3-2 Fランク冒険者、勇者に決闘を申しこむ
「ありがとうございましたー」
女性店員に見送られながら、俺たちは店を出た。
「…………」
「……アーク? その、私も安く済ませようって思ってたんだけど、店員が勧めてくるから……、ごめんね」
結論から言おう、有り金全部消えた。
リンネさんは申し訳なさそうな表情で謝ってくれているが、空っぽになった財布から、目が離せない。
「いや……、気にしなくて大丈夫ですよ。俺が買うって言い出したことなので」
男に二言はないとかっこつけたいが、そうできないのがつらい。
(でも、まあ、ポジティブにいこう。考えたって仕方ない。それに、リンネさんめっちゃ可愛いし)
俺は金額のことは割り切ることにして、店員さんに感謝する。
お金が貯まったら、俺もお願いしようかな。
そう思えるぐらい、リンネさんによく似合う服を見繕ってくれていた。
赤いラインが少し入った白いローブというシンプルなデザインではあるが、白髪紅眼のリンネさんが着ているからか、何かウサギっぽくて可愛らしい。
フードにもウサギの耳みたいな物が付いている。
まあ、一言で例えるなら、魔法使いらしい服装で片付けられるのだが……。
「冒険者に復帰するんですか?」
「私はアークの憧れなんでしょ? だったら、こんなところで躓いていられないわ。アークだって、頑張ってるんだから」
「そうですか……。なら、よかったです」
リンネさんなら、遅かれ早かれ、またSランク冒険者に返り咲くだろう。
俺も負けてられないが、肩を並べるということはできなさそうだ。
持って生まれてきた素質が違いすぎるのだから。
「どうしたの? 早く行きましょう。私も、アランたちに言いたいことができたわ」
リンネさんの表情は決意に満ち溢れている。
(俺も覚悟を決めよう。勇者にボコられる覚悟を)
「行こう、勇者が待つ――冒険者ギルドに」
冒険者ギルド。よほどのことでもない限り、全ての街に存在する施設は、いつも賑わっている。
酒場が併設されていることもあって、依頼をこなしてガッポリ稼いだ冒険者がいたならば、そこは宴会場に姿を変える。
それほどまでに、冒険者ギルドは騒がしい場所だ。
そんな場所に、勇者は本当にいるのだろうか。
「入りましょう、リンネさん」
「ええ、入りましょう」
俺たちは冒険者ギルドに足を踏み入れる。
そこには、見慣れた光景が広がっていた。
冒険者窓口で業務を果たす受付嬢に、パーティーで固まって作戦会議をしている冒険者。
そして、酒場で酒を飲む荒くれ者たち。
だが、確かに、異質な物が混じっていた。
「あれが、勇者か?」
俺は金髪で、高そうな鎧を纏っている人間を指差して言った。
「ええ。あれが、勇者――アランよ」
どうやら、あれが勇者らしい。
俺は静かに勇者に近づいた。
そして、勇者にも存在を気づかれたところで、
「お前がアランっていう、クズ勇者か? 俺と戦え」
嫌味を交えて、決闘を申しこんでやった。
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