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第46話 炎に魅せられて

 エレとポニが精霊魔法の練習をしていた頃、ラット、ミル、リオンの三人も訓練を重ねていた。


「ふ〜、とりあえず、これで今日の基礎訓練は終わりか」

「一息ついたら、次は戦闘訓練だね」

「お疲れ様……」


 水分を補給しながら、語り合う。


「旅してるときから思ってたけど、いつも割ときつい訓練をこなしてるよな」

「僕は弱いから。ちゃんと備えておかないと」


「とは言ったって、旅の最中にだぜ。旅だけでも大変なのに、訓練、魔導機械アーティファクトの作成。他にも旅で必要なことを結構裏でやってるだろ」


 ラットの一日は訓練で始まる。そこに道中の戦闘も加わるため、常に身体を動かしているようなものだ。野営場所を確保してからは、ミルと旅で役立ちそうな魔導機械を作成。合間で、アイテムの残りや現在地を確認するのも忘れない。


「あんまり根を詰めすぎると倒れるぜ。もっと俺やミルを頼ってくれたっていいんだからな」

「……任せて」


 二人の言葉が温かい。


「大丈夫。道中での訓練の量はちゃんと調整してるから。それに、頑張ってるのは二人だって同じでしょ。魔導機械を実際に弄るのはミルだし。リオンは武器の整備とかパーツ造りだってしてる」


食事当番は交代制だしね、と付け加える。


「……なら、いいんだけどよ」

「うん、ちゃんと分担できてると思うよ」


 ミルがジッと見てくる。


「辛いときはいう………」

「はい……」


 ニシシッ

 リオンが笑った。


「そうだな。このパーティはなんだかんだラットが中心だ。冒険に慣れたラットがいないとはじまらないぜ」

「わかったよ。これからはもっと頼らせてもらうね。覚悟しててよ」

「お、おう。お手柔らかにな……」

「リオン、頑張って……」

「お前も手伝えよ」


 三人とも自分の役割をこなしつつ、支え合うことができている。二人は最初こそぎこちなかったが、徐々に旅にも慣れてきている。いいパーティになりつつあると、ラットは感じていた。



「そういえば、リオンこそどうしたの? 急に訓練に混ぜてくれって。ミルまで誘って」


 フルーテンに来てからというもの、朝の訓練にリオンが参加し始めた。そのあと、ミルとの戦闘訓練。森での実践訓練までしようと言い出したのはリオンだ。


「ああ、ロックさんとの戦闘で否が応にも自分の実力不足を感じちまったんだよ」

「ロックが強いだけだよ。リオンは十分にやれてると思う」


「それだけじゃないんだ。普段元気なポニのあんな姿見ちまったらさ。帰してやりたいって思うだろ?」

「そうだね」

「俺はビビリだろ。だから、余計にな……、そう思っちまったんだ」


 自分と重ねているのだろうか。リオンは遠くを見つめている。


「それで訓練ってことなんだね」

「ああ、自分の課題はわかってんだ。相手が接近戦を挑んでくるなら、それなりにはやれると思う。だけど、ロックみたいに遠距離だったり、搦め手を使う相手には……たぶんだけど、後れをとると思う」


 リオンは戦闘に使用できる魔力がほとんどない。だから、どんなに鍛えたところで、魔力で肉体を強化した者ほど速くは走れない。距離を取られやすい。


「この前見た、護衛隊シルヴァン・ガードもそうだけど、戦っていたフェンリルも動きが素早かったしな。ミルといい、どうなってんだよ。この世界は」


 ミルとリオンは旅の途中で、簡単な戦闘訓練をしていた。だが、リオンはその速度に翻弄されるだけで、負け越していた。


「だから、ロックさんレベルとはいかないまでも、そういう相手にもある程度は通用するようにしないと」


 しっかりと自分とも向き合えている。リオンはこれからもどんどん強くなっていくだろう。


「そういえば、リオンって多芸だよね。ここ数日で森に入って何度も魔物を討伐してるけど、相手によって武器を替えたりとか、普通できないよ」

「親が元団長だったから、騎士団の訓練に参加させてもらってたんだよ。そのときに、ある程度基礎は叩き込まれたんだ」

「騎士団の訓練に!? 子供で!? 迷惑がられたりしなかった!?」


 騎士団の訓練は、D級冒険者のそれとは比べものにならない。全員が入団時からある一定の実力を持ち、確実にA級に上りつめるためのものだ。


 内容はかなりハードだが、最後まで残れば、確実にA級以上の実力を得られると言われている。その反面、その過酷さから辞退する者も少なくない。


 この訓練の厳しさは、単に力をつけるためのものだけではない。最後まで市民を守り抜く精神を持つ者だけに、絞り込むためのものでもある。


「そんな驚くなよ。確かにしんどかったし、逃げ出そうとしたこともあったけど、なんとかついてけたんだぜ。呑み込みも早かったから、足を引っ張ることもなかったしな」


 子供ながらに、訓練に食らいつくことができたなんて、やはりすごい。余程の志がなければ、できないことだ。


「それに〝いずれは団長かな?〟みたいに、騎士の姉さんたちにチヤホヤされてたからな。それ考えたら、踏み止まれたぜ!」


 ……どうやら違ったようだ。踏み止まれたのは子供らしい理由だった。それでも厳しい訓練に食らいつけたのは、リオンらしいといえばリオンらしい……のか?


 いずれにしろ、昔から夢中になりやすい性格だったのは間違いないようだ。


「だけど、騎士団の訓練を辞めることになったのって、やっぱり……」

「そうだな。全然魔力の総量が増えなかったんだよ」


 やはりリオンの課題はここに尽きるみたいだ。それほど、魔力の影響は大きい。


「俺が落ち込んでなかったから、親はそれほど気にしてなかったけど、周りは……というか、チヤホヤされるのを見て嫉妬してた連中は期待外れとか好き勝手いってたっけ」

「……ごめんね。やなこと聞いちゃって」

「気にすんなって。そのレールを外れたおかげで、今は鍛治をやれてるんだから」


 リオンはラットの背中を叩きながら、笑っている。本当に気にしてないようだ。


「それでな。親の行きつけの鍛治屋が師匠の店だったんだよ。武器の調整のときは必ず一緒についていってさ。いつも食い入るように見てたんだ」

「あ、もしかして、それで?」

「そう。魔力がないってわかってからは親が頼んでくれてさ。弟子入りさせてもらえることになったんだよ。いや〜、あれはほんとにうれしかったな~」

「それが鍛冶の始まりだったんだね」


「それに騎士団で学んだことだって無駄になったわけじゃないぜ。鍛治で造ったものを自分で試せるんだからな。そのための訓練だったんだと思ってるよ」

「リオンはすごいね。そんなにすぐ切り替えられるなんて」

「違う違う。もともとやりたかったのが鍛冶だっただけだよ。運がよかったんだ」


 リオンは自分の昔話に思いを馳せていた___。


※このあとがきはキャラ同士の雑談コーナーです。本編には関係ありませんので、気軽に読み飛ばしていただいて大丈夫です。



ラットです。


リオンだ!


今回は、リオンが鍛冶師になるまでの話が聞けてよかったよ。


そうか?

そんな面白かったか?


うん。

なんというか、リオンらしいなって思った。


ならよかった。


ところで、鍛冶のどんなところに最初惹かれたの?


最初か?

そうだな~~……


両親に連れられて、工房を見てたんだよね?


ああ。

最初は、本当にただ見てるだけだった。


見てるだけ?


なんか作ってるところ見るとさ、

〝これ、最終的に何になるんだ〟って気になったりしないか?


あ、それはわかるかも。

作ってる途中って、完成形が全然想像できなかったりするもんね。


そうそう。

それで、ずっと見てるうちに、自分が使ってる武器とか道具も、

こうやって作られてるんだな~って思うようになってさ。

そこから、どんどん惹かれていった感じかな。


なるほどね~。

リオンっぽい始まり方だ。


そうか?


うん。

「気づいたら夢中になってた」って感じが。


あ~、それはあるかもな。


次回は、少しだけ勇者パーティについて語られるよ。


よろしくな。


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