3-1 Fランク冒険者、Sランク冒険者と手をつなぐ
俺たちは今、冒険者ギルドに向かっている。
その冒険者ギルドは、門を潜った先に広がる表通りを真っ直ぐ行ったところにある。
リンネさん曰く、勇者はそこにいるらしい。
今すぐにでも勇者に会いに行きたいが、グッと堪えて、リンネさんとの約束を守らないとな。
「リンネさんの服を買いましょう」
「え……、本当に買ってくれるの?」
「え……、嘘だと思ってたんですか?」
呆けた顔をするリンネさんに傷つく俺。
さっきまで、勝手にデート気分を味わっていたのだが、一気に暗い気分になった。
せっかく、全財産を費やして、リンネさんのためにと思ってたのに……。
(俺は悲しいよ。……あ、涙出てきたかも)
……出てなかったわ。
「ごめんね、アーク。そこまで思ってくれてるとは思わなくて……」
「いいですよ、別に。リンネさんにとって、俺はその程度だって、ことですよね」
「そんなことないわ。アークは、今の私にとって――」
「あ、あそこなんていいんじゃないですか?」
その先は何となく聞きたくなくて、俺は遮ってしまった。……ごめんなさい。
しかし、あそこの店なら、可愛いリンネさんに似合う服があると思ったのは本当のことだ。
嘘はついていない。……そう、断じて。
「…………」
「ささっ、行きましょう! リンネさん!」
俺はリンネさんの手を引っ張り、その店に向かう。
(リンネさんと手、繋いじゃった……)
年頃の男女二人が、手繋いでしまったら、それはもうデートと言わざるを得ない。
それに、側から見たら、俺たちは恋人に見えていることだろう。
もっと、注目してくれても、いいんだよ?
「……また、変なこと考えてるわね、アーク」
(おっと、またこの流れですか。この、背筋がいい感じにゾワっとなる感じ……たまらない!)
俺は背中に冷ややかな視線を感じながら、その店に入った。
「いらっしゃいませー」
「彼女の服を見繕ってほしいんですが、大丈夫ですか?」
「あら、彼女さんですか? それなら私に任せてください! めちゃくちゃ似合う服を見繕いましょう!」
茶髪の女性店員が、店の奥にリンネさんを連れて行った。
元気だな〜、あの店員さん。
にしても、彼女か。やっぱりそう見られても仕方ないよな!
俺は頬が緩むのを感じながら、財布を懐から取り出して――一気に現実に引き戻された。
「……これ、足りるかな」
冒険者になってから、一度も不必要な物を買わず、生活を切り詰めて、貯金した全財産。
冒険者ギルドにお金を預けることもできるが、そうする必要がないぐらい、しょぼい金額。
(何とか、足りますように! お願いします!)
俺は神(信じてない)に祈りながら、リンネさんの服が決まるのを待つのだった。
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