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第47話 動き出す悪意

 鍛治の道に進んだのは、リオンにとってよかったのか、悪かったのか。

 いや、本人が今、それでよかったのだと思っているのなら。周りからどう思われようと、よかったのだと思う。


 ラットは自分と同じだと思った。両親と旅をしていた頃は影の薄さから商人としては不利になると言われ、身体能力の低さから冒険者としても役立たずと煙たがられた。しかし、ラットは自分の在り方に答えを出した。


 そんな彼が今また剣をとり、不運に見舞われた少女のために力を欲している。そして、以前とは違う。今度はラットたちがいる。力になってあげられる。


「ちなみに、色々な武器を使えるのなら、距離に応じて、持ち替えて戦うのはダメなの? ここ数日、魔物と戦ったみたいに」


「ラットがいれば、それでもいいのかもな」


「あー、常に持ち歩けないってこと?」


「そうなんだよ。魔物みたいに、ある程度特徴がわかっていれば、最初からその武器で戦えるんだけど……。問題は魔族とかよく分からないやつ戦うことになったときだな」


 そうだ。旅の目的は魔物の討伐ではない。今、危機に陥っているかもしれない仲間を助けにいくことだ。ここ、エレのいるフルーテンでは何も起きなかったからよかったものの、シールのところで戦闘になる可能性はある。そうなった場合、その相手はおそらく魔族だろう。魔物のように見た目の印象でわかることは少ないし、どんな能力があるかは戦ってみないとわからない。


 リオンは様々な武器を扱えるとはいえ、それら全てを常に持って戦うことはできない。邪魔になるし、その重さから足枷にもなる。魔力の低さをカバーするために、足枷をつけては本末転倒だ。


「ラットみたいに魔法鞄マジックバックを持ってたらいいんだけど、少ない数を持ち歩いたとしても切り替えがな……」


 弓にしても斧にしても未使用時は身体に括り付ける。激しい攻防の中で持ち替えるのは、あまり現実的ではない。


「それって俺も手に入らないかな? これから向かう魔法都市ってさ、最先端の魔法が生み出されているんだろ。マナベルみたいに売ってたりしないのか?」


「確かにリオンにもあると便利だよね。だけど、魔法都市で手には入らないかな」


 この魔法鞄は単純な魔具ルーリックではない。


「これって単純な魔法が付与されているだけじゃないんだよ。土人族ドワーフ森人族エルフ、工芸と魔法に長けた種族が協力して、勇者パーティが持つ加護を付与したものだから。いわゆる特注品なんだよ」


 この魔法鞄は各種族間にあったしがらみをヒーロが取り除いたことにより、いがみあっていた種族が協力することで生まれた品だ。加護という強大な力を貴金属でなく鞄へと付与するための工夫を土人族が担い、森人族たちが総がかりで加護を解析した。


 これは鞄だけではない。空気銃バンプガン魔導釣竿ワイヤーロッドなど、勇者パーティの扱う武器のほとんどが種族間の合作だ。


 以前の土人族ドワーフ森人族エルフのように、いがみ合い、争い、その度に多くの血が流れ、悲しみが生まれてきた。昔は違ったかもしれないが、すでにそんなことは双方とも望んでいなかった。だが、やらなければ、こちらが根絶やしにされるかもしれない。そういうすれ違いをなくしたのが勇者パーティだ。


 同じような争いをより多くなくしてほしい。そういう願いから、今までいがみ合っていた二つの種族が協力し合いつくったのがこれらだ。勇者パーティに願いを託したのだ。だからこそ、絆の象徴といえるだろう。


「そうだったんだな。となると、やっぱ一番得意でバランスがいい剣を主体にして、持ち運びがしやすい補助的ななにかを持つのがいいのかもな」


「銃とかあればいいんだけどね」


「最近、地の国で流行しているやつだよな。たしかに目的にはあってるよな」


「造れたりは?」


「どういうものか知らないことにはな〜」


「だよね。それに火薬も必要だったはずだしね」


「やっぱ投げナイフくらいが無難か~?」


 リオンの試行錯誤は続いていく____



 しかし、その裏で暗躍する者がいた。


「仕事、お疲れ様っ!」


「……誰だ……?」


「あら、あなたの恋人の顔を忘れちゃったの?」


「忘れてないさ。確かに顔はよく真似てる。たが、あいつは仕事場にまで押しかけたりはしないし、そんな喋り方もしない。騙す気があるなら、もっと調べたらどうだ?」


「忙しかったのよ……。一体どれだけ、いたと思ってるのよ。大変だったんだから」


「……いた?」


 女は姿を変えた。


「お前、魔族だな。どういうつもりだ? 他にも隊士がいる中にノコノコ現れて」


 休憩室。そこには見回りのために小隊のメンバーが集まっていた。


「戦いにきたわけじゃないわ。勧誘しにきたのよ」


「勧誘……。舐めているのか? 私が魔族につくわけがないだろう」


「お前たち、こいつを捕えろ!」


 部下に命令する。


 しかし……。


「おい!? 何をやっている!」


 取り押さえられたのは、その者だった。


「ふふふ……、ごめんなさい。〝勧誘〟じゃなくて〝誘惑〟だったわね……」


「おい! やめろ!!」


 女はその者に顔を近づけた__。



「これでやっと次の段階に進めるわ」


 マナベルが鳴る。


「あら、久しぶりね」


「……」


 どうやら仲間らしい。


「それにしたって、ひどいじゃない。一人でこ〜んなに働かせて」


「…………」


 女は不満を漏らす。


「ま、ちょっと想定外のこともあったけど、ちょうど次の段階に進むところよ」


「………………」


「わかってるわよ……」


 女は不敵に笑った。


「〝エレ・ホーク〟を殺すわ!」


※このあとがきはキャラ同士の雑談コーナーです。本編には関係ありませんので、気軽に読み飛ばしていただいて大丈夫です。



ラットです。


リオンだ!


今日は、勇者パーティの装備について結構触れたよね。


そうだな。

話を聞けば聞くほど、やっぱすげえんだなって思うよ。


そうかな?


そうさ。

勇者さんが活動してたのって、数年くらいだろ?


それなのに、風の国だけじゃなく、水の国や地の国まで救ってる。

普通、そんなことできねえって。


そう言ってもらえると、僕も誇らしいよ。


あと、やっぱ気になるのは、土人族ドワーフ森人族エルフの合作ってところだな。


魔法鞄マジックバッグはそうだとして、ほかにはどんなのがあるんだ?

言うて、武器は基本的に土人族の専門だろ?


わかりやすいのだと、ロックの魔銃かな。


あれって、そうなのか?


うん。

ロックの特殊な魔力を変換して、弾にしてるんだよ。


なるほどな……。

確かに、それは普通の鍛冶だけじゃ無理そうだ。


あとは、全体的に〝加護を纏える〟ように調整されてる感じかな。


加護を?


通常の武器だと、そもそも耐えられないんだよ。

力に振り回されて、壊れちゃうから。


なるほど……。

勇者パーティの装備って、ただ強いだけじゃなくて、そもそも特別仕様なんだな。


そういうこと。

ちなみに、ヒーロの聖剣だけは教会から借りてるものだから、最初から別格だけどね。


あ~、なんか納得したわ。

次回は、ラットが行動するぜ!!


リオン!?


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