゾブッ___


「あ……」


 すれ違いざまに、魔法使いを再度斬り伏せる。

 走った勢いのまま、魔法使いは前のめりに倒れ込んだ。


「強化されてないなら、剣士を刻んだ後でも簡単に追いつけるんだよ」


 得意げにフードの男は話す。


「にげ……て……」


 己ではなく、魔法使いは剣士を逃がそうとしている。


「……仲間ごっこはやめろっ! 虫唾が走る!!」

「なんだ? 仲間なんて弱い者同士の馴れ合いだって……言いたいのか?」


 剣士は最大限、相手を憐れむように……


「強いからって、随分と狭い世界で生きてるんだな」


 言い放った。

 刃の矛先を自分に向けるために。


「〝狭い世界〟か……。何も知らないクソがっ! こんな奴らに〝こいつ〟の村は……」


(こいつ? 誰の話だ……?)


 目の前の男は明らかに一人だ。〝こいつ〟の指すものがわからない。


「ぐっ、ぅう……!」


 血を流しすぎた。足はもう言うことを聞かない。意識も薄れてきた。バランスを崩した身体は地べたに埋もれている。


「世界を知らないのはどっちだろうな? ……おまえ、矛先を自分に向けるために、あえて僕を煽っただろ?」


 男は無機質な声でそれを発した。


 ゾクッ__


 通り過ぎる悪寒。


「死ぬ前に……世界ってやつを知っていけよ」


 意識を失った魔法使いへ、凶刃が振り上げられる。


「おい……、やめろっ…………」

「…………」

「やめろぉおおおおおおおっ______!!」


 剣士の絶叫を……



 ガキンッ____


 硬質な音がかき消した。





 そこには〝魔機屋〟が、無表情に立っていた。


※このあとがきはキャラ同士の雑談コーナーです。本編には関係ありませんので、気軽に読み飛ばしていただいて大丈夫です。



ラットです。

今回はこの方に来ていただきました。


C級冒険者パーティのリーダー、〝ブレイブ〟だ。


改定版は活躍が減って残念でしたね。


しょうがない。

俺たちの伝説はここじゃなかったってことだな。


パーティとしての連携もかっこよかったんですけどね。


……


必死で突破口を……


いうなっ!

俺が旧版でやらかしたのが……くぅ……


ブレイブさんの活躍を見たい方は、旧版も手にとってみてください。


よろしく……

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